SEO対談
Faber Company 古澤氏とのSEO対談もついに後編。前編ではコンテンツSEOが台頭するようになった歴史、中編ではコンテンツSEOで成果を出すための具体的な取り組みについてお話しいただきました。
後編では、「2019年のSEOは総合格闘技」と語る古澤氏自身に迫ります。SEOの第一線で活躍し続ける先見性や経営者として鋭い洞察の根源についてお話いただきました。
さらに、古澤氏から20代・30代の若手ビジネスパーソンに向けたメッセージもいただきました。まさに総合格闘技的に、全方位に金言飛び交う後編をじっくりとお楽しみください。(前半・中編はこちら)
古澤さんは、かなり早い段階からコンテンツSEOの手法を確立して、MIERUCA(ミエルカ)としてツール化されているじゃないですか。
先読みする力をだったり、変化に対する意思決定の根源をお伺いしたいのですが。
過分なお褒めをいただきまして、誠にありがとうございます。
ここからは、経営者向けに「いぶし銀企業と脆弱な企業の違い」という言葉で説明しますね。
私自身がまだまだ経営者として未熟で勉強中ですので、その勉強メモを共有させて頂く感覚でお話しさせてください。
様々な経営者の方とお会いして、5年、10年経っても成長してないなっていう方と、見違えたな、強くなったなという方の違いが2つあると思っていて。
1つは、社長の「問いを立てる力」ですね。
その問いって何かって言うと、自分自身または、自社の商品やサービスは「余人をもって代えがたいのか」を問うことです。
自分にしかできないことができているか、自分の商品にしかできない商品性なのか、その根源はどこにあるのかということを問い続けるということです。
なるほど。
例えば、「うちだけ特別に安く仕入れてさせてもらってる」ってだけだと、源泉とは言えないですよね。
その仕入れ先が代替わりになって、新しい社長が「俺が会社を変えるんだ」って正義感の強い人になった途端に、その競争優位の源泉がなくなるわけだから。
そのぐらい粒度で盤石なのかをずっと考える必要があるし、まず盤石なことってないですよね。
そうですね。
だからこそ、問いを立て続けることに意味があって。
問い続けていると、お客様が満足してないんじゃないかって恐怖が湧いてくるから、それを確かめたくてお客さんに会いに行く。
お客さんに率直なことを聞いてみると、「満足してるんだけど、この前別の会社がこういう商品を売りに来て、ちょっと良いかもと思ってるんだよね」って話を耳にするわけです。
そういう時にこそ、もっと自分たちが進化するためにどうしたらいいかっていう事が行動レベルで現れてくると思う。
この、問いを立てる力が社長自身にあって欲しいなと思います。
なるほど。
もう一つは、「マネージャーのレベル」ですね。
伸びてる会社は、右腕、左腕と呼ばれるような方がしっかりしてますよね。
先ほどのような問いを、社長と同じレベルで問うことがマネージャーを育てると思っています。
「おれはこう思うんだけど、お前どう思う?」って聞いた時に、ヨイショしてたり、「いや、うちは大丈夫っすよ」みたいなことを言ってたりしたらもうダメですね。
そうですね。
そういう時は、あばれはっちゃくの親父みたいにちゃぶ台ひっくり返して「ふざけんなーっ!」って(笑)
(笑)
そうすると幹部のレベルも合っていって、逆にマネージャーから「社長、これヤバいんじゃないんですか」って言ってくるぐらいになりますよね。
いぶし銀と呼べるような企業だと、そういう右腕、左腕作りをしてると思う。
なるほど。
だから、優秀な人を採用するっていうよりは、社長の問いが人を育てていくという感覚に近いと思いますね。
同時に、「手作り研修」と呼ぶのが一番マッチするんですが、社長の想いを語りかける場をつくることも大事ですよね。
「手作り研修」ですか。
みなさんとにかく忙しいので、研修とか教育って何としてでも外注したいですよね。
ただ、それだけだと伝わらないんですよね。
やはり、社長が自分の想いを言語化して、研修だったり合宿だったりという場を「手作り」して、継続していく。これがマネージャーを育てるなと思います。
ある方に、「それをひと言で言い表せ」って言われて、なんだろうなって考えたんですけど。
はい。
愛、ですね。
うちで4年間頑張ってくれた、キャリアアップで転職した社員の送別会で、このことを想いながらV6の『愛なんだ』を歌いました(笑)。
ああ、なるほど。(笑)
とにかく、社長の問いを立てる力とマネージャーのレベルは密接に絡み合っていて、先見性という答えにはなってないですが、そのベースはできるかなと感じますね。
2011年には早々にコンテンツSEOの手法を確立し、それをMIERUCA(ミエルカ)としてツール化されて、今や100名の社員を抱える立派なツールベンダーとなりましたけど、約10年を振り返ってみて、この道を選んで良かったですか。
良かったですね。
1年に1回、自分が書いたメモやノート、カレンダーといったアウトプットを必ず見返すようにしてるんですよ。
それを見るとずいぶん変わったなと思います。昔悩んでたなってことが、今はずいぶん無くなりましたね。
経営者って、勉強会とかで様々な経営者と触れ合うじゃないですか。
そういった場で聞く社長さんの成功事例やアドバイスに対して、僕も過剰に反応してしまう時期があったんですよ。「なるほど。こうしてみよう、ああしてみよう。」って。
そうなんですね。ちょっと意外です。
会社経営も14年目に入って、今、僕がどう思ってるかと言うと、経営はトレードオフだなということです。
例えば、創造性が豊かな会社にしたいんだったら規律は緩いはずなんですよ。だからこそ自由な発想が出てくるんで。
例えば昼飯は12時に食べろとか、背広しか着ちゃいけないとか、日誌提出しろとか、ルールで社員の行動をガチガチに固めると規律の方の会社になっていきます。もちろん、それは社長さんの方針なので問題ありません。
がしかし、この場合は新商品のアイデアが生まれる土壌や雰囲気は生まれないという事です。
なので、何を得て何を捨てるかということを明確に決めた方がいいですよね。
外部の方から言っていただくことって、輸入物、舶来品なわけですよ(笑)。
以前はそういう話を聞くと自分に腹が立って、「なにくそーっ!」てなっていましたけど、今はそういうこともなくなりましたね。
マーケティング手法ならともかく、特に経営の方は簡単に輸入したってうまくいかないということですよね。
僕は今44歳なんですが、滝井さんは何歳でいらっしゃいますか。
48歳ですね。
新卒採用や第二新卒採用を積極的にするようになって5年目になるんですが、本当にギャップってありますよね。
向こうも同じように思ってるんですよね、「何なのあのオヤジ」って(笑)。
どうも、今の経営を上手くやっていくポイントはここなんですよね。
ゆとり世代っていうのはざっくり言うと30歳未満の人たちのことを言うんですが、もっと言うと、今年新卒の子たちは「フルゆとり」です。
フルゆとり、ですか(笑)。
フルゆとりというのは、小学校1年生から高校3年生まで全部がゆとり教育。僕らとは20年以上違うから、プロトコルが全く合わないですよね。
さらに、僕ら経営者よりも現場のマネージャーの方が深刻で、30歳から35歳のマネージャーとゆとり世代の間に起きている様々な精神的なぶつかり。
例えば、言葉では「はい、わかりました」って言ってるんだけど実行されないとか。
なんでかなと思って、ゆとり世代について色々な方にヒアリングしたり、ゆとり世代にもヒアリングしたりして分かったことがあって。
ゆとり世代の彼らから見た昭和世代、つまり僕らの強みって、「交渉力」「物怖じしない」 「競争に打ち勝つ」「受験戦争」「就職戦争」、これはすごいと。
だから彼らから見ると僕らの、「どうしたお前?」「何が起きたんだよ?」「おれが相談にのってやろうか?」ってのが、グイグイ来るなと感じるらしくて。(笑)
なりがちですよね。(笑)
あとは、僕らって大事なことは対面、もしくは電話ですけど、彼らはLINEやメールなんですよ。
「会社辞めます」とか、朝の「遅刻します」とか。絶対LINEで済ませようとするじゃないですか。
それは、彼らが悪いんではなくて、そういうツールが文化として成り立ってるから、大きなギャップがあるというのもお互いの世代が認識しないと、どこまでも平行線ですよね。
昭和世代には昭和世代の良さ、ゆとり世代にはゆとり世代の良さがあるわけで。
古澤さんの考えるゆとり世代の良さって何ですか。
やはり、「みんなで考える」「協力し合う」「チームでやる」ってことを、嫌味なくできるってことですよね。
「何だお前ら、蹴落とそうと思わないのか」って思うんですけど(笑)、こういったことが嫌味なくできるってのは羨ましいですよね。すごいなと思います。
これを昭和世代の人間に分かってもらう。そして、僕らのこともゆとり世代に分かってもらうということが必要だなと思ってますね。
なるほど。
あとは、ゆとり世代に対しては体験型ワークショップって形が合ってると思いますね。
ハンバーガーでも買ってきて、「一緒にやるか?」とか「一緒考えるか?」って言うと、マジっすかという感じでノリノリになる傾向があるなと感じます。
そういう会話やコーチングができる、体験型ワークショップというアプローチが有効だと思います。
1人じゃなくて、チームでやってもらうとか、最低2人でやってもらうとか。そういったことが大事ですよね。
古澤さんから、20代・30代の若いビジネスパーソンに向けて、Webマーケティングという大変面白くてやりがいのある世界で楽しいビジネス人生を送るためにエールをお願いします。
今の、というよりはどの時代の若者にも総じて言えるのは、考える力が弱いということですね。
持ってきた仕事に対して質問をしても答えられない。
「なぜこういう結論になったの」「これは誰が言ってたの」って質問に答えられなくて、 あってなるケースが多々あると思うんですよ。
やっぱり、先ほどもお話しした「問いを立てる」ってことをやってほしいですよね。言われたことをやってるだけじゃ、お前自身も面白くないじゃんって思うんですね。
頼まれた仕事であろうが、お客様との対峙であろうが、なぜこの商品は素晴らしいんだろう、他と何が違うんだろう、お客様はどういう努力をしたんだろう、って考えることから会話って広がっていくし、考える力が広がっていきますよね。
あとは、バッターボックスに立ち続けないとチャンスは回ってこないということです。
何かチャンスが来た時に、自分から手を挙げて「怖いけどやってみます」って言うことですよね。
とりあえず、やってみる。
まずやってみないと、自分の能力に気づくチャンスもないですし、面白くてエキサイティングなことは、ドキドキや不安の中で起きることが多いはずなので。
Faber Companyさんでは、具体的にどのような取り組みをされてるんですか。
働き方改革って大半の方にとっては良いものだと思うんですが、「出世したい!めちゃくちゃ仕事したい!」っていう人たちのことはあまり語られないですよね。
100人いれば2、3人ぐらいの、愛情を込めて「奇特なやつ」 と呼びますけど(笑)、そういった人たちが思う存分やる気を発揮できる環境って何なんだろうって考えた時にまず「寮」だと考えました。
去年の10月に、会社の近くに3LDKのマンション借りてあげて、第一期生として3人が寮生活を始めました。
共同生活ですか。
そうです。その3人には同じ事業の立ち上げを任せてます。
土日も一緒に生活していく中で培うものもあるし、自分で手を挙げてやりますって集まった3人なんで、現時点でのビジネス力はどうであれ意欲はあるわけです。
おもしろいですね。新卒1年目ということですか。
新卒3年目、第2新卒と中途社員ですね。年齢で言うと32歳のリーダーがいて、あとは30歳と25歳です。
自分で手を挙げたんですか。
挙げましたね。
古くさくて逆に今の時代新鮮だし、僕だったら手を挙げるだろうなっていうことでやってみました。
先ほどの、ゆとり世代の強みである「みんなでやる」っていうのにも合致してますよね。
とにもかくにも強制することはできないので、成功するかは保証できないけど凝り固まった脳みそを僕流に解いてあげたくてやっていますね。
これがバッターボックスに立つっていうことですよね。素晴らしい取り組みだと思います。
最後になりますが、今後の古澤さんの野望ってどんな感じですか。
大きな話を始めると終わらなくなるので、すごい簡単なことを話しますと、Made in Japanをどうやって海外に持って行こうってことを考えてますね。
SEOとかマーケティングの世界って、どうしてもアメリカから来るじゃないですか。
僕自身、毎年アメリカのカンファレンスでSEOの達人の話とかを聞くんですけど、日本の凄さって「きめ細かいところ」だと思うんですよね。そこは海外のプレイヤーにも絶対負けてないなと。
なので、僕らのマーケティングスキルとか型を逆に持ってくことができないかなと思っていて、それを実現できたらいいなと思っています。
古澤さんってすごく日本愛がありますよね。その根源ってどこにあるんですか。
2年前イスラエルに行ったときに、やっぱり日本って奇跡の国だなって自覚したんですよね。
イスラエルはユダヤ教の国ですけど、周りは全部イスラム教の国に囲まれてるっていう非常に変わった国で、人口も約850万人と多くない。それでも、世界的に有名な起業家をどんどん輩出している。
Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグさんもユダヤ人ですし、Webマーケティングツールでもイスラエル発のものっていっぱいありますよね。これは何でだろうと。
それが視察に行って分かったんですけど、彼らがWebマーケティングに関するツールやサービスを売るってなったときに、自国を相手に商売しても人口が850万人しかいない。始めからアメリカやヨーロッパで売ることしか考えてないんですよね。
イスラエルの企業家が優秀というよりは、そうしないと生きていけないからってことが分かったんですよ。
一方、日本って人口が1億人いるわけだから、自国の中だけで全部成り立っちゃうんですよね。さらに、島国だからテロも起きにくいですよね。
単一民族、単一国家、単一言語っていう色々な奇跡があるじゃないですか。この奇跡の中で生きてこれたことは、逆に感謝だなと思うのと、この奇跡を世界に伝えたいなと。
そう思ったときに、僕らも全然優秀だし、日本への愛っていうのをより一層感じたんですよね。もっと言っちゃうと、黙らせたい(笑)。
さすがです(笑)。面白いお話しですね。
今回のインタビューはFaber Companyさんが入るビルの1階でさせていただいたんですけど、ものすごいおしゃれで、ホテルのバーのような場所ですね。
ここはどういう場所なんでしょうか。
Faber Innovation Hubと呼んでいます。
Hubには集まるとか中心とか発信するという意味があり、私たちがこれから作っていくサービスにお客様の想いやスタッフの想いなどを集め、中心として発信していくという意味合いを込めています。
具体的にはどういう活動される予定なんですか。
やはり社員の多くは決められた事業があって、そこでお客様と対峙しながら決められた手順を踏んで仕事をしている。オペレーショナルな環境なんですね。
その中で新しいものを作っていくとか、新しいものを発想するっていうのは難しいなと常々感じていたので、ここでビジネスとしての新しい可能性を発見してほしいと思っています。
お客様が求めてるのはこういうもので、だとしたらこういうサービスやツールが合うよねってことを自由に発想できる空間ですね。
基本的には社員さん向けということですね。
そうです。ただ、お客様も結構見えます。面白い話をしてくれるお客様にはお酒を振る舞っているんですよ。
立派なバーカウンターがありますもんね。とても自由な発想が出そうです。
Faber Companyさんって、どちらかというの質実剛健なイメージがありましたが刷新されました。
真逆を行っています。
この場所にはプロダクトを作る目的もあるということですが、何か新しいツールを作る計画があるんですか。
計画してますね。
機械学習や深層学習、ディープラーニングと言われるものが少しずつ我々のSEOの仕事に馴染んできたなっていうのを2018年に感じていたんですよね。
そうした背景から、お客様のマーケティングに特化した、こんなのがあったら僕が使いたいなと思うものをいくつか仕込んでいます。
楽しみです。
本日は、長時間に渡って色々と面白いお話しをお聞かせいただきありがとうございました。
ありがとうございました!
100分という時間以上に、とにかく内容が濃密だった今回の対談。編集の都合で泣く泣くカットとなった部分を収録した「完全版」音源を販売いたします。
文章だけではお伝えするのが難しい「ニュアンス」を感じていただける内容になっています。ぜひともスマートフォンや車で通勤中などに聴いていただき、ご自身のビジネスをさらに成長させるヒントにしていただければと思います。
人工知能(AI)の一分野である「自然言語処理」を応用し、検索ユーザーのニーズを抽出・分析、評価されやすいコンテンツづくりを的確に支援するWebマーケティングツール。クラウド上で「自社サイトの改善すべきページの抽出」「ライバルサイトとの差異の発掘」など、主にWebコンテンツ改善に活用できる機能が豊富。
株式会社Faber Companyが10年以上経験を積んだSEO・コンテンツマーケティングのノウハウをシステム化し、2015年3月に産学共同でリリースした。導入企業は1,200社以上にのぼる。
開発メンバーには、ウェブアナリストで当社CAO(Chief Analytics Officer)・小川卓に加え、国立大学豊橋技術科学大学情報・知能工学系の吉田光男助教、明治大学理工学部情報科学科・髙木友博教授ら、自然言語処理・人工知能の権威が加わる。ソフトウェア特許を申請中。