※本記事はITmediaにて掲載されたものです
「おててのしわとしわをあわせて、しあわせ。なーむー」のCMで知られるお仏壇の「はせがわ」。テレビCMで有名なはせがわだが、時代や顧客ニーズの変化に合わせてデジタルマーケティングへのシフトを進め、現在はマス広告とデジタル広告を組み合わせて販促活動や情報共有を行っている。
デジタルの運用型広告はコロナ禍を機に注力し始めたが、「それまで継続的にデジタル広告を運用しておらず、社内に知見を蓄積できていなかった」という。そんな同社の実務をサポートし、デジタルマーケティング戦略を伴走支援したのが総合PR企業のベクトルグループの一員であるキーワードマーケティングだ。
キーワードマーケティングは、長年にわたりさまざまな企業に提供してきた運用型広告に関する知見とグループが持つPR力を強みとする。はせがわを支援する中で、同社の人気商品群であるLIVE-ingコレクション「リビング仏壇」の認知向上を図ると同時に、デジタル広告の成果を最大化する「検索創出型マーケティング(Search Creation Marketing:SCM)」によって検索件数を増加させつつ広告CPA(顧客獲得単価)を約2分の1に抑制したという。
具体的な施策内容と、PRで広告成果のレバレッジを効かせる検索創出型マーケティングについて、はせがわの吉田普氏と福田惇弥氏、キーワードマーケティングの中野哲英氏に話を聞いた。
仏壇業界のリーディングカンパニーを取り巻く社会事情
1929年創業のはせがわは、福岡と東京を拠点に全国136店舗(2024年5月現在)で事業を展開する仏壇や仏具、墓石の専門企業だ。吉田氏によると、同社の販促・プロモーション戦略はコロナ禍で大きく変化したという。
高度経済成長期を通じコロナ禍まで、同社は主にロードサイドへの出店を進めてきた。並行してテレビCMで認知を拡大し、折り込みチラシで来店を促し、ユーザーに直接はせがわの良さを訴求する手法を採用していた。
しかし、2020年のコロナ禍で1カ月ほどの休業を余儀なくされ、店舗への誘致を制限されることになる。外出自粛が求められる中で世のデジタルシフトが加速し、人々の行動様式にも変化が見られた。これに対応するため、同社内でもデジタルに注目が集まりWeb広告の本格的始動や自社マーケティングサイトのリニューアルが行われた。コロナ禍が一段落した2024年現在、プロモーションチームの戦略はマス広告とデジタル広告を融合させたハイブリッド型に移行しているという。
「デジタル強化の背景には、仏壇業界を取り巻く環境変化も要因です」と吉田氏。家具メーカーやホームセンターでも格安の仏壇を扱うようになり、オンラインでも積極的に販売を始めている。こうした企業はデジタル活用で先行しており、同社にとってデジタルディスラプターになる恐れがあった。
加えて、少子高齢化が進む日本では多死社会が続くとみられるが、価値観の多様化によって供養単価は減少傾向にある。供養や葬儀に関する情報と接する機会も減っているため、「必要になったときに急いで探す」という新たな事態も発生している。
はせがわは仏壇業界のリーディングカンパニーとして、葬儀や供養に関する正しい情報や企業メッセージの発信に取り組んできた。SNSは手軽だが、葬儀や供養に臨む人々に「バズり」「面白さ」は合わない。一人一人に寄り添いながら、適切な手段でメッセージを伝えることに腐心していた。
デジタル広告運用のサポートにキーワードマーケティングを選定
広告展開にも課題があった。コロナ禍でデジタル広告を運用していたものの、リスティング広告はCPAが高く、上限予算に達してしまう事態も少なからず発生したという。ディスプレイ広告も併用していたが、社内にはデジタル広告運用に関する知見の蓄積が乏しかった。そんな中、縁あって出会ったのがキーワードマーケティングだった。
2004年設立のキーワードマーケティングはデジタル広告運用に強みを持ち、2022年12月にはアジア有数の総合PR企業ベクトルグループにジョインした。
キーワードマーケティングがはせがわの広告・マーケティング領域の支援に当たることになったのは2022年春からだ。デジタルの広告予算を段階的に増やす予定であったはせがわに、キーワードマーケティングは親切丁寧に相談に乗った。吉田氏は「限られた予算内での広告費にもかかわらず、設定や変更作業、疑問や質問にもきめ細かく対応していただきました」と話す。福田氏も「デジタル人材不足でWebやECチームが多忙の中、キーワードマーケティングはすぐに心強いパートナーになりました」と振り返る。
「リビング仏壇」の認知促進に向けて検索創出型マーケティングを実施
デジタル広告は、単純な運用だけでは効果を最大化するのは難しい。キーワードマーケティングの中野氏は、デジタル広告の限界について次のように説明する。
「デジタル広告市場は拡大を続けており、中でもリスティング広告はここ数年で約2倍の伸びを示しています。それだけ競合が多いので平均クリック単価も年々上がっており、必然的にCPAが上がってしまうのです」
リスティング広告は、ニーズが顕在化している層に訴求する刈り取り型の広告だ。繰り返すと全体のボリュームが先細り、CPAも高くなる。ボリュームを拡大するには潜在層へのアプローチが必要だが、デジタル広告だけでは膨大なコストと期間がかかる。
そこで2023年6月、キーワードマーケティングは新しい手法である検索創出型マーケティングをはせがわに提案した。PR施策を通じて、消費者やメディアも含めた“誰もが分かりやすく、検索しやすいワード”を創出し、デジタルマーケティング全体の効果を向上させるソリューションだ。中野氏は「第三者による客観的な情報発信によって、コンバージョンにつながる検索流入を直接的に創出する手法が検索創出型マーケティングです。PRと広告(デジタルマーケティング)を掛け合わせることでレバレッジを最大化できるため、そのポテンシャルは非常に大きいです」と話す。
こんな事例がある。あるアプリ開発企業で検索創出型マーケティングを実施したところ公共放送のニュース番組で社長インタビューが放映され、検索ボリュームが爆発的に増加。広告のコンバージョン数も大きく向上した。これはPRと広告運用の強みを持つキーワードマーケティングならではの成果だ。
検索創出型マーケティングの提案を受けた当時、はせがわは悩みを抱えていた。日本を代表する家具メーカーと共同開発した「リビング・コレクション」で業績を伸ばしていたが、これについて経済ニュースで「リビング・コレクションに対して、当社が意図しない表現が使われてしまった」(吉田氏)のだという。リビング・コレクションは伝統的な仏壇とは異なる路線で売り出していたため、商品のブランドを毀損するのではないかという懸念が生じた。
こうした背景を受け、吉田氏は「仏壇業界にとって最大の販売期であるお盆の時期に、リビング・コレクションを主題に検索創出型マーケティングを展開することにしました」と話す。
キーワードマーケティングと共に記者会見の準備や優良メディアの選定を進めながら取り組んだのが「言葉作り」だ。リビング・コレクションを知らない人は、この言葉を聞いても仏壇だとは理解できない。そこでキーワードマーケティングが「リビング仏壇」と命名し、施策でこの言葉を展開した。
併せて検索アクションの増加を見込み、リビング仏壇のランディングページも用意した。最終コンバージョンである売り上げの向上と、中間コンバージョンとしてリスティング広告からの来店予約増加を目指した。検索創出型マーケティングの実施を決めてから会見まで約1カ月しかなかったが、キーワードマーケティングの機動力でスムーズに進行した。
PR効果で「リビング仏壇」の検索件数は増加 一方でCPAは約半分に
2023年8月に記者会見を実施するとリビング仏壇のニュースは多数のメディアで報道され、通信社ニュースとしても配信された。はせがわの思いや言葉も記事化され、「質の高い露出になりました」と吉田氏は評価する。
PR施策後、「リビング」「仏壇」の両方を含むGoogleの検索件数が前月比で3.5倍に増加した。従来の約2分の1のCPAで来店予約やカタログ請求を獲得できたという。
施策を実施したことで「リビング仏壇」という言葉が根付いたことも、大きな成果だった。先の報道で用いられたキーワードと比べ、「リビング仏壇」の検索ボリュームは2.5倍となり、2024年10月時点では10倍以上の差がついた。福田氏は「これまでリビング仏壇のような商品カテゴリーを表す業界用語は定着していませんでした。しかし検索創出型マーケティングで『リビング仏壇』を訴求することで、その強みや従来商品との差別化ポイントをしっかり伝え、認知を獲得できました。意図を持って差別化することで、店頭でお客さまへ商品説明する際も自信を持っておすすめできるようになると思います」と話す。
膨大な広告費の一部をPRに転用すれば広告効果を最大化できる
キーワードマーケティングの中野氏は言う。
「デジタル広告だけでは獲得も認知も限界があり、広告費は青天井になります。それに対し、記者会見などのPR施策は数百万円の予算から実施できます。もちろん、テレビや新聞、WebニュースによるPR発信は報道機関が持つ独立した編集権があるため『掲載を確約できない』という不確実性を伴います。しかし、各媒体を見た人たちが検索し、広告のレバレッジが効きやすくなる効果には十分期待できます。広告戦略に課題を感じている企業には、チャレンジする価値があるはずです」
はせがわはリビング仏壇の施策成果を受け、2024年に「樹木葬」をテーマにした検索創出型マーケティング施策を実施した。今後はよりニーズが高まる「終活」分野にも取り組み、仏壇を中心にした終活の提案やサポートを展開するという。この終活を、はせがわは「ピースフルライフサポート」と呼んでいる。中野氏は引き続きはせがわの広告・マーケティング戦略をサポートしながら、ピースフルライフサポートの認知拡大に貢献する構えだ。
吉田氏は「キーワードマーケティングには今後も信頼できるパートナーとして伴走をお願いしつつ、AI活用やプライバシー保護など大きな変革期を迎えているデジタル広告戦略についても、検索創出型マーケティングのような新しい手法と組み合わせた最新の施策に一緒に取り組んでいきたいです」と話す。続く福田氏も「これからもデジタル領域の知見を生かし、はせがわが最新トレンドやお客さまニーズに合わせてビジネスを展開できるようなアドバイスに期待しています」と、笑顔を見せた。
PRと広告運用の両面からアプローチすることで、コストを抑えて効果を引き出せる検索創出型マーケティング。マーケティング施策に課題があるなら、問い合わせてみてはいかがだろうか。