滝井です。
広告運用という仕事はこの世に生まれてまだ18年ほどの歴史しかなく、「キャリアのあり方」を示すサンプル数が少ないうえ、自動化の波などからこのまま広告運用を続けてよいのかという不安は常にあるようです。
もちろん、広告運用のみでキャリアを作ることは可能です。実際に、キーワードマーケティングでも12年以上広告運用のみの仕事をしているメンバーもいます。
一方で、Web 広告の運用というのは、関連する業務がとても多岐にわたることはあまり知られていません。
広告運用をしながら関連領域の業務に関わり、ダブルスキル、トリプルスキルを身に付けて市場価値を上げていくことがしやすい職種でもあるんですね。
広告運用を始めたばかりの方や、広告運用者として順調に成長中の人も、一度立ち止まって今後どのようなスキルを身に付けて、キャリアの幅の広がりや将来の可能性があるかを考える機会として「広告運用からスタートするスキルマップ」を作りました。
なお、このスキルマップにあるものは弊社で業務として実績のあるものだけを並べており、架空のものはひとつもありません。
中央にある「広告運用」を中心に、関連する8つの職種が並んでおり、さらにそれぞれの職種の周りには8つのスキルが並んでいます。
まだ広告運用を始めたばかりの人は、まず黄色の職種を埋め、その後、緑の職種を1つ以上選択、さらにそれぞれのキャリアイメージに合わせて赤い職種を目指していくという考え方が良いでしょう。
次の章からは、それぞれの職種とスキルについて解説していきます。
目次
はじめに、マップ中央にある「広告運用」に含まれる代表的なスキルについて解説いたします。これから広告運用を始める方はまずここからがスタートになります。
アカウント構築や入稿作業など、広告管理画面を設定していくスキルです。これは初心者が第一につけていくスキルです。
同じ検索広告でも Google や Yahoo! では何が違うのか、同じ SNS 広告でも Facebook と Twitter はどんなターゲティングが可能なのか、あるいは共通点はどこかなどの知識です。これがわかっていることが広告運用の前提となります。
CPA を下げるためにどの数値をコントロールしたらよいかを考える算数能力(四則演算を正しく活用する能力)で入札額を決めたり、予算内におさめるように広告配信を弱めたりするチューニング能力は広告運用の柱となります。
決まった月額予算をどのように使っていくかを事前に計画したり、全体の予算の中でどの媒体のどのメニューに投資をするのかを設計する重要なスキルです。
広告運用において「クリエイティブ」といえば検索広告で使うようなテキストベースの広告文と、画像やテキストを組み合わせたレスポンシブ広告やバナー広告が代表的ですが、その中でも広告文の作成は運用者が基本スキルとして身に付けるべきです。
画像や動画を使ったクリエイティブは、あえて区分けするなら後述する右下のクリエイティブディレクターの仕事となります。
日々のオペレーションやチューニングから一歩離れて、現状の目標との乖離を埋めるための施策を、過去データを比較したり、時系列で並べたりしてアクションプランを考える能力です。
また、その分析結果をしっかり言語化してクライアントやインハウス決裁者に了解をもらうのがレポート等での言語化力となります。
「セールス」と「広告 LP 設計ディレクター・コンサルタント」は、日々広告運用をおこなう中で自然と身に付くスキルの領域です。
広告運用をすれば必ず広告 LP(ランディングページ)のコンバージョン率改善と向き合うことになります。また、上司やお客様に対して改善提案や実施報告というセールス(営業)をしなければいけません。これらは日々の業務を通して自然と備わってくるスキルとなります。
広告運用者なのに、セールス(営業)をするのかと思われるかもしれませんが、実は日常的にセールスに近いことをおこなっているのです。
ではそれはどのようなときでしょうか。以下のような場面で広告運用者のセールス力が問われるかと思います。
知識のない決裁者にわかりやすく話をするには、資料作りやプレゼンテーションといった提案スキルもあわせて重要になります。
運用型広告はいくらでもビッグデータの解析が可能であり、提案が上手な人は、シミュレーション作成やそれを実現するための施策案づくり、さらにはそれを伝える技術に長けていて、挑戦のステージを自ら高めていけます。
また、セールスにつきものなのがクロージングです。
クロージングというのは、契約の締結はもちろん、いわば「注意事項の合意」というべきものですが、例えば「検索広告やリマーケティング・リターゲティングに予算を多く使い、ディスプレイ広告を弱めてくれ」という決裁者からの依頼や指示があったとしましょう。
その時に「短期的には CPA は下がるかもしれないが、数か月後には縮小均衡して全体の CPA が悪化する可能性があります」とはっきり注意事項を説明できるようなスキルが求められます。
クロージングは営業シーンでもとても重要な能力で、角が立つような言い方をしすぎれば決裁者の機嫌を損ねますし、かといって説明責任を放棄するわけにもいきません。
柔軟性をもった話術・交渉術も使いつつ、言うべきことを論理性をもってはっきり言うことは、広告運用者にも必要なスキルといえるでしょう。
運用型広告は、広告を掲載したら終わりではありません。
広告をクリックしてもらい、広告ランディングページにアクセスしてもらい、さらにそこで何らかのコンバージョン(問い合わせや購入などのアクション)をしてもらうまでが仕事です。
2000年代の黎明期は広告運用と広告ランディングページの制作を同時に一人の人間がおこなうこともよくありました。
しかし、それぞれが複雑高度化する中で、広告運用者は広告運用に専念するようになったのが2010年代ですが、明らかに広告ランディングページに問題がある(アクションボタンが分かりにくい等)ような場合はアドバイスをするというのが主流となっていきました。
そして近年では広告運用の自動化が進み、そもそも広告ランディングページのコンバージョン率が低い状況では広告の配信量が著しく減少するという現象も起こるようになり、今の広告運用者には、広告ランディングページの改善スキルは必須になってきているわけです。
ここからは、広告運用の仕事にかなり近い領域ではあるものの、必ずしもスキルを身に付けなくても成果が出せる職種やスキルをご紹介します。
例えば、「API のことはさっぱりわからない」「Adobe Illustrator や Photoshop なんて一度も触ったことがない」という広告運用者も少なくないでしょう。
逆に言えば、知識やスキルがあると大きな差別化要因、希少性を持つことができるスキルといえます。
広告運用にかなり近い領域として、SEO、SNS のオーガニック運用、Google アナリティクスを使った Web 解析などがあります。
スキルマップでは、アフィリエイトやメールマーケティングなども Web マーケティングに内包していますが、これらの知識や経験、成果を出すためのスキルがあるのなら、広告運用にも十分に活かすことができます。
ただし、これらは、高度なプロフェッショナル知識と経験、それらを合わせたスキルが必要になります。
SNS や書籍からしっかりとインプットを行い、一般論を理解しておき、クライアントや決裁者からの質問にはひととおり答えられるようなレベル感であれば十分付加価値があると言えます。
一般論を超えるレベルが求められるような場合は、適切なプロフェッショナルを紹介できるようにしておくと良いでしょうか。「このジャンルに関してはこの会社評判が良い」といった情報を把握しておくためには、Twitter などの SNS で第一人者をフォローしておくとよいでしょう。
なお、執筆というスキルをあえてここに置いているのは、広告運用をしながらブログを執筆したり情報発信をすることをイメージしています。
広告運用を上手くコントロールする方法を自分が持っていて、これを文章という形でアウトプットすることにより、自身の中で体系化ができ、さらに社内メンバーの教育に役立ちます。インハウスでも代理店でも経験値を言語化してくれるメンバーは必ず重宝されます。
また、スキルが高いことを証明することになりますので、顧客獲得につながったり、このような人と一緒に仕事がしたいと考える人が出てくるので採用にも役立つわけです。
広告運用という職種を考えた場合、クリエイティブとして作成するのはいわゆるテキストベースの広告文までで、バナーの作成や画像の選定は、別のクリエイティブチームや外部のパートナーが行ったり、代理店の場合はクライアント主導で行われるケースも少なくないのではないでしょうか。
ただし、広告運用を主軸としながらも、クリエイティブに強みを持つ人は一定確率で存在しています。
そのような人は自分でラフを描くことができ、Illustrator や Photoshop を使ってバナーを作り、広告ランディングページのデザインまで考えることができます。
広告運用者は計数感覚やチューニングといった数字を扱う左脳タイプが多いので、いわばクリエイティブディレクターの職能である右脳タイプは現場でとても重宝されます。
さらに、色彩理論やブランディングの知識や経験などを扱えると、市場価値の非常に高いビジネスパーソンとして活躍できるでしょう。
実は、システムエンジニア的な職能と、広告運用という仕事はとても相性が良いです。
実際にキーワードマーケティングでは、プログラミングの経験をもって入社し、未経験で広告運用の仕事にチャレンジし、現在では主軸として活躍している役員やマネージャー、リーダーが複数名存在しています。
VBA やマクロを駆使して、複雑な分析やルーチン作業を自動化したり、媒体ごとの広告プラットフォームに API 接続し、Google Apps Script やその他のプログラム言語でレポートを自動抽出したりといった活躍ができます。
広告運用にも強く、これらシステム系の技術にも通じているプレーヤーもかなり希少価値があり、現場でとても重宝されます。
広告運用をしながらこの方面の知識や技術を身に付けることももちろん可能で、キーワードマーケティング佐賀支社では新卒メンバーが研修と社内教育を通じて API や Google Apps Script にチャレンジし、広告レポーティングの仕組み作りに大きく貢献しています。
ここからはさらなる付加価値となるスキルとして、そもそもの組織の受け皿をつくるマネジメントや、Web 広告以外の広告を含む広義でのマーケティング、あるいは経営のボトルネックを解消していく経営コンサルティングといったスキルについて解説します。
これらは一見広告運用の仕事と関連が強くなさそうに見えるかもしれませんが、広告運用の仕事を極限までつきつめていくと、必ず必要性が高まってくる領域です。いずれもビジネスの経験年数がそれなりに求められ一朝一夕で身に付けられるものではありません。
しかしながら、強みを活かすスキルとは異なり「やるかやらないか」という側面が大きいのもこのスキルの特徴です。
本来、運用型広告への投資はマーケティング予算の一部分にすぎず、オフライン広告や宣伝ツール、PR 活動費などと同じ並びになります。
そのため、メディアを横断したプランニングやブランディングのための全体戦略設計が必要となります。
例えば、地域の店舗集客ビジネスの場合などは、Web 広告を使うよりも新聞折り込みやポスティングのほうが効果が出るような場合もあります。
さらには、テレビ CM というのは、多くの人がスマホを片手にテレビを見ることからWeb 広告との相性が良いものです。テレビ CM の経験や知識、それがサイトアクセスに与える影響などが分析できるようになると、仕事の質が何段も上がります。
実際に、キーワードマーケティングの取締役顧問は、広告運用の仕事をマスターした後、経営コンサルティングの領域を経験しながら、マーケティング活動の全体最適を支援しています。
組織で広告運用をおこなっていればもちろんのこと、たとえフリーランスとして自分一人で仕事をしていても、自分自身をコントロールするという意味でマネジメントは必要となります。
まず、目標設定は重要なマネジメント項目です。会社やチームによって目標は異なるでしょうが、広告投資額や手数料額を目標値とするのが一般的でしょう。継続率や案件数、顧客満足度というケースもあると思います。
また、部下の目標達成をサポートしたり、チームとしての成果を出すのもマネジメントのスキルといえます。ここは経験値が必須となります。
さらに、チームの成果を上げるために、自社の採用や社内教育、チーム全体の品質管理に責任を負えるようになると、仕事の質が何段も上がります。
広告運用者は、広告での成果を追い求める仕事ではありますが、その仕事で収益をあげていく必要性から、社内予実管理ができるようになると、トップからは重宝されることでしょう。
マネジメントはチームで成果をあげるための技術でありますが、これがうまくできるようになると、仕事に安定性という貴重な価値を提供できるようになります。
変化の激しく、高度複雑化し続ける運用型広告の世界でマネジメントスキルの価値は高いため、キーワードマーケティングでは広告運用の仕事がある程度できるようになったら、全員にマネジメントのスキルを身に付けるようにしてもらっています。
広告運用の仕事に、意外にとても近いのが経営コンサルティングの職能です。
例えば、広告運用ではほとんどのケースで目標 CPA を設定するのですが、この算出はクライアントや決裁者がおこなう必要があります。
目標 CPA の算出には、粗利益とコンバージョンを獲得するための投資額を決める必要があるのですが、そもそもこの決定には正解というものがなく、事業そのものの中長期戦略や、財務会計を理解する必要がありとても難易度が高いものです。
さらには、決定した目標 CPA がまるで現実味のないものでは広告戦略が機能しません。
さりとて甘すぎる目標では広告運用は楽ですが事業による利益が出なくなるので、長期的な価値を提供することができなくなります。
そこで、場合によってはプロフェッショナルである広告運用者側から目標 CPA の提案をおこなうことがあるのですが、前述の通り経営コンサルティングに近いスキルとして完全に別物として考える必要があります。
また、財務の知識や新規事業を成功させた経験などから、ボトルネックを発見して課題を明確にしたり、さらには事業目標にあった広告予算全体そのものを年ベースで提案することもあります。
さらにはミッションや経営理念の整理、法務なども遠いようで実は広告運用を長く安定して成果をだすためには必要な事柄だったりします。
経営コンサルティングのスキルを身に付けるメリットはたくさんありますが、クライアントの事業そのものの大きな成長に関与できたり、決裁者の仕事の負担を大きく減らす貢献ができますので、市場価値はとても高いものになります。
まず、大前提として理解しておくべきことは、すべての領域について知識も、経験も、スキルもあるなどというスーパーマンみたいな人はいないということです。
誰しも向き・不向きや強み・弱みがあり、だからこそチームで仕事をする価値があるわけです。『組織の意味は、個人の弱みをないものにすること』とドラッカーも言っています。
すべて網羅することを目指すのではなく「自分の強みを活かすこと」がなにより重要となります。
強みは、「深く狭く」と「浅く広く」という2つのタイプにくっきり分かれます。
チームや組織にはどちらのタイプも必要ですし、必ずしも職種の経験やスキルは多ければいいというわけではありません。
チームスポーツを考えればわかりやすいと思いますが、一流選手はたいてい「誰にも負けない深み」を持っていますよね。利き足しか使えないけど技術は超一流なんてサッカー選手もいます。
広告運用に関しては、計数感覚やチューニングが恐ろしく秀でていて抜群の成果を出すものの、クリエイティブやマネジメントはさっぱりなんて人もいますが、チームに爆発力をもたらす貴重な人材です。
一方で、際立った強みはないけど、すべてにおいて平均点以上のユーティリティプレイヤーなんかもいます。
そのような人は、クライアントワークやクリエイティブ、あるいは Web マーケティング全般に関する相談の需要もあるといった、幅広いニーズが求められる案件にアサインされますし、何でも卒なくこなせるので社内の役割も増えます。こういった人もチームにはとても有用です。
このようにどちらにも存在意義があるわけから、まずは広告運用者としてのスキルで平均点以上を目指し、その上で「深く狭く」なのか「浅く広く」なのかで方向性を探っていくと良いでしょう。
このようなスキルマップを見ていると、自分の興味や意欲でスキルを選び、身に付けていくようなイメージがあるかもしれませんが、実際には違います。
上司やお客さんがあなたの仕事ぶりや発言、成果などを見ていく中で強みを自然と発見し、期待してくれるようになります。
例えば、広告運用をしながら、クリエイティブの感性が鋭いということを上司が感じれば、どんどん広告文をつくってもらったり、バナー制作の仕事が振られるわけです。
特に、組織のマネージャーや経営層というのは、人的リソースの無駄遣いをめちゃくちゃ嫌いますので、その人に強みがあったらそこを積極的に活かそうとします。
つまり、向き・不向きや強みというのは、他人が決めるものなのです。
また、他人から伝えられた自分の強みが、セルフイメージとまったく違うなんてことはよくあることです。
私は芸術学部の出身で、クリエイティブが得意な人間だと思い込んでいました。しかし、広告代理店勤務をしていた時に、たまたまクライアントに提出した数値分析をとても褒められ、その時初めて自分に計数感覚の強みがあることを知りました。
では、どうやったら自分の強みが発見できるような機会に恵まれるようになるのでしょうか。
自分の強みを発見してもらう機会を増やすには、まず目の前に求められるニーズを満たすことです。
あなたは上司やお客さんから何かを期待されているはずです。まずその期待に応えることが何よりも一番の近道となります。
一定水準の期待に応えると、新しい仕事が渡されたり、自分で仕事が選べるようになります。
例えば、動画広告の絵コンテを描いてみたいなら、動画広告をクライアントに提案できる自由をまず獲得しなければなりません。その自由(裁量)の権限を行使してやってみる。それがあなたの強みかどうかはその結果を他人が見て決めてくれるでしょう。
最後に、大事な点を付け加えるなら、職種やスキルといったものは、それを身に付けることを目標にするものではありません。
必要に迫られてやってみた結果、自分が成果が出せる領域がわかり、自然と磨かれていく中で身に付けていくものなのです。
スキルや能力があったとしても、それが成果に結びつかなければ1円の価値にもなりません。
大切なのは仕事で成果を出すことです。成果や結果を出すことにフォーカスすることで、結果的にあなたのスキルは深みをもったり、広がりを見せていくことでしょう。
※ 本記事で解説したクリエイティブ・ディレクターや経営コンサルティングなど、豊富な経験と知識、高い技術を必要とする職種はここに書かれたスキルだけで成り立つものではありません。それらの職能を持つ方々に最大のリスペクトを持ちつつ、スキルを身に付けていきましょう。
※ 本記事は、広告運用者の他職種への転職を推奨するものではありません。
キーワードマーケティングでは、広告運用コンサルタント職への中途入社を検討している方に向けて、カジュアル面談を実施しています。
少しでも関心のある方は、まずこちらのページから業務内容やキーマケ広告運用コンサルタントの特徴をご確認ください。
代表取締役会長
2003年、Googleアドワーズが日本でサービスを開始した直後より、検索キーワード広告とランディングページの実践・研究を行い、その成功理論を書籍『1億稼ぐ検索キーワードの見つけ方』で発表、5万部以上のベストセラーとなる。 キーワードマーケティングでは、設立時から延べ千社以上のアカウントを診断およびコンサルティングしており、現在は上場会社や成長率の高いベンチャー企業に対する広告運用代理事業を拡大している。
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