その日報、ちゃんと読まれていますか?”報告のための日報”を、”読まれる日報”に変えるまで
「AIを使っていますか?」と聞かれれば、多くの会社が「はい」と答える時代になりました。でも、「実際、どう使っていますか?」「社員のどれくらいが使っていますか?」「会社としてどんな方針で使っていますか?」と聞かれると、ぐっと具体的に答えられる会社は少ないのではないでしょうか。
キーワードマーケティングでは、社員77名のうち39名がClaude法人プランを日常的に使っています(2026年8月時点)。約半数の社員が、日常業務でAIを使っているということになります。
これは「たまたま個人が使っている」状態ではなく、経営陣主導で「AIをどう使うか」の研修が行われ、その考え方が現場に浸透している結果です。
この記事では、キーワードマーケティングという会社がAIとどう向き合っているのか、そして現場の社員が実際にどう使っているのかを、なるべく具体的にお伝えします。
キーワードマーケティングでは、AIを社内に広めるにあたって、経営陣主導で研修を実施しています。そこで一貫して伝えられているのは、「AIを効率化のために使うのではなく、価値の最大化のために使う」という考え方です。
どういうことか。
AIを使えば、確かに作業時間は短くなります。でも、その”浮いた時間”で早く帰ることが目的ではありません。浮いた時間を、より本質的な仕事に注ぎ込むことで、同じ時間の中でより高いアウトプットを出す。これがキーワードマーケティングにおけるAI活用の目的です。
もう一つ、社内で共有されている考え方があります。それは「上流ほどAI、下流ほど人」というスタンスです。
情報を集める、整理する、たたき台をつくる──こういった上流の作業ではAIを使い倒します。一方で、最終的にお客さまに何を伝えるか、どんな言葉で届けるか、どこに責任を持つか──こういった下流の仕事は、人が担う。
「AIで作ったものをそのまま納品するだけなら、いずれお客さまにとって私たちは不要な存在になってしまう」
研修の中で、こんな言葉が繰り返し語られています。だからこそキーワードマーケティングは、AIを使い倒したうえで、最後は人が責任を持って編集する。この”逆張り”こそが差別化になるという考え方です。
では、キーワードマーケティングの現場では、実際にどうAIが使われているのでしょうか。日常的にAIを活用している社員2人に、話を聞いてみました。

「1日、だいたい2時間ぐらいはAIを触っていますね」
そう話してくれたのは、広告運用のマネージャーとして働く吉田さんです。会議の議事録を作るとき、広告の配信結果を分析するとき、報告資料のグラフやレイアウトを整えるときなど、1日の業務の中でAIが登場する場面はたくさんあると言います。
特徴的なのは、目的によってAIを使い分けていること。分析には分析が得意なAIを、資料の整えには資料作成が得意なAIを、というように、それぞれのAIの得意な部分を活かして使っています。
でも吉田さんは、AIをすべての業務に使っているわけではありません。
「意識的に使わないようにしているのは、仮説の前提を組み立てるところです」
たとえば、広告の配信結果が悪化したときに「なぜ悪化したのか」という仮説を立てる場面。ここでAIにすべて任せてしまうと、前提条件がたくさんある中で、あらぬ方向の可能性まで含めて出てきてしまう。だからまず自分で仮説を組み立てて、そのうえで「この仮説、どう思う?」とAIに深めてもらう使い方をしているそうです。
「ゼロから理解しないで、AIが出したものをそのまま飲み込むのは、よくないと思っています」
これは、部下との関わり方にも表れています。マネージャーとして、若いメンバーがAIをどう使うかについても、吉田さんは考えていました。
「分析の考え方とか、資料の構成とか、そういうものは自分の頭で考えてほしい。1年目のうちは特に。AIを使うにしても、”自分で考えたうえで、これどう思う?”という使い方をしてほしいです」
AIを使いこなすからこそ、AIに頼らないラインを大事にする。これが吉田さんのスタンスです。

「一つの作業で、AIを触っている時間は30分から40分ぐらいですね」
複数の案件でクリエイティブ担当を務める志村さんは、主にクリエイティブ作成の場面でAIを活用しています。たとえば、新しい広告を始めるとき。商品の内容やターゲットユーザーの情報をAIに読み込ませて、「どういうユーザーに届けるべきか」「どういう軸でクリエイティブを作るべきか」を整理する。コピー案を出してもらうことも。
「情報を渡す工程は、時間がかかるようになりました」
これはAIを使い始めてから増えた作業だと言います。自分の頭の中にある情報を整理して、AIが理解できる形にして渡す。この工程は、以前の仕事にはなかった新しい手間です。
でも志村さんは、これを「面倒な作業が増えた」とは捉えていません。
「お客さまが単純に時間がないから、私たちにクリエイティブを依頼されているという場合もあります。でも今は、お客さま側でもAIを使えばクリエイティブを作れる時代です。だからこそ、私たちが提供できる価値って何なんだろう、というのを考えるようになりました」
印象的だったのは、あるお客さまから大きな方針修正が入ったときの話です。志村さんは、修正依頼の内容と自分がそれまで提案してきたクリエイティブの両方をAIに読み込ませて、「どういう方向性でクリエイティブを作り直すべきか」を相談したそうです。
AIを使って軸を練り直し、そのうえで、最終的にお客さまに何を届けるかは自分で決める。この使い方には、キーワードマーケティングが大事にしている「上流ほどAI、下流ほど人」という考え方が、自然に体現されています。
AIを日常的に使うようになって、実際、業務はどう変わったのでしょうか。2人の話を聞きながら、意外だったことがいくつかありました。
「タスクにかかる時間がめっちゃ減った、という感じは正直していないですね」と吉田さん。志村さんも「時間はちょっと減ったか、変わらないくらいですかね」と話していました。
「AIを使えば、仕事が半分の時間で終わる」というイメージを持っていたので、これは意外でした。じゃあ、何が変わったのでしょうか。
「以前だと”いろいろデータを見たけど、ちょっとわからなくて”みたいな感じだったけど、今は”こういうデータだからこういう仮説が立てられるんじゃないか”という一つの結論みたいなものを置けるようになりました」(吉田さん)
「わからない」で終わっていたところに、「たぶんこうじゃないか」という仮説の芽が置けるようになった。これは時間ではなく質の変化です。
「自分の頭の中にある情報を整理して、AIが理解できる形にして渡す。この工程は、以前の仕事にはなかった新しい手間です」(志村さん)

一見、「AIで作業が減るはずが、逆に手間が増えた」ように聞こえます。でも、この”情報を渡す作業”を突き詰めれば、「自分は何を考えているのか」「何を伝えたいのか」を言語化する作業でもあります。AIを使いこなせば使いこなすほど、人間側の言語化スキルが問われるようになる、ということかもしれません。
AIをここまで使いこなしているキーワードマーケティングですが、それでも「これは人がやる」と決めている領域があります。
「そもそも、ウェブ広告は本来お客さま自身がセルフで運用できるものです。なのに、代理店という形で私たちが関わる意味があるのは、結局のところ”結果に責任を負う”というところにあると思っています」(吉田さん)
AIが分析結果を出しても、その結果に責任を負うのは人。だからこそ、私たちが介在する意味がある。
先ほど紹介したように、吉田さんはAIに「一から仮説を立てさせる」ことは意識的にしていません。それは、AIには前提条件の見極めが難しいから。前提を設計するのは人の仕事、その先の展開を深めるのはAIとの共同作業。この線引きを大事にしています。
AIが出してくる言葉は、一般的な用語で書かれています。でも、お客さまには、お客さま独自の業界用語があり、社内の呼び方があります。AIが「セグメント」と言うところを、お客さまの言葉で「顧客層」と言い換える。「KPI」を「目標数値」と伝える。この翻訳の作業は、人がやらないと成立しません。
これらはすべて、キーワードマーケティングが大事にしている介在価値──「お客さまの事業を理解し、お客さま自身よりわかりやすい形で言語化・視覚化して返す」という価値に繋がっています。AIには代替されにくい、人だからこそできる仕事です。
インタビューの最後に、吉田さんに「AIとの付き合い方で大事にしていることを一言で言うと?」と聞きました。少し考えて、出てきた言葉はこうでした。
「一緒に高め合っていきたい、ですかね」
「AIを使っていると、たまに自分より頭のいい回答が返ってくることがあるんです。でも自分が理解できていないと、その答えを本当に使いこなすことはできないんですよね。だから、AIを使えるようになるために、もっと自分も賢くならないといけない。AIと一緒に高め合っていく、みたいな付き合い方をしたいなと思っています」

これは吉田さん個人の考えですが、キーワードマーケティングの中で共有されている姿勢とも重なります。AIをただ便利な道具として使うのではなく、AIと関わることで自分自身も成長していく。この向き合い方が、経営陣の研修から現場社員の日常まで、一貫して流れています。
キーワードマーケティングでは、社員77名のうち39名がClaudeを日常的に使っています。数字だけ見ると「AIを積極的に活用している会社」に見えるかもしれません。
でも、話を聞いてみて分かったのは、AIを使えば使うほど、”人がやる仕事”の輪郭がむしろはっきりしてきている、ということでした。
責任を負うこと。仮説の前提を組み立てること。お客さまの言葉に翻訳すること。「AIに奪われる仕事」ではなく、「AIを使うようになったからこそ、大事さが浮かび上がった仕事」があります。
もしあなたが、AIとどう付き合っていくべきか、これからの広告運用者としてどこに立つべきか、迷っているなら。キーワードマーケティングの現場のリアルが、何かのヒントになれば嬉しいです。
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