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ポートフォリオ入札戦略の「使いどころ」を徹底解説!メリット・デメリットを具体例付きで紹介

広告運用の現場では、自動入札がすっかり主流になりました。とはいえ「キャンペーン数が多すぎて目標値の管理が追いつかない」「コンバージョンが少なく、学習がなかなか進まない」といった悩みを抱えている方も少なくないはずです。

こうした課題は、キャンペーン単位の最適化だけでは解決が難しいケースがあります。そこで解決策のひとつとなるのが、複数のキャンペーンを一括で管理できる「ポートフォリオ入札戦略」です。

この記事では、ポートフォリオ入札戦略が必要となる場面やメリット・デメリットを整理し、実際の施策事例も交えて解説します。

ポートフォリオ入札戦略とは

ポートフォリオ入札戦略とは、複数のキャンペーンを一つのポートフォリオとしてグループ化して自動最適化する機能です。一つにまとめられたキャンペーンは共通の目標(例:目標コンバージョン単価)に基づいて最適化されます。

キャンペーン単位で個別最適化をおこなう通常の自動入札とは異なり、アカウントをより大きな視点で捉える考え方に基づいています。

ポートフォリオ入札戦略のメリット

ポートフォリオ入札戦略を導入することによるメリットは大きく2つあります。

多数のキャンペーンの目標値を一元管理できる

アカウントの規模が拡大し、キャンペーン数が増加すると個別に目標値(目標 CPA や目標 ROAS など)を設定する作業は煩雑になりがちです。

そこで役に立つのがポートフォリオ入札戦略です。共通の目標を持つキャンペーン群を1つのグループとしてまとめて管理できます。

たとえば、全国に50拠点を持つ企業が拠点ごとに50個のキャンペーンを運用しているケースを考えてみましょう。全拠点で同じ CPA 目標を設定しているなら、ポートフォリオの設定を一度変更するだけで、すべてのキャンペーンに反映されます。

この仕組みにより、数十件にもおよぶ手作業での更新が不要になり、大幅な工数削減につながります。さらに管理の効率化や設定ミスの防止にもつながるため、アカウント全体を一貫した方針で運用できるのです。

コンバージョンデータの少ないキャンペーンの機械学習の効率を向上できる場合がある

自動入札はコンバージョンデータを基に機械学習をおこないます。しかし、月に数件しかコンバージョンが発生しないキャンペーンでは、学習に必要なデータが不足し、最適化が進みにくくなります。

そこで役立つのがポートフォリオ入札戦略です。複数のキャンペーンをひとつに束ね、共通の目標を設定できます。これにより、個別のコンバージョンが少なくても、ポートフォリオ全体の合計コンバージョンデータを使って学習を進められるのです。

たとえば、月に3件しかコンバージョンがないキャンペーンが10個あるとします。単独では少なすぎるデータですが、まとめれば合計30件。AI はこの規模のデータを基に学習できるため、キャンペーン単位では難しかった最適化が期待できるでしょう。

EC サイトなどで「赤字ライン」が明確な場合、採算割れのリスクを管理できる

ポートフォリオ入札戦略は、自動入札の一種です。Google の AI が「目標達成に近づくために最適な入札単価」を自動で判断します。たとえば「このクリックは成果につながりやすい」と判断すれば入札を強める、といった動きです。

ただし、自動入札では単価が上がりすぎて CPA が見合わなかったり、逆に下がりすぎて配信量が落ちたりするケースもあります。こうしたリスクを管理できるのがポートフォリオ入札戦略の強みです。

具体的には「クリック数の最大化」を選べば、運用者が上限クリック単価を設定できます。たとえば EC サイトで「1クリック500円を超えると赤字になる」とわかっているなら、上限を500円に設定すれば入札額はそれ以上になりません。

さらに「目標コンバージョン単価」「目標広告費用対効果」の戦略でも、上限・下限のクリック単価を指定できます。ただし、この設定は機械学習の柔軟性を損なう場合があるため、必要に応じて使い分けましょう。

ポートフォリオ入札戦略のデメリット

ここまでポートフォリオ入札戦略のメリットをお伝えしましたが、一方でデメリットも存在します。導入する際には以下の点にも留意しておきましょう。

キャンペーン単位での細かいコントロール性を失う

これまで解説してきたように、ポートフォリオ入札戦略は個々のキャンペーンではなく、グループ全体の成果が目標値に合うように最適化されます。そのため、Google の AI が自動で判断をおこないます。成果の良いキャンペーンの入札を強めたり、別のキャンペーンから予算を融通したりするのです。

便利ではありますが、全体の効率化と引き換えにキャンペーン単位での直接的なコントロールは失われます。ここはポートフォリオ戦略を導入する際に理解しておきたいデメリットです。

全体の成果に偏りが生まれる可能性がある

ポートフォリオ入札戦略は、ポートフォリオ全体の目標達成を最優先にします。つまり、AI は成果が出やすいキャンペーンを優先し、そこに入札や予算を集中させる傾向があります。たとえば、コンバージョン率が高い指名検索用キャンペーンがその典型です。

その結果、全体としては目標 CPA や ROAS を達成できていても、内訳を見るとバランスが崩れる場合があります。例えば、指名検索向けと一般検索向けのキャンペーンを同じポートフォリオで管理していたときに、指名検索のキャンペーンでは成果が取れていても、一般検索のキャンペーンでは成果が伸び悩むといったケースです。

全体の効率化が、逆に一部のキャンペーンの成長機会を奪ってしまうというリスクは、ポートフォリオ入札戦略を活用するうえで理解しておきたいデメリットのひとつです。性質の異なるキャンペーンは、ポートフォリオを分けて管理することを検討しましょう。

パフォーマンス分析や評価がしにくくなる

ポートフォリオ入札戦略では、管理画面に表示されるのはグループ全体の平均的なパフォーマンスです。たとえば平均 CPA などが目立つ一方で、個々のキャンペーンの成果は見えにくくなります。

そのため、ポートフォリオ全体では目標 CPA を達成していても、実際には「キャンペーン A が非常に好調で、キャンペーン B の大きな不調を補っている」といった状態が起こり得ます。全体の数値だけを見ていると、このような個別の問題点に気づくのが遅れるリスクがあります。

つまり、ポートフォリオの平均値だけに安心してはいけないということです。定期的にキャンペーン単位や広告グループ単位での成果を確認し、丁寧に評価する手間が必要になります。これもまた、ポートフォリオ戦略を導入するうえで意識してみましょう。

ポートフォリオ入札戦略が設定できる入札戦略

ポートフォリオ入札戦略を使用できる入札戦略をまとめました。

入札戦略によっては上限・下限クリック単価を設定できないもの、上限クリック単価の設定に限られる戦略もあるので、よく確認しておきましょう。

入札戦略 概要 上限、下限クリック
単価の設定

目標インプレッション
シェア

選択した位置に表示される可能性が高まるように、入札単価が設定される 上限クリック単価のみ
設定可能
クリック数の
最大化
予算内でクリック数が最大化されるように、入札単価が設定される 上限クリック単価のみ
設定可能

コンバージョン数の
最大化

予算内でコンバージョン数が最大化されるように、入札単価が設定される 設定不可
目標コンバージョン単価 目標とする平均コンバージョン単価を維持しながら、できるだけ多くのコンバージョンを獲得できるよう、入札単価が設定される 設定可能
コンバージョン値の
最大化
予算内でコンバージョン値を最大化できるように入札単価が設定される 設定不可
目標費用対効果 目標広告費用対効果(ROAS)を維持しながらコンバージョン値を最大化できるよう、入札単価が設定される 設定可能
ポートフォリオ入札戦略が設定できる入札戦略

ポートフォリオ入札戦略の設定方法

それでは実際にポートフォリオ入札戦略の設定方法について、管理画面上のキャプチャを用いて説明します。

Google 広告の管理画面にログイン後、画面左の「ツール」→「予算と入札単価」→「入札戦略」の順にクリックします。

Google 広告管理画面 > ツール

「ポートフォリオ入札戦略」のタブに切り替わっていることを確認して「+」ボタンをクリックし、設定したい入札戦略を選びます。今回は目標コンバージョン単価を選択します。

入札戦略 > ポートフォリオ入札戦略

この画面で具体的な設定をおこないます。設定項目についてはそれぞれ下記の通りです。

  1. 名前:任意の名前を設定する
  2. オーナー:利用する広告アカウントを選択する
  3. 通貨:日本円を選択する
  4. キャンペーンを選択:設定を反映させるキャンペーンを選択する
  5. 目標コンバージョン単価:具体的な目標値を設定する
  6. 入札単価の下限、上限:設定は任意なので不要な場合は空欄にする

以上の項目を入力し、「保存」のボタンを押すことで、実際にキャンペーンに入札戦略が反映されます。

ポートフォリオ入札戦略導入で CPA 削減、コンバージョン増加した良化事例

ここでは、ポートフォリオ入札戦略の導入によって CPA やコンバージョン数を良化させた事例を紹介します。

この事例となった商材は、自動入札を使用すると入札価格が高騰してしまう傾向がありました。、そのため、ポートフォリオ入札戦略を導入する前は「拡張クリック単価」を使用して配信を行っていました。

そこでポートフォリオ入札戦略を導入にあたり以下の2つの施策を実施しました。

  • 「目標コンバージョン単価」のポートフォリオ入札戦略へ変更
  • 入札の暴走を防ぐため、「上限クリック単価」を設定

結果的に、入札額の過度な高騰を抑えつつ、自動入札の機械学習を活かしてCV率が上昇し、CPAを約2,000円ほど抑え、CV数を10件増加させることができました。

項目導入前導入後
平均クリック単価180円260円
広告費145,050円202,520円
CV数3040
CVR3%4.3%
CPA10,370円8,080円
ポートフォリオ入札戦略の実施事例

ポートフォリオ入札戦略を導入してみよう

広告運用において、自動入札での運用は一般的になっている一方で、まだまだ機械学習をうまく活用しきれないといった声も耳にします。

個別の自動入札では、「キャンペーンが多くなり管理が煩雑」「自動入札の単価の高騰が不安」といった課題を感じている方もいるかもしれません。そこで、キャンペーンを横断して入札を管理しつつ、上限クリック単価など一部コントロールすることも可能なポートフォリオ入札戦略は活用するメリットが大いにあります。

現在の自動入札の成果に頭打ちを感じているという方がいれば、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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記事を書いた人

古川 雄大
古川 雄大

広告運用 コンサルタント

2021 年入社。大学では理工学部に所属し、制御工学を専攻。また、陸上競技部(短距離走)で活動。キーワードマーケティング入社後、広告事業部に配属される。趣味は海外ドラマ鑑賞と小説を読むこと。おしゃれなカフェや居酒屋に行くことが好き。

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