
Google 広告の「P-MAX (パフォーマンス最大化)」を導入したものの、期待したほどの成果が得られず、運用に行き詰まりを感じていないでしょうか。
特に BtoB 商材や、季節要因が大きい商材の場合、「そもそも CV 数が少なく、機械学習がうまく回っていない」「閑散期などCV が減る時期に、一気にパフォーマンスが落ちる」といった課題に直面しがちです。
また、「長らく安定していたのに、急に成果が悪化してきた」「今の設定のままでは、これ以上の伸びしろが見えない」という声もよく耳にします。
こうした状況から抜け出すには、P-MAX の自動化に全てを任せるのではなく、機械学習の精度を上げるための「学習データの質」を人間がコントロールする必要があります。
本記事では、その鍵となる「コンバージョン設計」の考え方と、機械学習を意図通りに機能させて成果を伸ばしていくための具体的なアプローチを、実際の事例をもとにご紹介します。
P-MAX の運用では、キャンペーン開始後に機械学習が最適化を進める「学習期間」があります。しかし、以下のような状況が続いている場合、機械学習が正しく機能していない可能性があります。
P-MAX の自動入札は、設定されたコンバージョン(CV)を最大化するように学習します。そのため、成果が停滞する原因の多くは、学習データとなる CV の「量」か「質」の不足にあると考えられます。
CV の「量」や「質」が不足しているとどのような影響が出るのか紹介します。
BtoB や高単価商材では、成約や問い合わせなどハードルの高い CV のみを設定している方も多いのではないでしょうか。
しかし、Google 広告のヘルプによると、自動入札を機能させるには過去30日で最低30件(目標広告費用対効果の場合は 50 回以上)のデータが推奨されており、月に数件の CV では機械学習がユーザー傾向を掴めず、最適化が働きません。
データ不足を補うために「ページ閲覧」などの浅い CV を追加すると、AI は「簡単に獲得できる CV」を優先して学習します。結果、管理画面の CV 数は増えても実際の商談や売上には繋がりません。
つまり、P-MAX の運用が行き詰まるアカウントは、「CV データの量と質」のバランスが崩れ、AIに対してビジネス上の正しい目的(正解)を示せていない状態です。

この状況を打破し、自動入札を機能させるには、以下の2つのアプローチで「コンバージョン設計」を見直す必要があります。
ここからは、このアプローチで P-MAX 広告を運用した結果を紹介します。具体的な設定方法や改善策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
最初の事例は、繁忙期と閑散期の差が激しい「BtoB 向け EC サイト」の取り組みです。
閑散期に入ると最終目標である「購入」が激減し、P-MAX の学習に必要なデータが不足していました。その結果、機械学習がうまく回らず、成果が一気に落ち込んでしまう状態でした。
購入の手前にある「カート閲覧」を新たな CV として追加し、入札戦略を「コンバージョン値の最大化」に変更しました。
その際、カート閲覧の価値を購入単価の「50分の1」とあえて低く設定し、「本命はあくまで購入」という優先度をAIに教えつつデータを安定供給させることを狙いました。
閑散期でも「カート閲覧」のデータが途切れず供給されるようになり、機械学習が安定して稼働しました。
| 変更前後 | CV 数(購入数) | ROAS |
|---|---|---|
| 変更前 | 5 | 1900% |
| 変更後 | 10 | 4500% |
結果として、最終目標である「購入数」は前月比で約2倍に増加しただけでなく、ROAS も2倍以上改善し、大きな成果に繋がりました。
BtoB向け商材で、CV の波を安定させた事例です。このアカウントでは、日々のCV (問い合わせ)発生数に大きな波がありました。P-MAX の機械学習に必要なデータが安定して供給されず、パフォーマンスが乱高下してしまう状態でした。
学習データを増やすため、事例1と同様に新たなコンバージョンポイントを追加しました。その際、追加した「お問い合わせフォームの送信」の価値を10、最終的な目標である「一番欲しいCV (本申込)」の価値を100に設定しました。
ポイントは、価値に10倍の差をつけたことです。単にデータを増やすだけでなく、「どちらもCV だが、ビジネス上の重要度が違う」という明確な優先順位を AI に学習させる狙いがありました。
施策を実施した月は目立った変化がありませんでしたが、AIの学習に十分なデータが蓄積された1ヶ月後あたりから、徐々に成果が安定し始め、CPA(顧客獲得単価)が約35%良化しました。
| 変更前後 | CV 数 | CPA |
|---|---|---|
| 変更前 | 20 | 14,000 |
| 変更後 | 50 | 9,000 |
データの「量」を補いつつ、「質(重みづけ)」を正しくAIに伝えたことで、効率的な獲得に成功しました。
最後に、自動化の領域が広い P-MAX ならではの「意図しない配信の偏り」に対し、運用側の工夫で成果を立て直した事例を紹介します。
この事例の商材では、チャネル別パフォーマンスを確認したところ、広告費の約7割がYouTube 面に偏っている期間がありました。
▼P-MAX 広告の「チャンネルのパフォーマンス」についてくわしく解説
P-MAX広告のチャンネルのパフォーマンス。3つの活用方法と基本的な使い方を解説|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
P-MAX の多岐にわたる配信先を成果を確認できる「チャンネルのパフォーマンス」。機能の概要から基本的な使い方、結果の活かし方、注意点までお伝えします。
特に BtoB 商材を扱う当アカウントにおいて、YouTube 経由のCV は商談に繋がりにくく「質の良いリード」は期待できません。そのうえYouTube 面の CPA も悪化していたため配信を止めたかったのですが、P-MAX の仕様上「YouTube 面だけを停止する」といった細かな調整はできません。
さらにデータを深掘りすると、YouTube 面への配信増加と同時に「スマートフォンへの配信量」も急増していたため、P-MAX の学習を正しい方向へ修正するため、以下の2点を実施しました。
スマホ配信を止め、ビュースルーCV の評価基準を厳しくしたことで、媒体側がYouTube 面(スマホでの動画視聴)を過大評価しなくなりました。
結果として、本来獲得したかったPC 面での配信割合が適正化され、質の高い実 CV の獲得ペースを取り戻すことができました。
ここまで、P-MAX の成果を改善するための「コンバージョン設計(量と質のコントロール)」と、配信面の偏りを防ぐ工夫について解説してきました。
P-MAX の自動化ポテンシャルを最大限に引き出すためには、AIに「何が本当の成果か」を正しく教える必要があります。記事を読み終えたら、ぜひ管理画面を開き、以下の3つの手順で設定を見直してみてください。
まずは「目標」>「コンバージョン」を開き、各アクションの「値」を確認します。
事例のように、マイクロCV (フォーム遷移など)と最終CV (成約など)の間で、ビジネス上の重要度に応じた明確な差(重みづけ)が設定されているかがポイントです。
▼具体的なコンバージョン値の重みづけに関しては、以下の記事で解説!
Google広告のコンバージョン値とは?基本からコンバージョン数との違い、設定方法まで解説|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
コンバージョンがすべて同じ価値ではない場合にビジネスへの貢献度を評価する値がコンバージョン値と呼ばれる指標です。今回はコンバージョン値とコンバージョン数との違いや、向いている商材、設定方法などもご紹介します。
新しく追加したマイクロ CV をP-MAX の最適化に使う場合は、キャンペーン設定の「コンバージョン目標」から「キャンペーン固有の目標を使用する」を選択して設定しましょう。
アカウント単位のデフォルト目標に追加してしまうと、ほかの全てのキャンペーンの最適化にも影響が出てしまうため注意が必要です。
せっかく CV に重みづけをおこなっても、入札戦略が「コンバージョン数の最大化」のままでは、設定した価値の違いがAIの学習に反映されません。
対象となる P-MAX キャンペーンの入札戦略が、必ず「コンバージョン値の最大化(または目標 ROAS)」に設定されているか、最後に確認してください。
自動化が進む現在の広告運用において、「AI に全て任せる」のではなく、AIに正しいデータを与えるための環境作りこそが、私たち運用担当者の大切な役割だと考えています。
最近 P-MAX の成果が伸び悩んでいると感じたら、ぜひ今回の事例を参考に、コンバージョン設計の見直しから始めてみてください。
広告運用 コンサルタント
2023年入社。茨城県出身。大学時代は、コピーライティングと商品企画を学ぶ。趣味は、自転車でのんびり旅すること、アニメを見ること、野生動物の撮影をすること。特に野鳥が大好きで、ほぼ毎日Twitterに野鳥の写真をアップしている。野鳥の写真がバズってYahoo!ニュースに掲載されたこともある。
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