Meta 広告の「Advantage+ショッピングキャンペーン(以下、ASC)」は、自動最適化による高いパフォーマンスが魅力的な配信手法です。しかし、「もっとオーディエンスごとに調整ができたら・・・」と感じたことはないでしょうか?
実は今、ベータ版として提供されている「Value Rules(値のルール)」を使えば、年齢や性別、地域、OS などの属性別に入札調整ができるようになります。本記事では、この Value Rules の概要や設定方法、有効な活用シーンや注意点までを解説します。
ASC 運用の次なる一手として、ぜひ活用を検討してみてください!
注意:本記事はベータ版機能に関する解説記事です(公式ヘルプ)
まずは、今回のテーマでも中核となる「ASC(Advantage+ Shopping Campaigns)」について、簡単におさらいしておきましょう。
ASC とは、Meta が提供する自動化されたショッピング広告キャンペーンのことを指し、AI による配信最適化を最大限に活用できる点が特長です。
これにより、通常のキャンペーン設計と比べて、設定の手間を大きく削減できるだけでなく、CV(コンバージョン)や ROAS(広告費用対効果)の最大化がより期待できるため、すでに導入している方も多いのではないでしょうか。
しかし、ASC は配信が Meta 側に委ねられており、運用していると「なぜその成果が出たのか」「どのオーディエンスが反応したのか」など、効果の要因が見えにくいと感じたこともありませんか?
また、オーディエンスごとの入札調整などがおこないにくいので、これまでアカウントを細かく設定してきた広告運用者にとっては戸惑うポイントです。
今回ご紹介する「Value Rules」は、こうした ASC の自動化の中でも、特定のオーディエンスに対して配信の重み付けを調整できる数少ない手段の一つとして注目されています。
Meta 広告で現在ベータ版として提供されている「Value Rules」は、年齢や性別などオーディエンスの属性に応じて、入札の重み付けを管理画面上からコントロールできる新機能です。
これまで Meta 広告の入札最適化はキャンペーン単位での自動調整がメインでしたが、Value Rules を活用することで、具体的には、以下の4つの条件に対して、入札額を%単位で細かな調整ができます。
ただし、本機能は2025年5月時点ではすべてのアカウントで利用できるわけではありません。Meta の担当者による審査と申請が必要になるため、担当者が付いている広告アカウントであることが前提です。さらに、申請しても必ずしも適用されるとは限らないので注意が必要です。
Value Rules は、以下のように配信に強弱をつけたい特定のユーザー層がある場合に導入すると成果が出やすくなります。
Meta の入札最適化は、基本的に「管理画面上での CV 実績データ」に基づいて学習されます。そのため、LTV だけでなく CPA が高く、成果が悪く見えてしまうユーザー層は、通常の自動最適化まかせでは配信が抑えられてしまう傾向があります。
こうしたケースでは、Value Rules を活用して該当ユーザー層の価値を高めに設定してみましょう。今回は「LTV(ライフタイムバリュー)が高いとされる女性」をターゲットとして、どのように設定したらよいかまとめています。
このようにビジネスの目的に応じて細かな調整をおこなうことで、通常の CV ベースの学習ではリーチしにくかった高 LTV 層にも積極的にアプローチでき、長期的な ROAS 向上につなげることもできるので、ぜひ試してみてください。
▼LTV(ライフタイムバリュー)についてはこちらから
LTV(ライフタイムバリュー)とは。意味や計算方法、利益を最大化させる考え方を解説|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
顧客生涯価値とも訳されるLTV(ライフタイムバリュー)とは、ユーザー1人当たりがサービスや商品を利用している期間内に企業にもたらす利益の合計のことです。計算方法や運用型広告での重要性を解説します。
たとえば「30代女性」や「iOS ユーザー」など、すでに広告の成果が出やすいユーザー属性が明確にイメージできている場合、Value Rules を用いてその層に対して入札強化を設定しておくことで、成果の出やすい属性に予算をより優先的に投下できるようになり、効率的な配信ができます。
あらかじめ「成果の出やすい層」を Meta に伝えることができるため、配信初期から優先的に成果の出やすい層へリーチしやすくなり、遠回りせず短期間で成果につながることが期待できます。
反対に、成果が出にくい属性が特定できている場合には、Value Rules を用いてその層への入札を引き下げることで、配信の効率化が期待できます。
あらかじめ成果が見込みにくいユーザー層への広告配信を抑えることで、成果につながりやすい層への配信を優先でき、広告予算をより効果的に活用できるようになります。
実際に Value Rules を適用して成果が向上したケースをご紹介します。
今回のキャンペーンでは、Value Rules により、主要ターゲット以外の属性の入札を引き下げる設定をしました。
Value Rules あり | Value Rules なし | |
---|---|---|
CPA | ¥18,000 | ¥21,000 |
CV | 210 | 68 |
結果として、Value Rules を活用した方が、明らかに CPA が低く、CV 数も大きく上回る形となりました。これは、事前に定義した「狙うべきでない属性」をあらかじめ抑制することで、配信の無駄打ちを避け、効果的なユーザー層への投資に集中できた成果だと考えられます。
Value Rules を導入する際には、いくつか気をつけたい仕様上のポイントが3つあります。
それぞれ具体的に解説していきますので、事前に理解を深め、スムーズに導入できるようにしておきましょう。
2025年5月時点の仕様で都度変更される場合があります。最新情報は公式ヘルプをチェックください
Value Rules を適用する際には、すでに作成している広告セットに後から設定を追加することはできません。たとえ Meta 側でアカウントに Value Rules の利用を許可してもらった場合でも、新たに広告セットもしくはキャンペーンを作成し、その中で設定しましょう。
また、ASCは原則として1つの広告セットのみ構成されていますが、一部のアカウントでは ASC 内に複数の広告セットを持つことができ、既存のキャンペーン内に Value Rules 用の広告セットを追加することもできます。
どちらのパターンになるかはアカウントによって異なるため、Meta の担当者に確認するか、管理画面で実際に既存のキャンペーンへ広告セットの追加ができるか試してみましょう。
2025年5月現在のベータ版仕様では、Value Rules はアカウントごとに1つしか作成できません。そのため、年齢別や性別別、OS 別など複数のルールを同時に作り、使い分けるといった柔軟な運用はできない仕様となっています。
この制約があるため、「年齢別での入札調整」と「OS別での調整」を比較検証したい場合でも、同時には設定できないため、1つずつ順番にテストしましょう。
一度作成した Value Rules は、複数の広告セットに適用できます。複数のキャンペーンや広告セットに同じルールを紐づけることで、配信結果の傾向を幅広く比較や分析ができます。
この点も踏まえ、Value Rules を活用する際は「どの軸でルールを定義するのか」をあらかじめ慎重に設計することが重要です。
Value Rules では、最大で1番から10番までのルールを設定することができますが、オーディエンスが複数のルールに該当した場合でも、最上位にあるルールだけが入札調整に使用される仕組みになっています。
例えば、次のようなルールを設定したとします。
このとき、「45歳から54歳かつそのモバイル OS を使っている男性」がオーディエンスに含まれていた場合、適用されるのは最上位のルール1(30%増額)のみとなります。
管理画面上での設定方法をご紹介します。大まかな流れとしては作成した広告セットを選択し、次にルールを作成することで Value Rules が適用されるようになります。
まずアカウントに Value Rules が適用されたら、作成した広告セットを選択し「編集」を押します。
下にスクロールし、「値のルール」のメニュー内の「ルールセットを編集」をクリックし、オーディエンスの入札調整を設定していきます。
「ルールを追加」を押すとルールを最大で10個設定できるので、設定したいオーディエンスの項目を選択、入力していきましょう。
また先ほど紹介したように、ルールが重複する場合は、最上位のルールが適用となるため、Value Rules を作成する際には意図している優先順位が反映されるよう、ルールの並び順も考慮しましょう。並び順の変更は「ルールの順位を変更」で入れ替えることができます。
また、設定した Value Rules の配信結果を内訳で確認できます。「内訳」のプルダウンから「値のルール」にチェックを入れます。
すると設定したルールの配信結果が確認できます。今回は年齢と性別を設定したため、この2つの結果を確認できています。
Value Rules は、Meta 広告の自動最適化の仕組みに人の知見をプラスできる貴重な機能です。
特に LTV 重視の広告運用においては、ターゲットごとの価値を反映できる点で非常に有効であり、筆者としても「早く正式リリースされ、すべてのアカウントで使えるようになってほしい」と強く感じています。
まだベータ版で制限はあるものの、対象アカウントであれば積極的にテスト導入してみる価値は大いにあるはずです。
ASC 運用を一段階進化させたい方は、ぜひこの Value Rules を活用してみてください。
広告運用 コンサルタント
2023年入社。新卒で大手グループ会社の経理職を経験し、その後WEBマーケティング会社に転職。BtoBからBtoCまで幅広い業種、サービスの広告運用を担当。特に検索連動型広告が好き。趣味はコテンラジオを聴くこと、ランニング、ポケモンGO。
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