マーケティング

LTV(ライフタイムバリュー)とは。意味や計算方法、利益を最大化させる考え方を解説

マーケティングや運用型広告の用語には、アルファベット3文字のものが多いと思いませんか。今回紹介する LTV もその仲間の1つです。

運用型広告のみを扱っている方には馴染みがないかもしれませんが、自社や自社サービスの利益を最大化させるためには、意識すべき指標です。ここでは LTV の定義や計算方法、運用型広告での活用の仕方について解説します。

LTV(ライフタイムバリュー)とは

LTV(LifeTime Value:ライフタイムバリュー)とは顧客生涯価値とも訳され、ユーザー1人当たりがサービスや商品を利用している期間内に企業にもたらす利益の合計のことで、1度の取引に限らず2回目以降の取引で生まれる利益も含みます。

主に複数回の購入が考えられるサービスや商品に用いる指標で、長期的に利用または購入する顧客が多いサービスや商品の場合は LTV が高い傾向にあります。アパレルなどの商品の場合はそのブランドを買い続ける限り、ウォーターサーバーのような定期購入の商品では解約までサービスを利用しつづける期間にユーザーが企業に貢献する利益を指す数値です。

継続利用を前提としているため、住宅や車のように一生涯で購入回数が極めて低い商品にはあまり使われない指標です。日用品や食品などの消耗品は複数回の購入が考えられ、定期購入やサブスクリプションも対象になります。その全ての合計利益が LTV で、1回の利益が小さくても、複数回購入したり利用期間が長いと LTV は大きくなります。

LTV の計算方法

LTV の算出方法は、商品の特性によってさまざまあります。サービスや商品タイプ、算出したい数値に合わせて参考にしてください。以下は一例です。

  • LTV =平均購買単価 × 購買頻度 × 継続購買期間
  • LTV =顧客の年間取引額 × 収益率 × 顧客の継続年数
  • LTV =顧客の平均単価 × 粗利 ÷ 解約率
  • LTV =顧客の平均購入単価 × 平均購入回数

新規顧客が増えたり購入単価が上がると、LTV は大きくなり、解約数が増えたりクーポンやセールなどの値引き施策をおこなうと LTV は小さくなります。また、継続年数や継続購入期間など、短期間では算出できない情報も必要になるため、正確な数値をすぐ計算しにくい指標でもあります。

運用型広告での LTV の必要性

Google や Yahoo!、Facebook などの運用型広告の管理画面には表示されないので、日々の業務で LTV を確認することは多くないかもしれません。しかし、中長期的に利益を出すために欠かせない指標であることも間違いありません。

運用型広告を用いて自社や自社サービスの利益を最大化させるためには、LTV を把握したうえで目標を設定し、広告を運用することが大切です。

そうでないと、「リピーターによって利益が出るはずだったのに実は赤字だった」や「もっと広告予算をかけて売上をあげることができたのに不要な制限のせいで機会損失になった」などという事態が起こり得ます。

ROAS がマイナスでも LTV はプラスになることも

ROAS で採算が合わなくても、LTV 観点では利益プラスになるケースもあります。定期購入の商品を考えてみましょう。ROAS とは「広告の費用対効果」のことで、広告費に対する売上の貢献度合を表します。ROASの数値は、100%を基準に広告費の回収率を知ることができ、100%未満だと利益がでないため赤字、101%以上であれば利益がでていることになります。

例えば、1回の購入単価が1,000円の商品を CPA 1,000円で獲得した場合の ROAS は100%になり、利益が出ていないことになります。買い切りの場合、ROAS が100%前後でさらに原価率も加味すると利益がほぼ出ていないという状況もありえます。

さらに、キャンペーンなどで初回購入を定価の以下で販売している商品もあるため、管理画面の数値では赤字になります。しかし、LTV の観点から同じ広告成果を改めて分析すると ROAS が変わってきます

あるユーザーが広告を一度閲覧して商品を購入し、以降広告を経由せずに商品を買った場合、初回購入時は ROAS が100%だったとしても、2回、3回と回数を重ねるごとに ROAS は200%、300%と増えていきます。

この場合、購入回数が増えるほど広告の費用対効果が増し、効率よく利益が出ている計算になります。このように LTV の観点で広告の成果を分析すると、売上は初回購入時の数十倍、利益も数倍になるケースがあり、費用対効果がいいと言えます。

自ら広告を運用する場合、代理店に依頼する場合にかかわらず、この考え方に基づいた目標を設定しましょう。目先の数値ばかりを意識すると、現実的でない目標になったり、目標設定が破綻して広告が配信できないという状況に陥りかねず、大きな機会損失が発生する可能性もあります。

運用型広告における新規顧客獲得の価値を正しく評価できる

一般的に既存顧客(リピーター)よりも新規顧客の方が価値が高いと考えられます。例えば、一度購入した商品を満足して繰り返し購入した実体験がある方は多いかと思います。

2回目以降のリピート購入よりも、「初めての商品を購入する」心理的ハードルの方が高く、さらに「商品を知る」段階から始まる場合はその傾向はより高まります。

広告を配信するうえでも、リピーターは固有名詞やリターゲティングなどの配信メニューで比較的効率よく獲得できますが、新規顧客は獲得は難しいことが多いです。獲得のフックになる一般名詞は競合も多いうえにクリック単価が高く、また他社商品と比較検討されるためにコンバージョン率も下がり、CPA が高くなる傾向にあります。

それでも、新規顧客獲得の方が運用広告上では価値があります。なぜなら、運用型広告に限った話ではありませんが、広告には「まだ知らない商品を知ってもらう、出会いを作る」という役割があるからです。

既に知られている商品なら特別な施策がなくても購入されるかもしれませんが、まだ知られていない商品ではありえません。「知らない」から「知っている」状態にし、リピーターの母数を増やすためにも、運用型広告では新規顧客の獲得が必要なのです。

このような施策に説得力を持たせるためにも、LTV を算出して、新規顧客獲得にどれほどの利益があるのか見通しをたてることが大切です。

LTV を最大化させる方法

会社や事業の利益を最大化させるためには薄利多売の戦略も考えられますが、ユーザー1人あたりからの利益を増やす LTV 視点での見直しも重要です。ここからはユーザー1人あたりからの利益の最大化のために考えられる方法を3つ紹介します。

  • 商品設計の見直し
  • リピーターを増やすための施策
  • 継続率を上げるための施策

1. 商品設計の見直し

価格や原価を含めた商品設計を見直すことでユーザー1人あたりからの利益を増加できます。その方法を具体的に見ていきましょう。

値上げやセット売りの検討

ユーザー1人あたりからの売上を大きくするためには、まず値上げです。単純に購入単価が上がるため、元々の販売価格よりも利益が大きくなります。

一方で、値上げによって購入をやめたり、他社商品へ乗り換えられたりと、リピーターの買い渋りが発生するというリスクも考えられます。

購入単価を上げるために、セット商品を作ることも1つの手段です。単品購入より2つ、3つ一緒に購入したほうが1つの単価が安くなる商品セットや、「ベッドフレームとマットレス」のように一緒に使用するような商品をセットにするなどの方法があります。ユーザーにとってもお得感があり、別々で購入する手間もなくなるので、喜ばれやすい施策です。

原価の抑制

商品の原価を抑制することでも利益を増やすことができます。仕入れ先への交渉や素材の見直しも検討しましょう。

また、販管費や広告費などの販売に必要な経費削減でも利益の最大化が見込めます。この方法を用いると、これまで同様の価格での販売が可能になりますが、原価を抑えすぎて商品の質が下がってしまうと、リピーターになるユーザーが減ってしまう恐れもあります。

2. リピーターを増やすための施策

ユーザー1人あたりが複数回購入する商品の場合、既に商品の購入経験があり、商品を認知していて、かつ商品のファンである「リピーター」の存在は、全体の利益という観点からも大切な存在です。リピーターを増やすために、商品の質の向上に加えて、ユーザーとの継続的なコミュニケーション施策も有効です。

メールマガジンや SNS などの施策

ユーザーと継続的なコミュニケーションをとる手段として、メールマガジンが考えられます。EC サイトでは、商品発送のために、ユーザーのメールアドレスなどのデータを取得します。

取得した連絡先に新商品発売のような有益な情報を提供することで、継続的なコミュニケーションが可能になります。メルマガ会員限定でのセールやクーポン配信をきっかけに2回目以降の購入に繋がることもあります。

Instagram や Twitter などの SNS を活用されている会社も多いのではないでしょうか。SNS は、ブランドのファンが集まる場です。SNS のフィード上で一般ユーザーの投稿内容とともに閲覧されるため、広告感を抑えつつ情報を提供できます。

ユーザーが日常的に使用しているツールで情報発信することで、ユーザーにストレスなく新商品やセール、クーポンなど購入に繋がる告知ができます。

SNS は直接購入がないユーザーにも情報提供できる場なので、リピーターだけではなく新規ユーザーの獲得にも有効です。

リマーケティング広告の配信

一度購入経験があるユーザーにリマーケティング/リターゲティング広告を配信することも有効です。購入完了ページに訪れたことがあるユーザー、またはメールアドレスなどの顧客情報からターゲティングをおこない、ディスプレイ広告を配信できます。

購入したばかりのユーザーへの配信は一定の効果が見込めますが、商品の購入サイクルによっては、購入から2~3ヶ月後たったユーザーのオーディエンスを作成し、商品を思い出してもらうような施策も可能です。

3. 継続率を上げるための施策

最近増えているサブスクリプションの形式をとる商品や BtoB の SaaS の場合は、解約率を下げ、継続率を上げることが LTV の最大化に繋がります。日常的に使ってもらえるサービスになるよう設計し、無駄なものだと思わせないことが大切です。

積極的なカスタマーサポートで満足度を上げる

利用率は、解約率・継続率の改善に大きく影響する KPI の1つです。このようなサービス形態を展開している場合は、重要な指標として追っていることも多いのではないでしょうか。

継続して使ってもらうためにも、まずは使ってもらうことが大事です。積極的に使ってもらうための方法として、活用方法のレクチャーやメール・アプリのプッシュ通知での能動的なサポートも必要になります。

ユーザーの疑問にすぐに回答してくれるヘルプセンターも重要です。人員コストがかかりますが、解約率・継続率・利用率に課題がある場合は、根本的な見直しも効果的かもしれません。

まずは LTV を算出してみよう

LTV は、運用型広告でも費用対効果を正しく認識するために必要な指標です。しかし、算出にはさまざまなデータが必要で、あらかじめデータを用意しておくことが肝心です。サービス全体の利益を最大化させるため、LTV 算出の準備から始めてみてはいかがでしょうか。

お困りごとはまずはご相談ください。広告に限らず、認知やPRなど幅広い施策提案が可能です。

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記事を書いた人

林 ひかり
林 ひかり

広告運用 コンサルタント

2020年1月に広告運用コンサルタントとして入社。新卒で入社した不動産会社向けシステム会社で、気づいたらマーケティング担当になっていて、サイト運営や広告運用などいろいろ携わった元”なんでも屋のぼっちマーケター” 広告運用以外だとGoogleAnalyticsとZapierが好き。鈴木愛理とハロプロに支えられ、毎日楽しく広告運用してます。

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