2008年からキーワードマーケティングに在籍し、以降10年以上広告運用に携わっている小島です。
Google のブログで、2024年1月4日(木)から、全世界の Chrome ユーザーの1%に対して、サードパーティ Cookie の使用を廃止する旨が発表されました。Google は2020年あたりからサードパーティ Cookie の使用を全面的に廃止すると宣言していたため、この発表では具体的な日程が提示された形になります。
2024年7月、Googleからサードパーティ Cookie の使用廃止の見直しが発表されました
参考:A new path for Privacy Sandbox on the web|The Privacy Sandbox
今回の記事では、この「Chrome でサードパーティ Cookie 使用が廃止されるとはどういうことか」をまとめてお伝えしたいと思います。
2024年1月4日(木)から全 Chrome ユーザーの1%にあたるユーザーに対して、2025年初頭からは全ての Chrome ユーザーに対して段階的にサードパーティ Cookie を廃止する予定となっています。
これまではサードパーティ Cookie を利用して、サイトに訪れたユーザーに印をつけることで、さまざまなデータを取得できていました。例えば、フォームのサンクスページが表示されたときにコンバージョンとして計測してコンバージョン数を計測したり、特定ページに来た方をリマーケティングリストに保存してターゲティング広告を出したりといったものが、代表的な活用例です。
しかし、これらのサードパーティ Cookie を利用したデータ取得は、サードパーティ Cookie が廃止されることにより計測できなくなります。
このサードパーティ Cookie の廃止に先立ち、Google は別の手段でコンバージョン計測やリマーケティングを実現できる「プライバシーサンドボックス」という技術を開発しました。ただ、これはまだ世に出ていないもののため、どのような状況になるか正確には誰も分かりません。そのため、まずは1%のユーザーで試し、その後段階的に展開していくという手順を踏んでいると考えられます。
ここまで「サードパーティ Cookie」という言葉を繰り返し使用してきましたが、そもそも「サードパーティ Cookie」とはどんなものでしょうか。
まず、「Cookie」は Web サイトにユーザーの情報を保存する小さなデータファイルです。Cookie があることで、Web サイトはユーザーが訪問した回数などの記録を残すことができます。
次に「サードパーティ」は主に関わっている二者以外の第三者のことを指します。広告のランディングページで例えると、「広告主側」から見たファーストパーティは広告主、セカンドパーティはサイトに訪問したユーザー、サードパーティはそれ以外の第三者となります。Web 広告だと、この第三者は Yahoo! や Google などの媒体になります。
要するに、サードパーティ Cookie は「サイト運営者(広告主)と閲覧している方以外、つまり Yahoo! や Google といった媒体などが発行している Cookie」ということになります。
サードパーティ Cookie が廃止されることで、今までの方法ではユーザーの行動履歴を追うことができなくなります。
では、行動履歴を追えなくなることで、どのような状況になるのでしょうか?
広告運用担当者の視点では以下の2点に留意すべきです。いずれも、ユーザーの過去の行動を把握できなくなることが原因となります。
サードパーティ Cookie が廃止されることで「どの広告をクリックした人がコンバージョンしたか」という計測もできなくなり、さらに行動をターゲティングした広告も基本的には不可能になります。
Google などの媒体側もこの点は当然認識しており、サードパーティ Cookie に代わるコンバージョン計測や過去の行動に対するターゲティングの新たな技術を作り出しています。しかし、新たな技術を用いた計測がどの程度の精度があるかは未知数です。
一方、個々のユーザーの視点でみた場合は、行動履歴などが残らなくなるためプライバシー保護やセキュリティの強化に繋がるともいえます。
ただし、行動履歴などが残らなくなることはユーザーに関連度が高いコンテンツを提供するような仕組みがなくなることともいえるので、結果的にユーザーの利便性を損ねることになる可能性もあります。
例えば、現在の検索結果は過去の行動履歴などをもとに、ユーザーの興味関心に沿った形でパーソナライズされています。こういった利便性を向上させるようなことができなくなるため、Web 上での体験が貧弱になってしまうこともありうるのです。
ここまで見てきた通り、Google Chrome のサードパーティ Cookie は将来的に完全廃止になる予定です。それでは、Chrome 以外のブラウザではどのような対応になっているのでしょうか。
ここでは、現在 Chrome に次いで国内シェア数の多いブラウザである Safari と Edge、Firefox の3つに焦点を当てて、それぞれのサードパーティ Cookie への対応を紹介します。
Apple が提供する Safari では、2020年3月から初期設定でサードパーティ Cookie を受け付けないようになっています。
設定を変更することでサードパーティ Cookie を受け入れることは可能ですが、わざわざ設定を変更してまでサードパーティ Cookie を受け入れる方は少数だと思われます。そのため既に実質サードパーティ Cookie を使えない状態だと言えそうです。
2024年1月現在、Microsoft の Edge はサイトに応じてサードパーティ Cookie の受け入れを自動的に遮断しているようです。
サードパーティ Cookie の受け入れを遮断した場合はメッセージが表示されるため、都度受け入れをおこなうことはできます。ただし、メッセージがなかなか気付きにくい形式なのもあり、多くの場合遮断されたままになっているのが現状です。
Mozilla が提供する Firefox では、2022年6月に「包括的 Cookie 保護」という方法でサードパーティ Cookie を規制しています。
包括的 Cookie 保護とは、サードパーティ Cookie を受け入れるものの、そのサイトでのみ使用を許可するような仕組みで、こちらも実質的にサードパーティ Cookie は使用ができないと考えてよいでしょう。
この章の冒頭でも述べた通り、ここで紹介したブラウザはいずれも Chrome に次ぐ国内シェアを誇るものばかりです。StatCounter のデータによると、2024年3月の国内での各ブラウザのシェアは Chrome が54.75%、Safari が24.88%、Edge が13.29%、Firefox が3.87%となっています。
このように、何らかのサードパーティ Cookie 規制がかかっているブラウザが現時点で全体の約42%を占めています。これに Chrome が加われば、ほぼ全てのユーザーに対してサードパーティ Cookie に対する規制がかかることになります。
Google をはじめ、Yahoo! や Meta などもサードパーティ Cookie 廃止に対する対策は色々と取ってはいますが、ブラウザシェア No.1である Chrome でも規制された後の世界は、現時点では誰も正確なことは分かりません。
ただ、広告運用担当者としては、これは逆にチャンスと捉えることもできると私は考えています。
サードパーティ Cookie の廃止や機械学習による広告運用の半自動化が進んだとしても、肝心の「市場」自体は何も変わるものではありません。
コンバージョンを取りやすいキーワードはそうそう変わるものではありません。また管理画面上のコンバージョン計測の精度が落ちてあまりあてにならない状況になっても、クライアントと協力し、実際の販売数や問い合わせ数をしっかり把握していれば、何らかの施策をした場合の効果も分かります。
今後が不確定な状況だからこそ、媒体から最新情報が公開されたときにいちはやくキャッチして広告運用に活用できれば、競合より一歩先を行くことができますので積極的な情報収集を心がけましょう。
臨機応変に、時に大胆に、近視眼的にならず管理画面内外の情報やデータを使って、運用を行える担当者になっていきましょう。私もそういった運用担当者を目指していきます。
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