Instagram で商品・サービスの魅力を伝える手法として、インフルエンサーやクリエイターと企業が連携する「タイアップ投稿」の機能が注目を集めています。しかし、実施にあたっては Instagram 上での仕様理解だけでなく、ラベル表示やステマ規制など、法令順守の観点でも注意が必要です。
この記事では、Instagram の「タイアップ投稿」の概要から、ブランドコンテンツと広告の違い、設定手順などを詳しく解説します。
タイアップ投稿の活用を考えている企業のマーケティング担当の方や、タイアップ投稿の依頼があり設定手順を知りたいクリエイターの方もぜひ参考にしてください。
Instagram における「タイアップ投稿」とは、企業やブランドがインフルエンサーやクリエイターに自社の商品やサービスを投稿してもらい、タイアップであることを明示したうえで宣伝してもらう手法です。
Instagram が公式機能として提供しており、この機能を使うと、投稿のアカウント名の下に「〇〇(ブランド名)とのタイアップ/Paid partnership with 〇〇」というラベルが表示されます。
一見すると通常のオーガニック投稿のように見えることもありますが、上記のようにタイアップ投稿のラベルがついていることにより、企業とのタイアップ投稿であることがユーザーにも伝わるようになっています。
タイアップ投稿をおこなう際に、企業・インフルエンサーともに気を付けたいのがステルスマーケティング(以下、ステマ)に抵触しないことです。
特に令和5年10月1日からは、景品表示法においてステマも不当表示の一種として規制対象に加わり、企業側の責任も厳しく問われるようになっています。
景品表示法上、事業者は、優良誤認表示及び有利誤認表示以外にも、自己の供給する商品又はサービスの取引について、商品又はサービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示を行ってはならないとされています。
(中略)
7. 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
(ステルスマーケティング)事業者が自己の供給する商品又はサービスについて行う表示であるにもかかわらず、一般消費者が事業者の表示であることを分からない場合は不当表示となります。
事例でわかる景品表示法(令和6年7月改訂)|消費者庁
ステマとは、企業が関与していることを隠して、あたかも第三者の中立的な意見であるかのように商品やサービスを紹介する行為です。
口コミやレビューなどの第三者の意見は購買行動に大きな影響を与えるようになっており、そうした影響力を逆手に取って消費者を誤認させる手法が問題視されるようになったことから、ステマへの規制が強化されました。
▼ステマについて詳しく知りたい方はこちら
ステルスマーケティング(ステマ)とは?規制と事例から正しいプロモーション方法を知ろう|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
ステマ(ステルスマーケティング)とは、企業が一般消費者に対して広告であることを隠して商品やサービスの宣伝をおこなうことです。
注意すべき点は、投稿に「#PR」表記をしていても、位置が分かりづらいなどの理由で意図せずステマとみなされてしまう可能性があることです。ステマ規制に抵触しないためには、企業とのタイアップである旨を明記することや、「#PR」表記を投稿の冒頭など視認性の高い位置に記載することが重要です。
また、ステマ規制は投稿を依頼した事業者が対象となるため、インフルエンサーに任せきりにせず、企業側が事前に投稿内容を確認し、表記の有無や内容に問題がないかをチェックする必要があります。
企業とインフルエンサーで十分に連携が取れていないと、企業側が意図せずステマ規制に抵触し、信頼やブランドイメージを損なうリスクもあります。
こうしたトラブルを避けるためにも、表記ルールや投稿内容について、事前にインフルエンサーとしっかりと合意をとっておくことが重要です。
Instagram には、タイアップ投稿以外にも、ブランドコンテンツ広告やオーガニック投稿など、さまざまな投稿形式があります。
以下の表では、3つの投稿形式の違いを整理しています。それぞれ配信方法やリーチできる範囲、活用目的が異なるため、自社の戦略に合わせて適切な手法を選択しましょう。
項目 | タイアップ投稿 | ブランドコンテンツ広告 | オーガニック投稿 |
---|---|---|---|
定義 |
インフルエンサーが
自身のフィードや ストーリーズに 投稿し、企業との 提携を明示する投稿 |
企業がインフルエンサー
の投稿を広告として 配信する投稿 |
企業との提携が
ない、通常の投稿 |
ラベル |
〇〇(企業名)との
タイアップ投稿 |
広告
+ 〇〇(企業名)との タイアップ投稿 |
— |
投稿者 | インフルエンサー | 企業 | 個人または企業 |
リーチできる ユーザー |
インフルエンサーの
フォロワー |
インフルエンサーの
フォロワー + ターゲティングに よる拡大 |
アカウントの
フォロワー |
ターゲティング |
インフルエンサーの
フォロワー層 |
詳細なターゲティングが
可能 |
— |
費用 |
インフルエンサー
への報酬が発生 |
インフルエンサーへの
報酬 + 広告配信費用 |
基本的に無料 |
インサイト |
インフルエンサーと
企業で共有可能 |
企業が詳細な
インサイトを確認可能 |
アカウント所有者
のみ確認可能 |
また上記のうち、ブランドコンテンツ広告については以下の記事に詳しくまとめているので、気になった方はこちらも併せてご覧ください。
Instagramのブランドコンテンツ広告とは?タイアップ投稿との違いや設定方法を解説|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
Instagramのブランドコンテンツ広告とは、インフルエンサーなどのクリエイターの投稿を、企業が自社の広告クリエイティブとして利用し配信する広告です。
タイアップ投稿には、企業とインフルエンサー双方にとって、さまざまなメリットがあります。
ここでは、企業とインフルエンサーそれぞれの視点から、タイアップ投稿のメリットを紹介します。
自社商品を宣伝してもらう企業側にとっては、主に以下のメリットが挙げられます。
自社アカウントとは異なるフォロワー層に情報を届けられるため、これまで接点のなかった潜在層へのアプローチが可能になります。
ターゲットに合ったインフルエンサーを起用すれば、より効率的に認知を広げることができます。
企業のアカウントよりも、より身近に感じやすいインフルエンサーが発信することで、第三者のリアルな声として受け取られるため、より自然に商品やサービスへの関心を引き出すことができます。
タイアップ投稿では、Instagram のインサイト機能に加えて、ブランドコンテンツツールを活用することで、企業側が投稿のリーチやエンゲージメントの数値を直接確認できます。
これにより、広告施策としての効果を把握しやすく、次回の施策に活かしやすくなります。
また、企業の商品を宣伝するインフルエンサー側にもメリットがあります。
タイアップ投稿は、インフルエンサーにとって活動を収益化する手段のひとつです。企業からの報酬によって、趣味や発信をビジネスとして成立させやすくなるため、継続的な活動のモチベーションにもつながります。
企業からタイアップの依頼を受けるということは、それだけ影響力がある存在として認められている証です。
信頼性のあるブランドとのコラボ投稿は、フォロワーからの見え方にも良い影響を与え、インフルエンサーとしての価値向上にもつながります。
タイアップ投稿にかかる費用は、主に、インフルエンサーのフォロワー数や、「いいね」やコメント数などのエンゲージメント率、投稿内容などによって大きく異なります。
以下は、あくまで目安としての相場感です。実際の費用は、インフルエンサーとの交渉や施策の規模によっても大きく異なるため、参考程度にご覧ください。
呼称 | フォロワー数 | 費用相場 |
---|---|---|
マイクロインフルエンサー | 1万人以下 | 数千円から数万円 |
ミドルインフルエンサー | 1万人から10万人ほど | 数万円から数十万円 |
トップインフルエンサー | 10万人以上 | 数十万円から数百万円 |
中にはフォロワー数だけでなく、ブランドとの親和性や実績、投稿内容によって数百万円以上の費用が必要になる場合もあります。
依頼を検討する際は、費用に幅があることを前提に、実績や相場を確認しながら相談することが大切です。
実際にインフルエンサーとのタイアップ投稿をおこなっている企業は多くあります。
タイアップ投稿は業界問わずさまざま実施されており、ここでは美容系商品の事例と観光系の事例を紹介します。
韓国発のコスメブランドである d’Alba(ダルバ)は、モデルやインフルエンサーとして活躍する石井里奈さんとのタイアップ投稿を実施しています。
石井里奈さんは Instagram で34万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーで、美容やファッション、旅行など幅広い情報を発信しています。
今回のタイアップ投稿では、d’Alba のポップアップイベントに参加した感想が紹介されており、実際の体験を通じてブランドの魅力を伝える内容となっています。フォロワーの関心を高め、イベント集客にもつながる施策といえるでしょう。
観光系の事例としては、ベトナム航空日本支社が、世界各国の写真を投稿しているインフルエンサーである Halno Kujiraoka さんとのタイアップ投稿を実施しています。
Halno Kujiraoka さんは25万人以上のフォロワーがいるフォトグラファーで、独自の世界観で各国の風景を切り取った投稿が高い支持を集めているインフルエンサーです。
今回のタイアップ投稿では、ベトナムのテーマパークを紹介する写真が複数枚投稿されています。現地の魅力を視覚的に訴求することで、観光スポットへの関心喚起や現地集客の促進につながることを狙った投稿といえますね。
タイアップ投稿の実施を決定した場合、インフルエンサーの選定から依頼、打ち合わせ、実施後の確認まで、以下のように4つの手順が必要になります。
ここからはタイアップ投稿を依頼する企業側の視点で、各ステップの準備の進め方を説明します。
まずは、どのインフルエンサーに投稿を依頼するかを選定する必要があります。
そのためには、自社のターゲット層を明確化し、そのターゲットに合致するようなインフルエンサーを選定することが重要です。
フォロワー数だけでなく、投稿の世界観や過去のタイアップ実績、発信内容がその企業のイメージと合っているかなどをふまえて判断する必要があります。
特に、企業のイメージとかけ離れたインフルエンサーを起用すると、SNS での思わぬ炎上などのリスクにつながる可能性もあるため、慎重に判断しましょう
インフルエンサーの選定が完了したら、次はインフルエンサーへの依頼です。
インフルエンサーが個人で活動している場合は、Instagram のダイレクトメッセージなどを活用し、事務所に所属している場合は事務所を通じて依頼をする必要があります。
後のトラブルを避けるためにも、依頼の際に「投稿内容」「投稿期間」「報酬」などの詳細の合意を取り、契約書を締結することが重要です。
依頼が成立したら、打ち合わせをおこない、投稿する商品やサービス、訴求ポイント、投稿のトンマナなどを共有し、双方のイメージをすり合わせましょう。
また、この段階でタイアップ投稿の設定方法や、「#PR」の表記ルール、投稿前後の確認フローなども合わせて伝えておくとスムーズです。
投稿日時が決まったら、事前に投稿内容の PR 表記やトンマナ、誤解を招く表現がないかどうかなどをチェックします。
ここでは、依頼した通りの投稿内容になっているかや、法令順守がされているかはしっかりと確認しておきましょう。内容に問題がないことや、冒頭で紹介した「意図しないステマ」になる危険性がないことを確認したら、インフルエンサーへ投稿の公開を依頼します。
また、投稿後にも実際にユーザーからのコメントやエンゲージメントを確認し、炎上などの意図しないトラブルになっていないかを確認しましょう。
タイアップ投稿をおこなう場合、インフルエンサー側のアカウントでタイアップ投稿ができるように設定してもらう必要があります。
以下の手順をそのまま共有すれば作業ができるようにまとめていますので、参考にしてください。
まず、インフルエンサーはタイアップ投稿をするために、企業にブランドパートナー申請をして、承認してもらう必要があります。
アカウント画面から「設定とアクティビティ」をタップし、「アカウントの種類とツール」を選択します。
画面が切り替わったら「ブランドコンテンツ」をタップし「ブランドコンテンツツールを設定」を選択しましょう。タイアップ投稿ラベルの利用を有効にするボタンが表示されるため、「有効にする」ボタンをタップします。
ブランドコンテンツツールを有効にしたら、「ブランドパートナーに承認をリクエスト」という項目をタップしましょう。ブランドパートナーに設定したい企業を検索し、リクエストを送信すれば、インフルエンサー側での準備は完了です。
インフルエンサー側でタイアップ投稿のための設定ができないケースがあります。
もし、前述した手順で設定できない場合は、以下の3つのケースのいずれかが考えられます。どれに当てはまるか、アカウントを見ながら確認してみましょう。
なお、このような原因は企業側で事前に確認できるものではありません。そのため、依頼前や打ち合わせ時に「タイアップ投稿の設定ができる状態か」を確認しておくことが大切です。
タイアップ投稿機能は、個人用アカウントでは使えません。インフルエンサーの Instagram アカウントが「プロアカウント」になっているかを確認し、もし個人用アカウントのままの場合は切り替えましょう。
プロアカウントへ切り替えるには、アカウント画面から「設定とアクティビティ」をタップし、「アカウントの種類とツール」を表示します。
画面が切り替わったら「アカウントタイプ」の項目の中にある「プロアカウントに切り替える」を選択します。画面が切り替わったら「次へ」をタップしましょう。
最後に、インフルエンサーの属性に近いカテゴリを1つ選択し、画面下の青い「プロアカウントに切り替える」ボタンを押せば、アカウントの切り替えは完了です。
アカウントが利用制限を受けている場合や、規約違反をしている場合は、タイアップ投稿機能が利用できない場合があります。
事前にインフルエンサーの Instagram アカウントで、アカウント画面の「アカウントステータス」から、アカウントに利用制限や規約違反がないかを確認しておきましょう。
利用制限があるかどうかは「利用できない機能」を、規約違反があるかどうかは「削除されたコンテンツおよびメッセージに関する問題」から確認できます。
見落とされやすいのですが、Instagram アプリのバージョンが古いことが原因でタイアップ投稿機能が利用できないこともあります。
アプリのバージョン確認をする際は、Android 端末の場合は Google Play ストアから、iOS 端末の場合は App Store から確認可能です。
アプリに「アップデート」または「バージョンアップ」の表示がされている場合は最新のバージョンになっていないため、その場で最新のバージョンに更新してもらいましょう。
Instagram のタイアップ投稿は、企業とインフルエンサー双方にとってメリットをもたらす手法で、商品の高い宣伝効果を期待できます。
ただし、近年ではステマ規制が強化されており、表記ルールや投稿の設定を守ることが重要な前提条件となっています。
この記事で紹介した進め方や注意点を参考に、適切なフローとルールに則ってタイアップを実施することで、自社のマーケティング活動に成果をもたらすことができるでしょう。
広告運用 コンサルタント
2020入社。大学でマーケティングを専攻→キーマケに入社し広告事業部に配属される。配属後2ヶ月で動画広告作成に携わる等、検索やディスプレイ広告以外も勉強中。趣味はギターと温泉。特に冬の露天風呂は至高。
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