ユーザーが広告の品質を審査する「TikTok広告評価スペシャリスト」とは?
「TikTok 広告を始めたいけれど、ターゲット設定や入札調整を細かく行うリソースがない」 「Google 広告や複数媒体配信していて、TikTokにかけられる時間が週に数時間しかない」
インハウスで広告を担当している方や、人数で複数媒体を横断して担当している現場ではリソース不足と運用の複雑さに直面している方が多いのではないでしょうか。
そうした状況への選択肢のひとつが、TikTok 広告の自動最適化メニュー「Smart+(スマートプラス)キャンペーン」です。
この記事では、実際にウェブサイトのコンバージョンを目的としたSmart+ キャンペーンを配信して確認できたことを軸に、Smart+ キャンペーンの仕組み、手動キャンペーンとの仕様の違い、設定手順、運用時の注意点を整理して解説します。
Smart+ キャンペーンは、ターゲティング・入札・クリエイティブの組み合わせといった配信の最適化プロセスを、TikTokの機械学習に委ねる配信メニューです。
運用者が設定するのは、配信目的・地域・予算・クリエイティブアセットなど、限られた項目に絞られます。
公式が掲げる Smart+ キャンペーンの3大メリットは下記の通りです。
参考:Smart+キャンペーンについて│TikTok ビジネスリソースセンター
Smart+ キャンペーンは、手動キャンペーンで個別に調整していた「ターゲティング」「入札」「クリエイティブの組み合わせ」という3つの核心部分をTikTokの機械学習に委ねる仕組みです。
具体的に手動キャンペーンとどのような違いがあるのか、全体像を一覧表で比較しましょう。
| 比較項目 | Smart+ キャンペーン | 手動キャンペーン |
|---|---|---|
| アカウント構造 | キャンペーン > 広告セットの2階層 | キャンペーン > 広告セット > 広告の3階層 |
| ターゲティング | 自動手動で指定できるのは地域・年齢・言語と、除外オーディエンスのみ(性別は指定不可) | 手動年齢・性別・興味関心・カスタムオーディエンス等を手動設定 |
| 入札 | 自動調整 | 目標CPA・手動入札などを運用者が設定 |
| クリエイティブ | 登録したアセット(最大30本)から自動で組み合わせ | 広告セットごとに固定して検証 |
| 配信面(プレースメント) | コントロール不可 | 手動で指定・除外可 |
| レポートの粒度 | クリエイティブ別・年齢・性別・地域・OS別・配信面別に確認可 | セグメント別に取得可 |
| 運用工数 | 低い | 高い |
先ほどの比較表にある通りSmart+ は運用者の手を離れる領域が大きい一方で、設定や運用の面で押さえておくべき具体的な仕様があります。
先ほどの比較表で最も留意すべき点は結果は把握できるが、それを踏まえて配信をコントロールすることはできないことです。分析はできるが、打ち手は限られるというのが、Smart+ キャンペーンの性質をよく表しています。
たとえば「性別」や「配信面(プレースメント)」は、配信時の指定や除外はできませんが、配信後のレポートでは性別別・配信面別の結果を細かく確認できます。
分析は可能ですが、その結果を受けて手動で特定の性別をオフにするといった打ち手は取れません。
池見
興味関心やカスタムオーディエンスといったセグメントを運用者が指定せず、TikTokピクセルやイベント API から送信されるコンバージョンデータをもとに配信先が決定されます。
手動で指定できるのは地域・年齢・言語、そして除外オーディエンスです。興味関心やカスタムオーディエンスによる絞り込みはできず、性別も指定できません。
除外は設定できるため、既存顧客の除外や、他キャンペーンとのカニバリ対策は打つことが可能です。「配信先をまったくコントロールできない」わけではなく、絞り込みはできないが除外はできるという構造です。
オークションごとの入札調整が自動化されます。運用者が設定するのは日予算と、入札戦略(目標CPAを設定するかどうか)のみです。
登録した動画・画像アセットとテキストの組み合わせが自動で生成・配信されます。登録できるアセットは最大30本です。TikTokは6本以上を推奨しています。
Smart+ キャンペーンでウェブサイトのコンバージョン目的で約1年間配信した結果を解説します。
配信の前提条件は以下のとおりです。
▼配信条件
11ヶ月配信した結果、立ち上げ初期(1〜3ヶ月目)と学習が十分に進んだ安定期(9〜11ヶ月目)を両期間の消化金額はほぼ同額という前提で比較すると、主要な指標で以下のような大きな変化が見られました。
| 指標 | 配信1〜3ヶ月目 | 配信9〜11ヶ月目 | 変化 |
|---|---|---|---|
| CTR | 0.69% | 5.99% | 約8.7倍 |
| CPC | 25.5円 | 11.1円 | 57%低下 |
| マイクロ CVの獲得単価 | 1,044円 | 772円 | 26%改善 |
| クリック→マイクロ CV到達率 | 2.45% | 1.43% | 42%低下 |
CTRは約8.7倍になり、CPCは57%下がりました。マイクロ CVの獲得単価も26%改善しています。 管理画面の数字だけを見れば、順調に伸びたキャンペーンに見えます。
ただし、クリックからフォームページまで進む割合が4割下がっている点が判明しました。
マイクロ CVの獲得単価は「CPC ÷ クリック→マイクロ CV到達率」で決まります。到達率が下がれば、CPCが下がっても単価は下がりません。
CPCは25.5円から11.1円へ、57%下がりました。到達率が2.45%のままなら、単価も同じだけ下がって452円になっていた計算です。実際は772円でした。 差額の320円が、到達率の低下で失われた分です。
つまり単価が改善したのは、クリックが安くなったからであって、クリックの質が上がった結果ではありません。 「タップはしやすいものの、フォーム入力まで進む熱量のないユーザー」をAIが探し出し、大量かつ安価に集める方向へ配信が最適化されていったと考えられます。
今回の入札戦略は「CV 数の最大化」で、目標CPAも設定していません。「フォームページ閲覧を、できるだけ多く、できるだけ安く」という指示を、Smart+はその指示に歯止めなしに11ヶ月忠実に配信し続けていたことになります。

安いクリックを見つけ、単価を26%改善しています。機能していなかったのではなく、与えた目標に対しては機能していたというのが今回の結果と受け止めています。
一方で、その目標が本来ほしいコンバージョンとどれだけ近いかです。学習データを確保するためにマイクロ CV を使うのは定石ですが、目標が手軽すぎると 検討期間が長く、来店を前提とする商材では、本来のコンバージョンに近づきにくいと考えています。
Smart+ キャンペーンの特徴や動き方について説明しましたが、ここからは設定に向けて運用時に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
Smart+ キャンペーンの設定を進めていて最初につまずいたのが、最適化に使うコンバージョンの選択肢の少なさでした。
ここには3つの制約があります。いずれも公式ヘルプに記載はあるのですが、読み込まないと気づきにくい内容です。
最適化に使えるのはTikTokが定義した標準イベントで、自社で作成したカスタムコンバージョンは選択肢に出てきません。
標準イベントは名前が決まっているため、自社で呼んでいる名称とは一致しません。
先ほど紹介した事例の場合だと、計測したかったのは「来店予約フォームの閲覧」でしたが、これを標準イベントに当てはめると「コンテンツの表示」になります。レポート上も「コンテンツの表示数」と表示されます。

どの標準イベントにどのコンバージョンを割り当てるかは、運用者の判断に委ねられます。明確な正解があるわけではありません。
今回は、標準イベントの名称と実際のコンバージョンの中身が、できるだけ乖離しないものを選ぶという基準で判断しました。
池見
公式ヘルプの標準イベント一覧には「サポートされているウェブ目的」という列があります。
イベントごとに「売上」や「リード」「商品販売」といった目的が割り当てられており、キャンペーンの目的と合わない標準イベントは選択できません。
たとえば「カートに追加」「支払い情報の追加」は売上、「お問い合わせ」「登録完了」はリード、といった具合です。

さきほどの制約は、入稿前の準備事項を確認する段階で把握できます。Smart+ キャンペーンは与えた目標に忠実に最適化します。
その目標の選択肢が最初から絞られているということは、「何を目標にするか」の設計自由度が手動キャンペーンより狭いということでもあります。だからこそ、キャンペーンを作り始める前に確認しておくのがおすすめです。
確認しておきたいのは次の3点です。
池見
Smart+ キャンペーンに限らず自動最適化では、配信初期に学習が進みます。この期間に設定を変更すると学習がやり直しになるため、配信開始から7日間は予算・クリエイティブ・設定に手を入れないようにしています。
なお、学習に必要なデータ量について、TikTok の公式ヘルプに明確な目安は示されていません。 運用してみると最適化イベントが20〜50件程度溜まったあたりから配信が安定してくるという感覚はありました。
ただしこの件数は、設定した最適化イベントのハードルによって変わります。 購入や来店予約のような重いコンバージョンと、フォームの閲覧のような軽いコンバージョンでは、同じ件数でも意味が違います。件数だけを見て判断せず、そのイベントが本来のコンバージョンにどれだけ近いかとあわせて考える必要があります。
Smart+ キャンペーンに限らずですが、TikTokの広告はアプリ内ブラウザで開きます。実機で表示や入力動作を確認しておくことを推奨します。
フォーム入力時に普段使いのブラウザへ切り替えるユーザーもおり、その場合は別セッション扱いになります。数値を見る際は、この点を頭に置いておく必要があります。
次にSmart+ キャンペーンの設定手順を解説します。Smart+ キャンペーンの設定は、手動配信に比べて設定項目が絞られているため非常にシンプルです。
まずキャンペーン目的をキャンペーン設定の際に「Smart+ キャンペーン」を選択します。

キャンペーン名を入力し、最適化に使用するCVイベントを指定します。CVイベントはひとつのみ設定できます。

商材や商圏に沿ってターゲティングの設定を行いましょう。

次に予算とスケジュールの設定を設定していきましょう。日予算の最低額は2,000円です。目標成果単価の設定は任意項目です。

クリエイティブとテキストを登録します。入力する項目は以下のとおりです。

Smart+ キャンペーンは、ターゲティング・入札・クリエイティブの組み合わせをTikTok側に委ねる配信メニューです。運用者の手が空くぶん、設定できる項目は狭くなりますが、レポートで結果を確認できる範囲は手動キャンペーンと大きく変わりません。
工数をかけずに配信を回せるという点で、Smart+ キャンペーンは運用リソースが限られたアカウントにとって現実的な選択肢です。日予算2,000円から試せるため、まずは小さく配信して、自社の数字で確かめてみてください。
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