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2020年のネット広告関連で起きた10のこと

滝井 秀典

代表取締役会長

滝井 秀典

2022.09.09

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滝井です。

2020年も激動の1年でしたね。この記事では昨年末、大晦日に出した「2020年の予測」記事 が実際どうだったのか?という振り返りをします。

以下は上記の記事で予想した10のことです。これをもとにして2020年のネット広告関連で起きたことを振り返っていきます。

  1. ネット広告がテレビ CM との差を開いていく
  2. 検索広告が王座から2位に。群雄割拠時代へ
  3. ヤフーと LINE の統合
  4. AI 化はますます進む
  5. 画像や動画の重要さと量が増す
  6. 新しい広告媒体の台頭
  7. ツール進化で LP(ランディングページ)改善が増進
  8. SaaS 中心の B to B マーケ拡大
  9. 固有名詞検索の重要さ
  10. ネット広告規制の論議活発化

1.ネット広告とテレビCMの差は開いた

こちらは予測どおり、2019年統計でネット広告がテレビCMを抜き、2020年の統計が出るのは2021年2月頃だと思われますが、これは間違いなく差が開いているでしょう。

コロナのことはもちろん予測はできませんでしたが、ネット広告は昔から不況や災害にも強く、リーマンショックや大震災時も成長をマイナスにはしていません。

運用型広告と非運用型広告の年間広告費の推移

2020年の今年も「テレビ広告は14.8%減、ネットは0.5%増」となっているように、テレビ CM は今年のコロナという地球規模の災害の影響でマイナス、ネット広告は外的変化に強く微増の可能性が高いです。

2020年はネット広告がトップとなり、予想どおり「ネットのマス化」が社会に大きな影響をもたらしました。これは社会全体からすると良い面も悪い面もあります。詳しくは年始に公開予定の2021年予測記事で解説します。

2.検索広告は王者の座から落ちなかった

ネット広告にはディスプレイ広告、SNS 広告、動画広告など様々な種類があるものの、これまで最もシェアがあるのはずっと検索広告でした。2019年の結果はさすがに王座から陥落してるだろうと予測したのですが、これは完全にはずれました。

参考:2019年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析|電通 調査レポート

検索広告は117.1%増加しながら、ディスプレイ広告が1.7%減少、結果的に検索広告がシェア率40.2%となり、ネット広告の1位を守った形です。

2020年の結果が出るのは2021年の2月から3月頃となりますが、果たしてどのような結果になっているのでしょうか。

確実なのは、やはりネット広告の主軸はあくまでも検索広告であり、ここを柱として展開するのが最も安定感があるということです。

3.Yahoo! と LINE の統合は延期

Yahoo! と LINE の統合は、予測というより予定ですが、2020年10月に経営統合完了だったものが、コロナによって延期となっています。おおよそ経営統合が完了するのは2021年2月から3月になる予定のようです。

参考:経営統合の実施に係る日程に関するお知らせZホールディングス株式会社

合弁会社名は「A ホールディングス」になりましたが、意外にも昨年末の衝撃的な発表の後に、特に大きな動きがないのは残念です。しかし、どのような統合をするのかという内容はこっそりと発表されているようです。

業務提携で発表された16の項目のうち、ネット広告にとって特に重要と思われるのが以下の5つです。

(5)営業網の相互活用・顧客の相互送客
(6)ポイント及びエコシステムの共通化
(7)データの相互活用及びユーザー同意の取得
(8)LINE及びZHDの完全子会社のヤフー株式会社のID連携・サービス連携
  (13)情報システム及びバックオフィス機能の共同利用

引用元:Zホールディングス株式会社、LINE株式会社、ソフトバンク株式会社及びNAVER Corporationの業務提携に関する基本合意書の締結に関するお知らせ|Zホールディングス株式会社 から一部引用

顧客の相互送客やポイントの共通化がはじまれば、Yahoo! もしくは LINE の広告プラットフォームのターゲット層や露出先(広告表示回数)が広がりそうです。

また、おそらく最もやりたいのは「ID 連携」でしょう。今後ブラウザの Cookie が使えなくなるので、ID 連携によりユーザーの行動分析が進むことで、広告のターゲティングや効果分析が大きく変化していく可能性があります。

Google や Facebook の強さは、ID ログイン後の行動把握ができるため、Cookie に頼る必要がないところにあります。目指す世界観はここでしょう。

最後に可能性は低いですが、情報システムの共同利用の方向性として、広告プラットフォームの Yahoo! と LINE の統合があります。これが実現すれば広告運用者として効率化とコンバージョン獲得の幅は広がるかもしれませんね。

4.AI 化は順調に進化中

ネット広告の AI 化・自動化はもちろん進んでいます。これが2020年に最も顕著に現れたのが Google のファインド広告です。

Google ファインド広告は、長い歴史がある Google 広告の中でもかなり異質の存在であり、機械学習を設計思想に最初から組み込んでいるという点で、従来の検索広告、ディスプレイ広告、動画広告とはまったく別物として広告プラットフォーム上でも扱われています。

特徴的なところは YouTube のタイムライン上にとても自然な形で広告が出せるところと、自動入札が前提で手動入札が一切できない点にあります。

YouTube の広告枠

Google 広告の世界観を覆したといっても過言ではありません。Google ファインド広告がコンバージョン数を獲得する主軸になっているケースも増えてきています。

この背景には、世界的にコロナの影響を受けて YouTube の視聴が劇的に増え、データ取得が一気に進んだこともあるでしょう。

参考:YouTubeは画質を強制的に落としたが、それでもネットワークの混雑は止まらない | WIRED.jp

機械学習、AI という世界観は、データ量がすべてです。YouTube の視聴が爆発的に増加し、ファインド広告の広告表示先が増えたことによるクリック単価の低下や、広告出稿の増加による多くの広告データが蓄積されて、機械学習が進むという好循環がおこったと考えられます。

2020年はコロナ禍の年でしたが、デジタルシフトが一気に進み、ネット広告の AI 化にとっては好材料だらけだったといえるでしょう。

5.特に動画の重要さが増大した

2020年は、動画広告が大きな変化を起こした年といえるでしょう。特に YouTube 広告は、動画アクションキャンペーンによって、コンバージョンを獲得できる広告に大きく変貌しました。

動画広告はたくさんの人に視聴はしてもらえますが、クリックが生まれずコンバージョンが獲得できないため、認知向けの広告というのが今までの評価の主流でしたが、2020年はこの流れが大きく変わりました。

以前にも増してクリックをしてもらうための工夫が増え、視聴者が広告に興味を持ってからアクションに移りやすくなりました。

参考:動画アクション キャンペーンについて|Google 広告 ヘルプ

また、Yahoo! では動画広告の仕組みを変え、動画をクリックするとサイトに飛べるような仕様となりました。以前はクリックしてもサイトには飛ばない仕様だったので、ユーザビリティを考えてもこの点は素晴らしい変更だったと思います。

動きとしてはとても地味な変更なのですが、コンバージョン(=顧客獲得)数増加がなにより欲しい Web マーケター、広告運用者からすればとても大きな変化があった1年だったのではないでしょうか。

6.新しい広告媒体の台頭はあまりなし

2020年は、新しい広告媒体に注目すると特に目立ったものはなく微妙な1年となりました。

Yahoo! と LINE の統合も延期となり、Google、Yahoo!、Facebook(Instagram)の3強状況は変わらず、運用型広告の2番手グループである LINETikTokTwitter の広告プラットフォームとしての変革も、Google ファインド広告のような大きな変化はありませんでした。

不況や外部環境変化に強いネット広告ではありますが、地球規模で起こったコロナ禍により、広告出稿自体が減少したことは間違いなく、各媒体社も、広告収入という原資がなければイノベーションも起きにくいんですよね。来年にはぜひ期待したいところです。

7.ツール進化でランディングページ改善は増進した

ツールの進化によるランディングページの改善増進は、確実に進んだと思われます。その動きの象徴として、2020年秋に大きなニュースが出されました。

マイクロソフトによる無料サイト解析ツール Microsoft 社の 「Clarity」の登場です。Clarity は明らかにサイト改善のためのツールなのですが、無料ながら容量無制限でヒートマップが使用できセッションのレコーディングも備わっています。

有料版ツールの導入をためらっていた中小企業でも、サイト改善が手軽にできるようになり、2020年はあらためて広告のリンク先であるランディングページが注目された1年だったのではないでしょうか。

Microsoft Clarityとは?設定方法や活用する上での注意事項についてまとめて記載 | PPC-LOG

2020年10月29日に Microsoft がMicrosoft Clarity (マイクロソフト クラリティ)を一般公開しました。この記事では Microsoft Clarity に関する基本的な情報や設定方法、活用する上での注意事項についてまとめて記載しています。

8.SaaS 中心の B to B マーケティングの拡大

SaaS 中心の B to B マーケティングが2020年さらに拡大したことは間違いないでしょう。

昨年時点では、SaaS の2023年の市場規模予測はが8千億程度と見積もられていましたが、年13%以上の成長が確実視され、2024年の市場規模は1兆2千億円と予測されています。

参考:国内SaaS市場は2024年に1兆円規模へ

2020年の日本の SaaS の B to B マーケティング手法としては、テレビ CM やタクシー広告などで認知を広げつつ、ネット広告も幅広くおこなう手法が引き続き目立ちました。

インターネットのクラウドサービスである SaaS とネット広告は当然相性がよく、コロナ禍でテレビ CM が激減し、広告料金の値下げがされる中、在宅勤務を加速させるようなツールは間違いなく顧客を増やしたことでしょう。

たとえば Zoom はその代表例となりました。どこの会社でも、打合せが必要な時には会議室を予約するというアクションではなく、「打ち合わせが必要ですね。じゃあ〇時に Zoom しましょうか」といった会話が普通に交わされていて、SaaS の浸透が一気に進んでいる印象を受けます。

9.固有名詞検索の重要さが増加した

固有名詞検索の重要さは間違いなく増加していると思います。ディスプレイ広告を露出して認知を広げ、最終的には固有名詞検索をしてもらって、コンバージョンを獲得する流れは、2020年にますます大きくなったと思われます。

ブランディングがマーケティング業界において議論の柱になったのも、2020年の特徴だったのではないかと思います。広告以外でも同じことが言えます。

弊社でも今年の一年間オウンドメディアに注力した結果、問い合わせの数が増加した印象があります。もちろんそれだけの影響ではないにしろ、オウンドメディアの記事が印象に残り弊社へ問い合わせをした方もいるでしょう。

こういったユーザーの動きはデータとして把握しにくいですが、指名検索は一朝一夕では増えません。もちろんテレビ CM を流せば、一時的には増加します。

しかしユーザーの記憶のどこかに残り続け、必要なタイミングで指名検索をしてもらうためには、信頼を得て、一定以上の専門的な経験を積んでいかなければいけません。今後もより一層、固有指名検索の重要性は増すと考えられます。

10.ネット広告規制の論議は活発化した

10の予測のうち、最も活発に進んだのが、皮肉にもネット広告の規制の話題です。2020年1月早々に Google がCookie 廃止を発表しました。

広告への影響はほとんどないと考えられるものの、ブラウザの Cookie 情報が個人情報であるとの認識が EU から広がり、早めに手を打ったものと考えられます。

また、Google は10月になんと司法省から反トラスト訴訟を起こされる事態となりました。

さらに、日本国内では、薬機法において規制が厳しくなるどころか、違法と疑わしい広告に関わった広告代理店の担当者が逮捕される事件が春にありました。代理店が上場企業だったため、大きな心配となりました。

ネット広告が広告におけるトップの位置となり、マス化が進んでいるのはグローバルで起こっていることで、日本もその流れの真っ只中にあります。

今までは弱者のベンチャーとして目をつぶっていてもらっていたところが、2020年にはかなり規制が強化されたと言っていいでしょう。この流れは2021年はさらに加速すると考えられます。

デジタルシフトが進んだ2020年

昨年のまとめとして、相変わらず変化に富み、面白い世界と表現しましたが、まさか2020年がこのようなコロナ禍の渦に全世界が飲み込まれ、緊急事態宣言が発令され、在宅とデジタルシフトが進むなんてことは到底予測できませんでした。

さらにはコロナ禍の影響でとんでもない不況に突入するかと思えば、予想外にネット広告周りは善戦し、マクロの経済も崩壊することなくなぜか11月には日経株価が29年ぶりの高値をつけるといった年になるとは誰も想像しなかったことでしょう。

それでも「変化は常にチャンス」であることは間違いありません。コロナ禍にあり、多くのビジネスが苦境に陥いってしまった不幸はあるものの、新しいビジネスの萌芽もあちこちで起こっています。

2021年も常にポジティブに、明るく元気に仕事をしていきたいですね。

記事を書いた人

滝井 秀典
滝井 秀典

代表取締役会長

2003年、Googleアドワーズが日本でサービスを開始した直後より、検索キーワード広告とランディングページの実践・研究を行い、その成功理論を書籍『1億稼ぐ検索キーワードの見つけ方』で発表、5万部以上のベストセラーとなる。 キーワードマーケティングでは、設立時から延べ千社以上のアカウントを診断およびコンサルティングしており、現在は上場会社や成長率の高いベンチャー企業に対する広告運用代理事業を拡大している。

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