広告運用に18年以上携わり、2008年からキーワードマーケティングに在籍している小島です。
2025年8月末、Web マーケティング業界では AI Overview の影響が徐々に無視できなくなってきました。特に「これから検索はどうなるのか?」という点には、多くの人が関心を寄せています。
そんな中、2025年5月に Google の「AI モード」がアメリカでリリースされました。これは今までのサイトへのリンクが順番に並んだ検索結果画面とは違い、生成 AI のチャットの返答のように検索結果が表示されるものです。さらに2025年9月9日には、AI モードの日本語版が提供されることも発表されました。
今回はこの「AI モード」について、Google が公開している情報や使い方、実際に日本で利用してみた際の所感などをまとめて紹介します。また、記事の後半では今後の日本でのリリースや検索行動の展望なども私なりに考えたので、併せてご覧ください。
目次
Google 検索の AI モードとは、検索した内容に合わせて Google の生成 AI「Gemini」がユーザーの意図に合わせた回答を作成し、表示する機能です。
例えばユーザーが「○○駅から徒歩5分圏内にある飲食店を教えて」など複雑な質問を投げかけると、AI が関連情報をまとめた回答を返します。
AI による概要(AI Overview)の発展系ともいえる機能で、使用感や表示のされ方としては Chat GPT のような生成 AI のチャット画面とほぼ同じ印象です。
スマートフォンで利用した場合も同様で、こちらも 生成 AI のチャットのような感じで回答が返ってきます。
この AI モードは、通常のキーワード検索をした後でも切り替えられるのが特徴です。画面左上の「AI Mode」をクリックすると、AI モードの検索結果に切り替わります。
2025年8月現在、AI モードは基本的な検索機能のみ対応しています。
しかし以下の Google 公式ブログにもある通り、今後は Deep Search(深層調査)機能や、Google レンズを用いたリアルタイム会話検索、ユーザーの代わりにチケット購入などをおこなう「エージェント機能」など、さまざまな機能が追加されるようです。
Google 検索の AI Mode : Google I/O 2025 でのアップデート
昨年の Google I/O で AI による概要 (AI Overviews) の機能を発表して以来、Google 検索の使われ方に大きな変化が起きています。人々は、より多くの質問を Google に投げかけるようになっており、その中には、より複雑で長文のものや、マルチモーダルな質問も含まれています。検索における AI は、ウェブサイトへのリンクとともに、Google にあらゆる質問をより簡単に投げかけ、役立つ回答を得られるようにしています。AI による概要は、ここ10年で最も成功した検索機能の一つと言えるでしょう。AI による概要を利用するほど、その結果に対する満足度が高まり、より頻繁に検索するようになる傾向が見られます。米国やインドなどでは、AI による概要が表示される種類のクエリにおいて、Google 検索の利用が 10% 以上増加するという結果も出ています[7dd5f2]。これは、AI による概要を一度使用すると、ユーザーがこの種のクエリをより多く行うようになっていることを意味し、特に喜ばしいのは、時間とともにこの利用増が拡大していく点です。Google 検索に期待される早さで AI による概要も表示しており、業界最速の AI 応答を実現しています。私たちは常に AI 技術により検索を進化させています。本日の I/O では、情報を超えた知性へと進化する Google 検索の未来を構築する最新の取り組みを紹介しました。ここからは、発表内容の詳細をご紹介します。最先端の AI 機能を備えた検索の AI ModeAI による概要の展開に伴い、エンドツーエンドの AI 検索体験が欲しいというお声をいただいています。そこで今年初めに Labs で英語の AI Mode の試験導入を開始し、本日より米国で Labs 未登録のユーザーにも展開します。AI Mode は Google のもっとも強力な AI 検索であり、より高度な推論とマルチモダリティ、そして追加の質問やウェブへのリンクを通じてより深く掘り下げる能力を備えています。今後数週間かけて、Google 検索と Google アプリの検索バーに新しい AI Mode タブが表示されるようになります (米国のみ)。
残念ながら、2025年9月時点では、追加機能について具体的な実装時期は決まっていません。
ただ、仮にこれらの機能が全ユーザーを対象に実装された場合、AI エージェントとしての側面も持ち合わせたより画期的な検索ツールとなることは間違いないでしょう。
今回の AI モードの実装は、検索語句の長文化と「検索エンジン疲れ」に対応するためではないか、と考えられます。
そもそも、AI モード実装前の検索エンジンでも、検索語句は文章のように長くなる傾向がありました。その傾向は今、Chat GPT など生成 AI チャットの出現によって、より加速しています。
また、生成 AI チャットの出現でいっそう浮き彫りになったのが「検索疲れ」です。1つの質問に対し数多くの回答(サイト)リストが出てくる検索エンジンは、ユーザーにとって「どれが私に合う正解か分からない」存在となっているのでしょう。
こういった背景を考えると、生成 AI チャットが出てきたから慌てて Google は対応しているのではなく、そもそも Google は AI モードの世界を目指していたように考えられます。
米国時間の2025年8月21日、Google は日本など世界180の国と地域で AI モードを実装すると発表しました。
グーグルの「AIモード」、日本でも提供開始–現在は英語のみ – CNET Japan
グーグルは、「AIモード」に新たなエージェンティック機能を追加するとともに、提供地域を日本など世界180の国と地域に拡大すると発表した。
さらに2025年9月9日には、日本版の Google でも AI モードの提供が始まることが発表されました。
非常に複雑で多面的な質問を投げかけると、瞬時に AI がわかりやすい包括的な回答を生成し、さらに深堀りするためのウェブリンクも合わせて提示してくれる ー そんな体験を想像してみてください。本日より順次、Google の強力な AI 検索体験である AI モード の日本語での提供を開始し、このような体験をお試しいただけるようになります。日本語のほか、インドネシア語、韓国語、ヒンディー語、ポルトガル語 ( ブラジル ) での提供も順次開始します。Google 検索の結果ページに表示される [ AI モード] タブより、これらの新しい言語で PCとモバイルのブラウザ、Android および iOS の Google アプリでお使いいただけます。あらゆる複雑な質問に対応できる設計AI モード は、Gemini 2.5 のカスタム バージョンを使用しており、従来は複数回の検索が必要だったような、長く、複雑な質問を一回の検索で回答します。AI モードは、探索的な質問や、地域のおすすめを探したり、旅行の計画を立てたり、複雑な手順を理解したりするといった、より複雑なタスクで特に役立ちます。実際、AI モードの初期のユーザーは、従来の検索クエリの 2 倍から 3 倍の長さの質問をしていたことがわかっています。例えば、「京都駅出発で 6 泊 7 日の旅行プランを立てて。伝統工芸とか歴史的な場所を巡るアクティビティ中心のプランで、ディナーでおすすめのレストランも入れて。」と聞くこともできます。AI モードは Google のクエリ ファンアウトと呼ばれる技術を使用しています。この技術は、質問をサブトピックに分解し、ユーザーに代わり、サブクエリに対して検索を実行します。これにより、従来の Google 検索よりはるかに深くウェブを探索できるようになり、個別の質問に最も適した、関連性の高いコンテンツをより多く見つけることができます。先ほどの質問に「10 月に行くとしたら、この地域の近くで開催予定のお祭りはある?」といった追加の質問をすることで、さらに深く掘り下げることも可能です。
ただ「発表後すぐに実装」というわけでもなく、日本語版の Google でも AI モードが試せるようになったのは2025年9月9日以降のことです。
先に AI モードが実装されたアメリカ版 Google でもそうなのですが、AI モードは検索窓の右端にボタンのような形式で実装されているだけでした。生成 AI のような検索画面になっていない点を考えると、現在もあくまで「メインの機能」は通常の検索エンジンのようです。
しかし、Google の CEO の Sundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は、「AIモードで成功した機能は、徐々にメイン検索体験にも統合されていく」と述べています。
これは AI モードがうまくいった場合には、現在の検索画面に AI モードが統合されていく計画があることを意味します。最終的にどんな形になるかは、これから決まっていくのでしょう。
また、インタビューの中でピチャイ氏は「選択権はユーザーにある」とも述べています。このことから、私たち Google 検索のユーザーが AI モードをどのように使っていくかによって、どう統合されるのかが決まるといえそうです。
新しいもの好きな方には、「早く AI モードを試してみたい」という方もいるでしょう。2025年9月9日以降、日本語版の Google でも AI モードが試せるようになりました。
以下のように、検索窓の右端に「AI モード」のボタンが表示されれば、AI モードを利用できます。
この状態で「AI モード」部分をクリックすると、以下のような 生成 AI チャットに似た画面が表示されます。後はこの画面で検索するだけです。
ここからは実際の検索結果画面をもとに、AI モードでどのような検索結果が表示されるかを紹介します。今回は「Google AI モードとは何か?」というフレーズで検索してみました。
検索結果の画面がこちらです。見た感じ、Chat GPT などの生成 AI チャットが出す検索結果とほぼ同じようなイメージとなりました。
検索結果は内容が網羅されており、またソースとなるリンクもちゃんと入っています。リンクは各文章に挿入されていますが、画面右側にもリストアップされており、ソースを辿りやすくなっています。
こうした画面表示などから考えるに、AI モードは「何かを検索する」という用途に特化した生成 AI チャットで、Chat GPT などに流れた「検索ユーザー」を取り戻すことを意図しているのではないでしょうか。
そもそも無料、さらに膨大にいる「検索ユーザー」がそのままシームレスに生成 AI の力を支えるインターフェースということで、他の生成 AI ツールを圧倒しそうな予感がしています。
2025年8月現在、アメリカでは AI モードのリリースからすでに2ヶ月以上が経過しており、情報も流れ始めています。
アメリカの Semrush 社による調査には、AI モード導入後2か月で、利用セッションに占めるAIモード利用率が約0.25 %から約1%に上昇したとあります。一見あまり上昇していないように感じますが、それでも無視できない流れといえそうです。
ただ私は、AI モードが登場しても、結局は「今までの検索+AI Overview で事足りてしまうのでは」と考えています。
そもそも Google を使って検索しているユーザーの多くはこれまでの検索に慣れている人が大半です。また、そうした方の検索の多くは「手っ取り早く答えを知りたい」というニーズをもとにした、インフォメーショナルクエリ(情報収集型クエリ)が用いられています。
こうした背景からも、「今までの検索+AI Overview」という現行の検索体制が一気に崩れるということは考えにくいのです。
とはいえ、AI モードのリリースに伴い意識しておくべきこともあります。それが「ゼロクリックの増加」です。
「ゼロクリックの増加」について、アメリカの Semrush 社による調査では以下のように説明しています。
While direct comparisons should be made with caution, the overall trend is consistent: As Google integrates more AI-driven responses, the likelihood of users clicking through to external sites declines.
・Google Search without AI Overview: ~34% zero-click
・Google Search with AI Overview: ~43% zero click
・Google AI Mode: ~93% zero click———————
訳)直接的な比較には注意が必要ですが、全体的な傾向は一貫しています。Google が AI を活用したレスポンスの統合を進めるにつれて、ユーザーが外部サイトへクリックスルーする可能性は低下します。
・Google 検索(AI Overview なし):ゼロクリック率 約34%
Google AI Mode’s Early Adoption and SEO Impact|Semrush Blog
・Google 検索(AI Overview あり):ゼロクリック率 約43%
・Google AI モード:ゼロクリック率 約93%
AI モードを利用したユーザーの92%から93%が「ゼロクリック」であることは、自然検索からの流入からお客さまを得ている会社にとっては脅威といえます。
これは今後 AI モードが主流になった場合、インフォメーショナルクエリでサイト流入を狙う「コンテンツマーケティング」の直接的な効果が、相当薄れてしまうためです。
ただ個人的には、自社名や自社ブランド名といったナビゲーショナルクエリ(案内型クエリ)での検索は、今後も今まで通りリスト化された検索結果が表示されるのでは、と考えています。
理由は、その方が検索ユーザーにとって労力が少なく、より良質な検索体験となるためです。わざわざ AI モードや AI Overview のような長々とした検索結果を読むより、手っ取り早くその会社・ブランドのサイトに行きたいですよね。
それに、Google は AI モードをリリースしたからといって、完全に AI モードの表示一本に絞ろうとしているわけではありません。「AI モードの良いところを統合していきたい」と発表しているので、そういった検索ユーザーのニーズはしっかり汲み取っていくと考えています。
ネットでの集客を重要視している会社は、今後「いかに自社名・自社ブランド名の認知度を上げていくか」がとても重要になってくると考えています。
先ほど触れた、インフォメーショナルクエリでのコンテンツマーケティングの「直接的な効果」、つまり検索された時にクリックされて自社サイトに来訪してもらえることは少なくなるかもしれません。
しかし、もし自社名が AI モードで取り上げられれば、自社名・自社ブランドの認知は進むため、間接的な効果は引き続きあると思います。
▼自社名・自社ブランド名の認知に欠かせない「指名検索」の記事はこちら
指名検索の対策法とは?現役マーケ担当者への調査で分かった3大課題の解決策も紹介|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング
マーケティングにおける「指名検索の対策」には、SEO(Search Engine Optimization)とリスティング広告の2つがあります。通常の検索面からのサイト集客を改善していくにはSEO、検索広告面の集客や状況の改善には検索連動型広告のアプローチが必要です。
また認知度を上げる方法は、検索に関わるものだけではありません。今後は SNS などでの露出やリアルの世界での露出など、今まで以上に全方位的にマーケティングをおこなう必要が出てくると考えられます。
キーワードマーケティングでも「検索創出型マーケティング(SCM)」という、第三者による客観的な情報発信によって自社名・自社ブランド名の認知を広げていくメニューを展開しています。もしご興味がありましたら以下のボタンよりご相談ください。
あくまで個人的な予想ではありますが、AI モードにも広告は表示されるようになると考えています。
そう推測する理由は以下の2つです。
まず第一に、Google は根っこは「広告」の会社だからです。そもそも検索連動型広告で現在の立ち位置を掴んできた会社のため、そこを捨てるとは考えにくいです。
Google は広告主とそのお客さまを繋げることを正義だと考えていると感じています。広告を媒介したコミュニケーションも含めて「検索体験」だと考えているのではないでしょうか。
また、Google はその商材ゆえに広告以外で売上を作っていくことが難しい企業でもあります。Gemini の利用料金をサブスクリプション形式で取ってはいますが、それだけで現在の売上を維持できるとは到底考えられません。
2つ目の理由として、Google は「データ」が最重要だと知っている企業だということが挙げられます。
仮に収益面の問題をクリアしたとしても、それだけでは十分なユーザーデータが集まりません。皆が知りたいものについては「Gemini」や AI モード、AI Overview だけで集められたとしても、広告主が売りたいもの、広告したいもののデータは取れなくなってしまいます。
こうした広告からしか得られないデータを集めるためにも、おそらく Google は AI モードにも広告を出していくでしょう。
AI モードにしても、AI Overview にしても、これからの検索ユーザーはもっとラフな意識で検索エンジンに向かい合うようになると思います。
今までであれば、「カフェラテが飲みたいな」と思ったら、頭の中でその願望を検索クエリ、例えば「カフェ 神保町」などに変換して、Google の検索窓に入力、という手順を踏む必要がありました。
しかし、すでに現在、音声入力で「カフェラテが飲みたい」と言うだけで、近くのカフェを提案してもらえる時代です。返ってくる結果にしても、リスト形式でいくつかのカフェのサイトを並べられる回答よりも、自分に最適と思われるカフェをさっと提案されるのですから、楽ですよね。
私は広告運用を長年やってきたこともあり、この「検索クエリを考える」という姿勢が身に染みついてしまっています。しかしこれからの時代、この「検索クエリを考える」というプロセスが不要どころか、弊害を引き起こすことすらあるかもしれません。
特に今まで Web マーケティング周りでプロとして働いてきた人ほど、頭を一度リセットし、まっさらな意識で「検索」に向き合い直す必要がありそうです。
広告運用 コンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業。2008年からキーワードマーケティングに在籍、 以降10年以上、広告運用に携わる。離脱率の低さに定評があり2008年から 運用を続けているクライアントも多い。趣味は音楽、楽器演奏。依頼を受けて プロのバックを務めることもある。愛知県犬山市出身。
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