広告運用に18年以上携わり、2008年からキーワードマーケティングに在籍している小島です。
広告運用の仕事でもよく発生する「調査」の仕事。例えば、「競合他社の調査をしておいて」と上司から依頼を受けたとき、あなたは頭の中で、以下のように考えると思います。
まず競合にどんな会社があるのかリストアップして、Google で調べてみよう。
そして、リストアップした競合の特徴をいつものフォーマットにまとめて、コメントを付けて報告書にまとめればよさそうだな。
今回のテーマである「Deep Research」は、この調査タスク開始から完了までの一連の流れを生成 AI がおこなう機能なのです。
この記事では「Deep Research は使ったことない」という方にも分かるよう、Deep Research とは何か、また通常の生成 AI の検索と何が違うのか、といった点を中心に解説します。
Deep Research は調査プランの立案から実際の調査、分析、報告レポート作成の全プロセスを、生成 AI が代わりに自動でおこなう機能です。ChatGPT や Perplexity などの生成 AI に搭載されており、「調査特化型の AI エージェント」と表されることもあります。
なお、この「AI エージェント」とは「何らかの複合的なタスクをあたかも人間がやるように生成 AI (LLM)が代理しておこなう機能」を指します。指示を受けた AI が、依頼者の代理人(エージェント)としてタスクを実行するのが特徴です。
現在、主要な生成 AI モデルのほとんどには Deep Research の機能が付いています。ここでは2025年5月現在、Deep Research 機能が使える5つの生成 AI モデルについて、それぞれの特徴や利用料などを紹介します。
サービス名 | 利用料金(プラン別) | 回数制限(プラン別) |
---|---|---|
ChatGPT |
(1ユーザーあたり) |
|
Gemini |
【個人向け】
【法人向け】 Google Workspace の各種プランを適用 |
非公開
※使用するモデルなどによる |
Perplexity |
※別途法人プランなどもあり |
|
Genspark |
※1日200クレジット付与 ※1ヶ月に10,000クレジット付与 ※1ヶ月に125,000クレジット付与 |
付与されたクレジット内であれば無制限 ※参考※ 軽めの Deep Research 1回で200クレジット程度消費 |
Claude |
その他、Max プランなどあり |
Pro、Max で使用可
※利用回数は容量により変化 |
このほか、Grok や Felo などにも Deep Research の機能が搭載されています。
これらの Deep Research は、いずれもなかなか優劣がつけられません。私は Chat GPT、Perplexity、Genspark の順によく使うのですが、「Perplexity が一番使いやすい」という人もいれば「Genspark の返答が一番分かりやすい」という方もいるでしょう。
そのため、これから Deep Research を使う方は、まず各ツールを実際に使ってみて、その中から自分にとって分かりやすい返答をしてくれるものを選ぶのがおすすめです。
Deep Research を利用した調査でユーザーがすることは、Deep Research を開いてプロンプト(生成 AI への指示)を書くだけです。
情報収集や分析はもちろん、調査を進める際に「どう進めるべきか」の計画立ても必要ありません。調査方法の考案から報告用レポートの作成まで、全て生成 AI が代わりに進めてくれます。
ここでは Chat GPT を例に、Deep Research の使い方を紹介します。
まずは Chat GPT を立ち上げ、チャット部分の「ツール」をクリックしましょう。
以下のようなメニューが展開されたら、「Deep Research を実行する」をクリックします。
以下のような画面に変化したら、Deep Research の準備完了です。あとはいつも通りチャット部分にプロンプトを打ち込んでエンターキーを押しましょう。
なお、プロンプトを打ち込んだ後に Deep Research から「調査内容はこの認識で間違いないか」や「この方針で調査を進めても問題ないか」を確認されることもあります。
この場合は内容を都度確認し、もし追加の指示が必要な場合は追加でコメントを入れましょう。
以下のように調査を始めるコメントが表示されたら、後はリサーチ完了まで待つだけです。リサーチ完了までは数分~数十分程度かかりますが、その間はページを離れていても問題ありません。
リサーチが完了したら、結果がデータソースと合わせて表示されます。
先ほど紹介した通り、ユーザー側からすれば Deep Research は「依頼して作業方針に OK を出したら、あとは調査を進めてくれる」存在です。では、その裏側ではどのように調査が進められているのでしょうか。
ここでは Deep Research の調査プロセスを「計画」「収集」「分析」「報告」の4つに分けて解説します。
ユーザーからのプロンプトを認識すると、Deep Research はまず調査の「計画」を立てます。
この「計画」はどういう手順で調査を進めるかをはじめ、どんな情報が必要か、そして最終的な成果物としてどんなものをアウトプットすればよいかを考えることも含みます。
なお、計画をたてる過程で Deep Research が「どのように調査を進めればよいだろう?」と疑問を抱く場合もあります。この場合には以下のように Deep Research からユーザーに質問するようなコメントが返されるのです。
「計画」が完成したら、それに基づいて Web サイト上から調査テーマに関する情報を収集します。
この「調査」では数多くの Web サイトはもちろん、ツールによってはユーザーがアップロードしたファイルや連携したアプリももとに、幅広い情報源を横断的に調べるのが特徴です。今回の「収集」でも14件の情報源(Web ページ)から情報を収集していたことが分かります。
次に調べた情報をもとに、必要な分析をおこないます。
今回の場合だと、調査したデータをもとに通常の AI 検索と Deep Research それぞれの特徴を読み取り、比較して、意見や特記事項を形成します。
今回のプロンプトの場合も、以下のようにさまざまなページの内容をもとに分析を進めていたようです。Chat GPT の独り言を覗き込んでいるようで、とても興味深いですね。
この思考プロセス(アクティビティ)は以下のような「Research completed in 5m· 14 件の情報源· 10 件の検索」の部分をクリックすると確認できます。
調査・分析が完了したら、最後にその内容を以下のような報告書にまとめて、依頼人のあなたに提示してくれます。
このように、人間であるあなたが調査タスクへの対応時に取る行動の全てを、Deep Research は「エージェント」として代行してくれるのです。
「Deep Research で何ができるかはわかったけれど・・・それって、いつも使っているチャット形式の検索じゃ駄目なの?」
ここまで記事を読んできた方の中には、こう感じる方もいるのではないでしょうか。
確かに、Chat GPT や Gemini 、Perplexity などにそのまま何か質問を投げた場合でも、似たような結果を返してくれます。特にプロンプトが比較的単純な場合は、Deep Research を使わなくても期待した回答が返ってくることが多いでしょう。
では、通常の生成 AI 検索と Deep Research の違いは何でしょうか。ここでは、これらのツールの違いとして「計画性」「調査の深さ」「返答の形式」の3つを取り上げ、解説します。
通常の生成 AI 検索を使うと、ユーザーが書いた質問に迅速に答えが返ってきますよね。一方、Deep Research では結果が返ってくるまでに数分から数十分、ときにはそれ以上かかります。
これは、Deep Research が調査依頼の内容を受けて、まず何を調べればよいか考察し、多段階的に調査を進めるべく計画を立てて調査・分析しているためです。
通常の生成 AI 検索では迅速に答えが返せる反面、そこまで計画的に結果を導き出しているわけではありません。同じくネット内の情報を検索しているとはいえ、「そこに計画性が伴っているか」が両者の違いとして挙げられるのです。
Deep Research と通常の生成 AI 検索の違いとして挙げられるものには「調査の深さ」もあります。
先ほども触れましたが、Deep Research では多段階的に調査を進めていきます。計画に沿って調査をおこなっていくのですが、調査の途中で調査すべき内容が増えても対応してくれます。
また、プロンプトの行間に隠れている意図すらも読み取ったような調査をする場合があります。まさに「エージェント」らしく、自律的に調査を進めていくのです。
対して、通常の生成 AI 検索では、まさに「検索して質問に答える」という行動がとられます。比較的検索に強いと言われる Perplexity でも、途中で検索する内容を増やしたり行間を深く読んだり・・・といったことはあまりしていないようです。
使用する生成 AI にもよりますが、Deep Research ではさまざまな報告のフォーマットを利用できます。
また、テキストによる回答だけを見た場合でも、通常の生成 AI 検索では箇条書きや短文など単純な形式になる場合が多いのに対し、Deep Research では箇条書きでのポイント提示はもちろんのこと、文章でしっかりと報告が出てくることが多いです。
このあたりも回答に対する満足度の違いとなって表れてきます。
以下は、通常の生成 AI 検索と Deep Research の両者に同じプロンプトを投げ、その回答を比較したものです。
生成 AI は Chat GPT(4o)を利用し、プロンプトは「通常の生成 AI での検索機能と Deep Research の違いについてまとめて」と設定しました。
▼通常の生成 AI 検索の調査結果
▼Deep Research の調査結果
このように、明らかに回答内容の長さと深さ、密度が違っています。通常の生成 AI 検索では文章が短く簡潔にまとまっている一方、Deep Research では文章が長めであるものの、一つ一つの内容が通常検索よりも詳細です。
また、通常の生成 AI 検索ではプロンプトを打ち込むとそのまま回答を作成し始めたのに対し、Deep Research は回答精度を高めるために、最初に投げたプロンプトに対して Chat GPT 側が追加で質問をしてきています。
先ほど紹介した Deep Research と通常の生成 AI 検索の違いをまとめると、以下の表のようになります。
比較項目 | Deep Research | 通常の生成 AI 検索 |
---|---|---|
プロンプト入力から
回答までの速さ |
数分から数十分 | 数秒(1分以内) |
複雑なタスクへの
対応力 |
高い |
Deep Research と比べると 低い |
特化していること |
|
質問へのすばやい回答 |
これを踏まえて、私は通常の生成 AI 検索の結果に満足できなかった場合に、Deep Research を使う場合が多いです。
というのも「知りたいことの要点を押さえた回答作成」という点で言えば、通常の生成 AI 検索でも十分に機能は果たせます。適切な指示(プロンプト)が組めれば、Deep Research を使うまでもなく、望むような調査結果を引き出せることもあるのです。
ですが、「適切な指示を出したはずなのに、通常の生成 AI 検索でうまく回答が引き出せない」ということもあるでしょう。そうした場合に Deep Research を使うことを私はオススメします。
また、生成 AI のチャット検索だけでは対応が難しい、複雑なタスクにも Deep Research はおすすめです。
例えば「東京駅近くのホテルを3つリストアップして教えて」といった質問は通常の生成 AI 検索、「東京駅近くのホテルを3つ挙げたうえで、それぞれ利用料金と東京駅からのアクセス、口コミを調査して表形式でまとめて」といった複雑な依頼は Deep Research、という風に使い分ける手もあります。
個人的な見解ですが、今後 Deep Research などの AI エージェントはますます普及していくと考えています。
そして、かつての Excel や Google 検索などのように皆使うのが当たり前だけれど、使う人の練度によって結果に大きな差がでるようになるのでは、とも。
最近の学生など「AI ネイティブ」の若者を見ていると、まるで私たちが検索エンジンを使うように、当たり前に AI エージェントを使っていると感じます。私は新しいものが好きで AI エージェントを使うことも多いですが、それでも調べものをする際はつい慣れ親しんだ Google 検索を使ってしまいます。そのたびに「ああ、私は検索ネイティブ世代なんだな」と感じるのです。
人を動かすような文章や画像、映像作品など感性が求められる分野は別として、調査レポートなど「感性が問われない」分野においては、正直 Deep Research を超えるような成果物を出せる人はそれほど多くないでしょう。
確かに AI 自体が抱えている課題は数多くあります。ですが好き嫌いは別として、少なくとも「便利なツールとして使うこと」ができるかできないかで、ビジネスでも日常生活でも大きく差が生まれてくるのではないでしょうか。
今、生成 AI 界隈では「AI エージェント」が主な話題となっています。
今回紹介した Deep Research 以外にも、AI エージェントには、必要に応じてユーザーの代わりに電話をかけ相手と会話するものも現れています。数年前には予測できなかった発展を続けるその様子は、まさに「変革」と呼んで然るべきでしょう。
広告運用者という立場上、生成 AI というと「これから SEO は必要なくなるのでは?」や「誰も検索エンジンなんて利用しなくなるのでは?」などの声をよく見かけます。ですが個人的には、生成 AI がもたらす「変革」はそんな次元の話では済まないと思っています。
もちろん、そんな「変革」が来ない可能性だってありますが、何かしらの準備はしておいた方がよいでしょう。来なければ来ないで「ああ、そんなのも流行ったねえ」で済むのですから。
それに、単純に「あまり知られていない新しいもの」について学ぶのって、ワクワクしませんか?
「変革」の有無にかかわらず、広告運用もマーケティングも、生成 AI さえ、そのあり方は諸行無常そのもの。過去の自分の経験に囚われる人生にだけは、したくないものです。
広告運用 コンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業。2008年からキーワードマーケティングに在籍、 以降10年以上、広告運用に携わる。離脱率の低さに定評があり2008年から 運用を続けているクライアントも多い。趣味は音楽、楽器演奏。依頼を受けて プロのバックを務めることもある。愛知県犬山市出身。
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