自動最適化案で提案されることが多く、導入する方も増えてきた「インテントマッチ」。しかし、拡張の柔軟さゆえに運用歴の長さを問わず、「どう設定すればいいのか」が分からない方や「本当に成果につながるのか」と不安に思う方も少なくありません。
ちょうどインテントマッチに変わってから1年。「AI MAX」という、インテントマッチとつながりの深い機能も登場しつつあります。
この記事ではそんな状況も踏まえて、「いま」知りたいインテントマッチの基本とフレーズ一致・完全一致との使い分けのポイント、さらには成果を出すためのポイントを、事例を交えて解説します。
目次
インテントマッチは、登録したキーワードそのものと、それに関連する検索語句に広告を配信するマッチタイプです。検索語句からユーザーの検索意図(インテント)を読み取って、広告の表示先を広げる性質があります。
この「マッチタイプ」とは、広告の配信のために登録したキーワードがどの範囲まで掲載するかを決める設定を指すものです。インテントマッチ以外にも完全一致・フレーズ一致があります。
インテントマッチは、3つのマッチタイプの中で最も一致するキーワードの範囲が広いのが特徴です。この性質から、新しい客層の開拓など「より多くの人に広告を出したい」場合にとりわけ重宝されます。
なお、Google 広告と Yahoo! 広告では、インテントマッチはキーワードを登録する際のデフォルトのマッチタイプとして設定されています。
▼インテントマッチ以外のマッチタイプも知りたい方はこちら
マッチタイプとは?悩んだときに参考にしたい目的別の使い分け方を紹介|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
2021年6,7月にGoogle、Yahoo!どちらのも媒体で廃止になった絞り込み部分一致以外の3つのマッチタイプを丁寧に解説しました!登録キーワードと配信される語句の例も記載したので設定迷ったら参考にしてみてください。
インテントマッチはもともと「部分一致」という名称でしたが、2024年7月に Google 広告と Yahoo! 広告それぞれで名称が変更されました。しかし変わったのは名称だけで、機能そのものが変わったということはありません。
なお、Microsoft 広告では「インテントマッチ」の名称は使われておらず、代わりに「部分一致」または「広範一致」という名称が使われています。
インテントマッチは、リスティング広告で3つあるマッチタイプの中で最も一致するキーワードの範囲が広いのが特徴です。
以下は Google 広告と Yahoo! 広告のインテントマッチ、Microsoft 広告の広範一致に関する記述をまとめたものですが、登録したキーワードそのものに加え、関連するキーワードにも広告が配信されることが分かります。
媒体名 | インテントマッチ(広範一致)に関する記載 |
---|---|
Google 広告 | 指定したキーワードに関連する内容の検索が広告の表示対象となります。これには、キーワードの語句そのものは入っていない検索も含まれます。 |
Yahoo! 広告 | 登録キーワードの類義語や関連性のある検索キーワードに対しても、広告を表示します。 |
Microsoft 広告 | 広範一致は、キーワードに関連する単語を他のユーザーが検索したときに広告を表示できるようにする既定のキーワード一致の種類です。これには、キーワード用語を含まない検索を含めることができます。 広範一致は、類義語やその他の類似キーワード (スペル ミスのあるキーワードを含む) にも一致します。 |
ここで重要なのは、インテントマッチで登録されたキーワードが「関連する」検索語句に反応するということです。これは登録したキーワードそのものが入っていない検索語句や、意味合いが全く同じでない検索語句でも「関連する」とみなされた場合に広告が表示される可能性があることを意味します。
冒頭でも紹介した通り、インテントマッチでは「関連する」検索語句に広告が配信されます。
一方、完全一致では「全く同じ意味・意図」の検索、フレーズ一致では「同じ意味の内容を含む」検索に表示されます。いずれも「類似パターン」として似た語句には多少拡張して配信されるものの、インテントマッチほど広告の配信先は拡張されません。
例えば、「一人旅 温泉」というキーワードを各マッチタイプで設定した場合、広告が表示される検索語句は下記のように予想できます。
マッチタイプ | 広告表示の可能性がある検索語句 |
---|---|
インテントマッチ |
|
フレーズ一致 |
|
完全一致 |
|
このように、完全一致やフレーズ一致ではキーワードにより近い検索語句へ広告配信されるのに対し、インテントマッチでは「大宮から電車で行ける温泉」や「傷心旅行 一人旅」、「デトックス 温泉」といった検索語句まで拾ってきており、広告の表示範囲が大きくなっているのが分かりますね。
Google 広告と Yahoo! 広告では、キーワードをインテントマッチで登録した際に、以下のような判断基準でマッチする検索語句を探しているそうです。
そのため「一人旅 温泉」と登録していても、ランディングページに「汗を流してデトックス」や「湯治に最適」などの語句が多数含まれているならば、「デトックス 温泉」や「湯治の宿」でも配信される可能性があります。
こうした性質はフレーズ一致や完全一致では見られないため、特徴と併せて押さえておきましょう。
インテントマッチの性質や特徴を知っても、「でも実際、インテントマッチの活用が成果につながるの?」と疑問に思う方もいるかと思います。
このセクションでは、キーワードマーケティングで運用している広告で、インテントマッチのキーワードを活用して実際に成果が上がったオンライン研修ビジネスの事例を紹介します。
この事例では、もともと Google 広告のみを利用しており、業界内でもごく狭いターゲット層に向けた商材の広告を配信していました。
ターゲット層が狭いためかキーワードもニッチなものが多く、キーワードプランナーを使用した調査でも月間平均検索ボリュームは非常に低い値でした。
また、多額の予算をかけるのが難しい都合上、フレーズ一致のキーワードで配信をスタートしました。しかし初動の結果は配信量がなかなか伸びず、有効なクリックもほとんど得られない状況でした。
こうした背景からキーワードのマッチタイプをインテントマッチに変更し、関連ワードにも広告配信されるように設定したところ、広告の表示回数は変更前の約2.3倍、クリック数は約3.3倍に増え、コンバージョンも徐々に発生するようになっていきました。
期間 | 表示回数 | クリック数 | クリック率 | コンバージョン数 |
---|---|---|---|---|
マッチタイプ変更前
(1ヶ月間) |
1,670 | 70 | 4.2% | 0 |
マッチタイプ変更後
(1ヶ月間) |
3,870 | 230 | 5.9% | 5 |
ユーザーの検索意図を読み取って検索語句のマッチを広げる、インテントマッチの性質をうまく生かした事例といえるでしょう。
先ほど紹介した事例をもとに、このセクションではインテントマッチのメリットとデメリットを解説します。
先ほども紹介した通り、インテントマッチのメリットは検索語句とのマッチの広さにあります。
ユーザーの検索意図(インテント)をもとに、似たキーワードや関連のあるキーワードにも広告を表示させることで、思わぬ検索語句でコンバージョンを獲得でき、顧客層の開拓やビジネスの拡大につなげることができます。
インテントマッチは広い検索語句に広告配信できるため、媒体の自動入札戦略にも良い影響を与えられるのもメリットです。
▼まず「自動入札とは?」を押さえたい方はこちらから
自動入札戦略とは?目的別の選び方と運用のポイントを紹介|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
自動入札とは、 Google や Yahoo! のシステムが、キャンペーンの目的・入札戦略に応じて自動的に最適な価格で入札をおこなう機能です。設定の際に迷うと思うので、やりたいことと、それに対応する自動入札の選択肢を表にしてまとめました。導入することのメリットや注意点をあわせて記載したので是非参考にしてみてください。
一般的に自動入札戦略の機械学習は制限の少ない環境で広告配信を重ねることで、どんな条件で広告配信すると成果が良くなるのかというデータをより蓄積するようになり、広告成果の良化傾向も早まると言われています。
そのため、より制限の少ないインテントマッチを使用することを媒体も推奨しています。
インテントマッチでは幅広い検索語句に広告を表示させられる一方、キーワードの拡張が起こって広告費がかさむデメリットもあります。
新しい客層を開拓できることもありますが、確度の低い検索語句にも配信されることで無駄なコストがかかってしまう可能性も大いにあります。
対策としては除外キーワード設定や、完全一致・フレーズ一致キーワードの設定があります。これらの対策はいずれも広告配信をより絞り込むことができるため、限りなく無駄の少ない配信を実現できるのがポイントです。
ここまでに紹介した特徴やメリット、デメリットをもとにした「インテントマッチはどのようなタイミングで使うべきか」は以下の通りです。
インテントマッチを使用すると思わぬ検索語句にも拡張されて広告配信されるため、広告配信対象は想定以上に広くなります。関係性の低い検索語句からのクリックや誤クリックが発生するリスクは高いものの、想定外に広がった配信範囲が新たな顧客層の開拓につながることもあります。
予算を節約しなければならないとき、少ない予算でやりくりしなければならないときはインテントマッチの使用を避け、予算に余裕があるときに積極的に使用することを意識しましょう。
前述の通り、インテントマッチのキーワードは拡張性が高いため、さまざまな検索語句への配信を期待できます。その中には、「意外とこんな検索語句でもコンバージョンが獲れるんだ」と思えるものも出てくるでしょう。
ニッチな商材でターゲットがあいまいなときや既存の広告配信で獲得数に頭打ち感が出てきたとき、ターゲットの開拓のためにインテントマッチを使用するのは非常に有効です。
商材がニッチで想定しているキーワードの検索ボリュームがそもそも少ないとき、広告配信したくても配信されないことがあります。
そんなとき、インテントマッチを使用すれば、想定しているキーワードに関連する検索語句にも広告配信されるため、さまざまな検索語句に対して広告を表示させられます。
「予算に余裕があるとき」や「ターゲットの開拓を積極的におこないたいとき」にもつながってきますが、インテントマッチは獲得効率より配信量を重視するときに有効なマッチタイプです。
フレーズ一致や完全一致で配信対象を絞り込み、獲得効率の良い配信でコンバージョン単価を重視するより、とにかくコンバージョン数がほしいというときは配信量の拡大が急務になりますので、インテントマッチの使用が有効です。
ここでは、インテントマッチ(広範一致)でのキーワード登録方法を媒体別に紹介します。
Google でインテントマッチを利用したキーワードを登録する際は、キーワードを書式なしのシンプルなテキストで入力するだけです。
フレーズ一致のように二重引用符(” “)で囲んだり、完全一致のように半角の大かっこ([ ])で囲む必要はありません。
Microsoft で広範一致(部分一致)を利用する際にも同様です。
Yahoo! 広告のみ、画面内でマッチタイプを選択して登録する必要があります。四角枠で囲んだプルダウンで「インテントマッチ」を選択してから、キーワードを追加しましょう。
以下のように、入力欄の右側にある登録キーワード一覧に、任意のキーワードとマッチタイプが正しく反映されていれば OK です。
インテントマッチは非常に強力な拡張機能を持つ一方で、その柔軟さゆえに思わぬ落とし穴もあります。「せっかく導入したのに成果が悪化した」や「意図しない検索に広告が出てしまった」という失敗談も少なくありません。
ここでは、インテントマッチを使う際にぜひ押さえておきたい注意点と、その対策を紹介します。
いきなりインテントマッチを既存キャンペーンに投入すると、既存の成果を大きく崩す可能性もあります。
インテントマッチのキーワードの意味拡張はこれまで拾えなかった幅広いキーワードにも広告を配信できる非常に強力な機能です。しかし予測できない検索語句にまで広告が出る可能性が高く、成果が不安定になりやすい側面もあります。
まずは新しいキャンペーンや広告グループを作り、そこでインテントマッチをテスト運用するのがおすすめです。小規模から始め、検索語句レポートをじっくり分析しながら徐々に広げることで、リスクを抑えながらインテントマッチの強みを活かした配信を進められます。
また、限られた予算の中、ある程度検索ボリュームを見込める新しいキャンペーンやアカウントで、インテントマッチのみのキーワード構成で配信開始するのもおすすめできません。
まずはフレーズ一致や完全一致から配信をスタートし、成果の良いキーワードのマッチタイプを拡張するなど、段階を踏んで徐々にビジネス拡大できるような運用を心がけましょう。
ここまでにも説明した通り、インテントマッチはキーワードの意味を広く解釈して広告を表示する仕組みです。そのため、登録したキーワードが少なくても幅広い検索意図を十分にカバーできます。
そのため大量のキーワードを適当に登録すると、除外キーワードの設計が追いつかず、管理が煩雑になりやすいです。結果として不要な検索語句にまで広告が配信され、無駄なクリックが発生しやすくなります。
また、大量に入れると、どのキーワードが本当に効いているのか分析しづらくなるデメリットもあります。インテントマッチを使う際は「狙いたい顧客の検索意図に沿ったキーワードを少数だけ登録し、配信の広がりは各媒体に任せる」といったスタンスが重要です。
インテントマッチは単語そのものだけでなく、その背後にある検索者の「意図」を解釈する性質があります。そのため、自分が登録したキーワードと一見無関係に見える語句でも広告が配信されるケースが少なくありません。
例えば「ホワイトニング 東京」で登録した場合でも、「歯の黄ばみ 原因」や「オーラルケア 歯」など、実際にホワイトニングをする前段階の検索語句にも表示される可能性があります。
こうした意味の拡張は強力ですが、運用側があらかじめ「どこまでの意味拡張なら許容できるか」を想定しておかないと、無駄なクリックを増やしやすくなります。あらかじめ関連ワードの広がりをリストアップし、除外も計画的に進めることが重要です。
インテントマッチは AI が検索意図を広く解釈して広告を表示するため、こちらが想定していないキーワードでも積極的に広告が配信されます。これを放置すると無駄なクリックや質の低い流入が増え、CPA が悪化しやすくなります。
そこで欠かせないのが除外キーワードの設定です。検索語句レポートをこまめに確認し、コンバージョンに結びつかない語句や、自社の商材とは関係が薄いクエリを見つけ次第、除外キーワードとして設定しましょう。
また、ネガティブワードや無関係なワードを事前にリスト化して除外しておくと、初期段階から精度の高い配信が可能になります。インテントマッチは除外設計を前提に使うことで、初めてその真価を発揮する機能なのです。
なお、除外キーワードの選定・登録のコツについては、以下の記事にまとめています。検索語句チェックの際に便利なシートも提供しているので、併せてご覧ください。
【効率化ナレッジ】除外キーワード選定で決めておくと良いこと|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
広告配信の足を引っ張っている余分な検索クエリ排除し、効率的な配信にするための方法をまとめました。作業を効率化するためのスプレッドシートや、具体的な方法までわかりやすくまとめました。
2025年5月後半からベータ版が順次展開されている、検索キャンペーン向け AI 最大化設定(通称:AI Max)。この「AI Max」についても、インテントマッチとの関連性が話題にあがっています。
AI Max とは、AI の予測機能を使って既存の検索キャンペーンを強化できる、新しいキャンペーン設定項目です。「検索語句とのマッチング」や「最終 URL の拡張」といった機能を利用できます。
そして、AI Max の機能のうちインテントマッチと特に関連性が深いのが「検索語句とのマッチング」です。
「検索語句とのマッチング」機能は、インテントマッチのキーワードに加え、広告文やランディングページの内容を学習し、広告の配信先を拡張する効果があります。
AI Max は、ユーザーが検索を通じて知りたいことを推測し、関連する広告を表示させることが目的です。そのため、検索語句と「関連性」のある検索語句に反応するインテントマッチキーワードの設定はとりわけ重要になるでしょう。
▼AI Max に関する、Google 公式ブログはこちら
Introducing AI Max for Search campaigns
Introducing AI Max for Search campaigns, bringing the latest and best of Google AI to help you boost performance.
Google 広告や Yahoo! 広告の発展により、マッチタイプ「部分一致」は進化しました。今や検索意図を深くくみ取る性質から「インテントマッチ」へと名前を変え、広告運用を成功させるカギの一つとなっています。
インテントマッチで無駄な配信を抑えつつ大きな成果を狙うポイントは、ほかのマッチタイプとの違いや注意点を理解して使うことです。
この記事で紹介したインテントマッチの「いま」を正しく捉え、自分の商材や運用状況に合わせて取り入れることで、広告運用はさらに一段上のステージに進むのではないでしょうか。
編集部
モットーは、分かりにくいを分かりやすく。Web広告の知識に長けた編集陣が、リスティング広告やSNS広告などの運用型広告の最新情報、Webマーケティングのノウハウを分かりやすく解説します。
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