ショッピング広告でキーワード入札調整をおこなう方法
ショッピング広告でキーワード入札調整をおこなうには、キャンペーンの構造を工夫する必要があります。
今回おこないたいことは「購入確度が高いキーワードの入札価格を上げること」と「購入確度の低いキーワードの入札価格を下げること」です。こちらが大前提になるので、しっかりおさえておきましょう。
キャンペーンの優先度を活用したキーワード入札調整の仕組み
ショッピング広告でキーワード入札調整を行うには、複数キャンペーンを作成し、キャンペーンの優先度と除外キーワードを設定します。
ここでは分かりやすいように、「定食」を例として説明していきます。
「定食」と検索するユーザーと「ハンバーグステーキ定食」と検索するユーザー、どちらの方が実際に来店して定食を注文してくれる確度が高いでしょうか。これは議論の余地なく後者の方が確度が高そうですよね。
「定食」一語での検索は、定食を食べたいという意図の検索だけではなく、どんな定食があるかメニューが知りたい、または定食という言葉の定義を知りたいなども考えられます。
また一口に「定食」といっても、その種類や価格はさまざまです。ユーザーが思い描く定食を取り扱っていないこともありえます。
しかし、ショッピング広告ではキーワードによるターゲティング設定も、入札調整もすることができないため、見込みが低い検索に対しても、高い額で入札を行ってしまう可能性があります。
キャンペーンの優先度「なし」で「定食」が検索された場合
キャンペーンの優先度を決めていないので、上限クリック単価が高い順にオークションがおこなわれます。
結果として、確度の低いキーワードであるのにも関わらず、一番上限クリック単価が高いキャンペーンで広告が表示されることになります。
キャンペーンの優先度を「あり」で「定食」が検索された場合
キャンペーンの優先度を設定することでオークションがおこなわれる順番が変わり、上限クリック単価の低いキャンペーン「定食」で広告表示させることが可能になりました。
キャンペーンの優先度「あり」で「ステーキ定食」が検索された場合
「ステーキ定食」で検索された場合には、除外キーワードによってキャンペーン「ステーキ」でのみ広告が表示されます。
キャンペーンの優先度「あり」で「ハンバーグステーキ定食」が検索された場合
最後に「ハンバーグステーキ定食」で検索されたケースですが、除外キーワードの設定によって上限クリック単価の一番高いキャンペーンでオークションに参加させることができました。
このように除外キーワードの設定とキャンペーン優先度を組み合わせて設定することで、運用面でキーワードごとに入札調整をすることができます。
キャンペーンの設定
キーワード入札調整をおこなう場合のキャンペーンの設定方法を具体的に説明いたします。通常のショッピング キャンペーンより複雑ですが、順を追っていけば難しいことはありません。
構成を考える
キーワード入札調整は2語以上の複合キーワードでの検索を想定して、そのカテゴリごとに分ける必要があります。
そのため検索語句からどのようなキーワードで検索されているか、またどのようなキーワードが購入に至っているかを確認しましょう。そのうえでどのように分けるのか、構造を考えていきましょう。
再度「定食」を例に考えていきましょう。検索語句を見て、検索数が多くまた購入に至っているキーワードが「ハンバーグステーキ定食」など、「ハンバーグ」と「ステーキ」を求めるユーザーが複数の要件をいれた検索だったとします。
その場合には、キャンペーン「ステーキ」、キャンペーン「ハンバーグ」、ステーキとハンバーグを組み合わせたキャンペーン「ステーキ&ハンバーグ」、その他のキーワードのためのキャンペーン「一般」の4つのキャンペーンを作成することになります。
このとき「ステーキ」と「ハンバーグ」で想定されるキーワードを書き出しておきましょう。ステーキであれは、「ヒレステーキ」「リブロースステーキ」やハンバーグであれば「チーズハンバーグ」「和風ハンバーグ」といったものが挙げられます。
キャンペーンを作成する
前述の通り4つのキャンペーンを作成します。キャンペーンの作成方法は通常のショッピングキャンペーンと同じです。
キャンペーンのサブタイプを「通常のショッピングキャンペーン」に設定すること、入札戦略を「個別クリック単価制」にすることを忘れないようにしてください。
キャンペーンの優先順位を設定する
キャンペーンごとにキャンペーンの優先順位を設定していきます。今回は同じ商品リストに対して複数のキャンペーンを作成するため、どの入札単価を優先させるかを決めておく必要があります。
もしこれをおこなわずに複数キャンペーンを動かすと、入札額が最も高いキャンペーンが優先され、複数設定している意味がなくなってしまいます。
設定方法ですが、一番入札単価を低く設定する「一般」の優先度を「高」に、「ステーキ」と「ハンバーグ」を「中」に、最も入札単価が高くなる「ハンバーグ&ステーキ」を「低」に設定します。
共有予算の設定をする
次に4つのキャンペーンに対して共有予算の設定をおこないます。それぞれのキャンペーンで各々の予算を設定することもできますが、どうしても「一般」のキャンペーンの配信量が多くなるので、その最適な割合が分かるまでは共有予算にしたほうが安心です。
共有予算は右上の「ツールと設定」から「共有ライブラリ」>「共有予算」を選択します。
共有予算の設定
左側にある青い「+」をクリックすると下記のような画面が出てきます。ショッピングキャンペーン全体で使用予定の予算をこちらで設定しましょう。そして「キャンペーンに追加する」から先ほど作成した4つのキャンペーンを選択して完了です。
除外キーワードの設定をする
次に除外キーワードの設定をおこないます。これはキャンペーン「一般」でステーキが含まれるキーワードでは配信がされないように調整するための設定です。
最初に作成した想定キーワードに沿って除外キーワードリストを作成していきます。除外キーワードリストは「ツールと設定」から「共有ライブラリ」>「除外キーワードリスト」を選択します。
青い「+」をクリックし、想定される「ステーキ」のキーワードを設定します。
「ステーキ」と同じように「ハンバーグ」でも登録をおこないます。
最後に作成した除外キーワードリストを作成したキャンペーンに設定します。キャンペーン「ステーキ」では除外キーワードリスト「ハンバーグ」、キャンペーン「ハンバーグ」では除外キーワードリスト「ステーキ」、キャンペーン「一般」では除外キーワードリスト「ステーキ」と「ハンバーグ」の両方を紐づけます。
このようにすることで、登録したキーワードが含まれる場合は紐づけたキャンペーンで配信がされなくなります。ここまででキーワード入札調整をおこなうキャンペーン構造の設定は完了です。
入札調整の方法
キャンペーン設定が完了したら、入札調整をおこなっていきます。この時注意したいのは、入札単価の順番です。ステーキの例だと下記のように設定します。
「一般」<「ハンバーグ」or「ステーキ」≦「ステーキ」or「ハンバーグ」<「ステーキ×ハンバーグ」
この順で入札単価が高くなるように設定しましょう。「ハンバーグ」と「ステーキ」については「一般」より高く、「ステーキ×ハンバーグ」よりも低くなっていれば大丈夫です。
キーワード入札調整によるメリットと成功事例
キーワード入札調整は設定が複雑で、運用も工数がかかります。しかしながらそれをおこない、キーワードの入札単価に差を付けることによるメリットも大きいです。
メリット1:確度の低いキーワードのクリック単価を抑えることができる
一番のメリットは購入確度が低いことが予測されるビッグキーワードなどでのクリック単価を抑えることができることです。
ビッグキーワードは検索ボリュームが大きく、表示回数が増える一方で、検索意図を絞ることが難しいため購入に至らないユーザーへの配信量も増えてしまいます。
予算が潤沢にある場合はこのキーワードでも入札をおこないたいですが、予算が限られている場合は入札を抑え、より確度が高いキーワードで配信を増やしたいです。ビッグキーワードでの配信を抑えた分、確度の高いキーワードでの表示を増やすことができます。
メリット2:確度の高いキーワードで機会損失を少なくできる
予算に限りがある場合、キャンペーンの予算設定に制限がかかることもしばしばあります。予算に制限がかかると、1日の途中で配信量が減ってしまい、時には深夜に広告が配信されないこともあります。
限られた予算の中で運用する際には、確度の高いキーワードではしっかり上位に表示させ、それ以外では抑えて配信をおこなうことで無駄と機会損失をなくしていくことが重要です。
このような設定は Google の最適化でもおこなわれますが、予算や購入件数が少ないと最適化するまでに時間がかかることもあります。そのようなときに、キーワード入札調整で手動で作業することで、パフォーマンスを安定させることができます。
コンバージョン率が約1.6倍に!
弊社ではキーワード入札調整をおこなった結果、コンバージョン率が1.6倍になった事例もあります。
| CPA | CVR |
---|
施策前 | 4,635円 | 0.46% |
施策後 | 3,542円 | 0.74% |
成果に繋がった要因としては、コンバージョン率を改善することができたことがもっとも大きいです。ビッグキーワードでの配信を抑え、詳細な検索での配信に寄せることで、購入確度が高いユーザーにしっかりアプローチすることができ、その結果としてコンバージョン率が改善できました。
キーワード入札調整の注意点
キーワード入札調整の構造は通常のショッピングキャンペーンよりも複雑です。そのためキーワード入札調整を始めるときや運用しているときには注意点が必要です。もし運用方法を間違えてしまうと、設定が意味のないものになってしまいます。
スマートショッピングキャンペーンでは設定できない
キャンペーン設定をおこなう際に「スマートショッピングキャンペーン」を選択すると、手動での入札調整ができません。
キーワード入札調整を設定したい場合には「通常のショッピングキャンペーン」を選択しましょう。またすでにスマートショッピングキャンペーンで運用している場合には、新しくキャンペーンを作成しましょう。
入札調整を間違えると意味がなくなる
キーワード入札調整をおこなうと、理論上 CPA はかけ合わせのキャンペーンが一番良くなります。しかし配信量が少なくなるため、タイミングによっては1カテゴリのものが良い場合もあるでしょう。
このような時に1カテゴリの入札額をかけ合わせの入札額より上げてはいけません。もし1カテゴリの方が入札額が高く設定すると、かけ合わせのキャンペーンで想定していたキーワードも1カテゴリのキャンペーンで拾ってしまいます。それでは購入確度の仮説が崩れてしまうので注意が必要です。
仮説が間違っていることも考慮にいれる
キーワード入札調整を導入し、運用していくと購入の傾向が見えてきます。理論上は「一般」がもっともコンバージョン率が低く、「かけ合わせ」がもっともコンバージョン率が高くなります。
もし数か月運用してもこの形にならない場合は、確度の仮説が間違っている可能性があります。検索語句を確認してどのようなキーワードで購入されているのか、今一度確認してみましょう。
たとえば定食の例の場合、「ステーキ」と「ハンバーグ」でかけ合わせてキャンペーンを作成しましたが、「生姜焼き」や「エビフライ」の方が効果的だったかもしれません。その際にはキャンペーンを同様の方法で増やして、対策をおこないましょう。
Google が推奨している構造ではない
Google のショッピング広告の推奨はスマートショッピングキャンペーンです。また検索広告に関してもキャンペーンや広告グループを統一することが推奨されているため、今回紹介したキャンペーンを分散させるキーワード入札調整はおすすめされません。その点を念頭に置いた上で、導入を検討してください。