2022年6月に Google 検索広告で拡張テキスト広告の入稿が廃止され、新規入稿できる広告フォーマットは、レスポンシブ検索広告のみとなりました。Yahoo!検索広告でも、同年9月に拡大テキスト広告の新規入稿が廃止になり、検索広告のフォーマットはレスポンシブ検索広告に統一されました。
広告フォーマットが減って管理が楽になった反面、レスポンシブ検索広告は、拡張テキスト広告のように見出しごとのクリック数やコンバージョン数が確認できません。
良い成果が出た見出しや説明文の分析が難しく、以前よりキャンペーンや広告グループ全体の成果が下がってしまったという方も多いのではないでしょうか?
実際に筆者が運用している検索広告でも、2022年7月から10月の間、配信量や広告文の表示のされ方、コンバージョンのつき方が変化し、一時的に広告成果が下がってしまったアカウントがありました。
今回はそんな広告運用者のために、レスポンシブ検索広告の的確な分析方法と改善アイデアを紹介いたします。
レスポンシブ検索広告とは、事前に設定した複数の見出しと説明文から、機械学習によってユーザーに関連性が高いと判断された組み合わせを選び、表示させるフォーマットを指します。Google では Responsive Search Ads(RSA)、Yahoo! では、Responsive Ads for Search(RAS)と呼ばれています。
レスポンシブ検索広告は、見出しを最大15個、説明文を最大4個設定できます。広告が表示されるたびにこれらの見出しと説明文が自動で組み合わされて表示されます。
また、見出しや説明文はこれまでの成果や、検索語句などによってランダムに組み合わされて表示されますが、設定した見出しや説明文が表示される位置を固定する「固定設定機能」を使用すれば、広告表示をある程度コントロールできます。
レスポンシブ検索広告とは?メリットや基本設定、拡張テキスト広告の違いまでを解説
レスポンシブ検索広告とは「Google の検索広告で配信できる広告タイプの1つ」で、RSA(Responsive Search Ads)とも呼ばれます。もう1つの広告タイプとの違いや特徴をまとめ、効果的に活用できるような機能や広告文作成時に念頭においておきたい考え方を紹介します。
レスポンシブ検索広告は、使いこなすと便利な機能ですが、当然デメリットもあります。ここではメリットとデメリットを2つずつ紹介します。
レスポンシブ検索広告は見出しを最大15個、説明文を最大4個設定でき、その中から広告表示機会が発生する度に自動で組み合わされてユーザーに広告が表示されます。
見出しと広告の組み合わせは、ユーザーの検索語句、所在地やよく訪れる場所、または関心を示した地域、デバイスなどさまざまな要因で決まります。
以前まで作成可能だった拡張テキスト広告では、これらに合わせた広告を一つ一つ作らなくてはいけませんでした。しかし、レスポンシブ検索広告は1つの広告でさまざまなニーズに合わせて自動調整してくれるうえ、それらのテストまでおこなってくれます。
レスポンシブ検索広告では、機械学習が複数の見出しや説明文から、ユーザーごとに最適なものを選び出すので、オークションでの競争力が高まります。
そのため拡張テキスト広告では限られた訴求軸しか登録できず、とり逃していたクリック数やコンバージョンの獲得も見込めるため、広告パフォーマンスの改善も見込めます。
レスポンシブ検索広告は、自動で広告文が組み合わされるため、意図しない広告が表示される可能性があります。回避するためには、同じ意味合いの広告文を複数設定しないことや、絶対に表示させたい広告文には固定位置を設定するなどの対策が必要です。
レスポンシブ検索広告を配信したときに、管理画面で確認できるのは、広告文ごとの表示回数と多く表示された広告文同士の組み合わせのみです。そのため、広告文ごと、組み合わせごとのクリック数やコンバージョン数は確認できません。
表示回数と多く表示された広告文同士の組み合わせのみだけでは、成果の判断がしづらいため、分析には工夫が必要です。
レスポンシブ検索広告では、複数登録した見出しや説明文が自動で組み合わされて表示されます。そのため、より良い広告運用のためには表示回数が多い見出しや説明文、そのうちどれがクリックされやすいのか、またはコンバージョンされやすいのかという分析が必要です。
ここからは広告管理画面での確認方法や Google の Looker Studio を使った分析の方法を紹介します。
Google 広告の管理画面では、多く表示された見出しや説明文、実際に配信された組み合わせのパターンを確認できます。
Google 広告の管理画面で広告ごとの成果確認画面を表示したら、分析したいレスポンシブ検索広告の下部「アセットの詳細を表示」をクリックします。
「アセットの詳細を表示」をクリックすると、各見出しや説明文の表示回数と Google 広告が独自に評価したパフォーマンスが一覧で表示されます。右上の期間を変えれば、任意の期間中の表示回数を確認できます。
また、Google 広告のみの機能ですが、画面の左上の「組み合わせ」をクリックすると、期間中のレスポンシブ検索広告の組み合わせパターンを表示回数の多い順に確認できます。
レスポンシブ検索広告が意図しない組み合わせで表示されていないかも合わせて確認しておきましょう。
Yahoo!検索広告でも同様の手順で似たデータを確認できます。表示回数データと期間中のレスポンシブ検索広告のクリックやコンバージョンのデータを合わせて分析することで、クリックやコンバージョンに繋がりやすい見出しや説明文やそうでないもののおおよその検討をつけることができます。
Google 広告限定の方法ですが、Looker Studio を使用すると、レスポンシブ検索広告の見出し、説明文ごとのコンバージョン数を確認できます。
Looker Studio を使えば、表示回数が少ないものの、コンバージョンが多い見出しや説明文を見つけられます。それらの成果の良い見出しを固定設定したり、説明文の改善に役立てたりすることでさらなる成果の向上が見込めます。では、ここからは Looker Studio を用いた分析方法を説明していきます。
まずは、Looker Studio にログインし、「空のレポート」をクリックします。
遷移した画面で「Google 広告」をクリックします。
分析したいレスポンシブ検索広告が入っている広告アカウントを選択した後、右下の「追加」をクリックします。
白紙だったエリアに該当アカウントのデータが表示されたらデータの接続完了です。
次に、レスポンシブ検索広告の見出しや説明文のデータを表示します。表示する項目は、表をクリックして出てくる画面右側の「設定」で変更可能です。
ここで、「ディメンション」にはキャンペーンと広告グループ、Asset Type、Asset IDを、「指標」には表示回数とクリック数、費用、コンバージョンを追加します。最低限これらだけ設定しておくと良いでしょう。
ディメンションと指標を設定すると、以下のような表で各アセットの成果が一覧化されます。
各データが表示されたら、表にマウスを合わせると表示される三点リーダーから、「エクスポート」をクリックし、データをダウンロードしましょう。形式は、CSV でも Google スプレッドシートでも形式は何でも構いません。
ダウンロードしたファイルには、該当アカウントの全ての広告のデータが表示されているため、フィルタ機能を使って分析したいレスポンシブ検索広告が入っているキャンペーンや広告グループを絞り込みます。
絞り込んだら、Google 広告の管理画面に戻り、レスポンシブ検索広告の「アセットの詳細を表示」を確認します。表示される「アセット ID」がデータポータルでダウンロードしたデータの「Asset ID」と対応しています。
そして、広告管理画面の「アセットの詳細を表示」で出ているデータをダウンロードして、データポータルからダウンロードしたデータと合わせれば、レスポンシブ検索広告の見出し、説明文ごとのクリック数、コンバージョン数を確認できます。
注意したいことは、データポータルで確認できるコンバージョン数と広告管理画面で確認できるコンバージョン数には差異があることです。
例えば、見出し1~3に、登録した見出し A、見出し B、見出し C を含む広告がクリックされコンバージョンまで至ったとき、この1コンバージョンは、データポータル上では見出し A、見出し B、見出し Cにそれぞれ計上されます。そのためデータポータルで見るコンバージョン数の合計は実際のコンバージョン数より多くなります。
「アセット ID」が表示されなくても確認することができます。同じ広告アカウント内にファインド広告がある場合とない場合での方法を解説します。
同じ広告アカウント内にファインド広告がある場合、任意のファインド広告を選択します。
「アセットの詳細を表示」をクリックし、次の画面でメニューバーの「表示項目」をクリックします。
「属性」の項目から、「アセット ID」にチェックを入れ、「適用」をクリックします。
適用したら、アセット ID を確認したいレスポンシブ検索広告に戻り、「アセットの詳細を表示」をクリックすると、「アセット ID」を確認できます。
広告アカウントにファインド広告がない場合は、新規のファインド広告の配信設定をして上記の方法で確認するか、Google 広告の管理画面のアセット別の表示回数と、Looker Studio の表示回数を照らし合わせて同じアセットを見つけます。
同じ表示回数のものが同じアセットということになるので、それを基準に、アセット別のコンバージョン率やコンバージョン数、CPA を確認します。しかし、表示回数が同じものが複数ある場合は、判断できないのでこの方法が使えないことを留意しておきましょう。
レスポンシブ検索広告の見出しや説明文ごとの成果の確認方法と、正しく分析、評価する方法を紹介しました。次は、改善方法を解説します。もちろん改善策は、状況や商品・サービスによって変わるため、正解はありません。
これから紹介する6つの方法が、最適なレスポンシブ検索広告の改善の参考になれば幸いです。
成果の悪いアセットは削除し、無駄をなくすのがレスポンシブ検索広告の基本ですが、訴求内容のズレではなく、言い回しや言葉遣いが原因の場合もあります。そのため、ユーザーの年齢や性別、ライフステージに合った表現にすることで再利用できないかを考えてみましょう。
具体的には、Google 広告管理画面の「オーディエンス」から、広告が表示されているユーザーの属性データを確認し、狙っている層に表示されているか、またその層が使ったり、馴染みがあったりする言葉遣いや言い回しができているかを検討します。
また、訴求したいことが汎用的すぎると、ユーザーに響かずクリックしてもらえない可能性があります。そのため、具体性をもたせた広告文にできないかを考えてみると良いでしょう。
例えば「毎月の電気代がお得に!」という広告文だと、ニーズは捉えているかもしれませんが、具体性に欠けるので、クリックしてもらえないかもしれません。
それよりも具体的な数字をいれた「毎月の電気代が1,000円もお得に!」や、「基本料金0円なので、料金は使った分のみ!」などの方が、ユーザーの生活に入り込み、クリックしてもらえる確率はグッと上がります。
これらの方法は、削除したアセットだけでなく配信中のアセットの見直しとして使ってみるのも良いでしょう。定期的に一次情報や広告主のニーズを見直してみて、広告文を見返す時間を作ると良いかもしれません。
世の中の流れに合わせて訴求の視点を変えてみることも検討しましょう。ユーザーの需要は常に一定ではなく、社会情勢に合わせて変化します。時代の変化をキャッチアップし、世の中の流れにあわせた訴求の広告文を新たに追加するのも効果的です。
例えば、女性用ハンドクリームの広告を配信していたときに、男性からの需要もあることがわかったら、男性をターゲットにしたアセットの追加も検討しましょう。男性ユーザーのクリックも獲得できればユーザーの母数が増え、コンバージョンがさらに増えるかもしれません。
ユーザーのニーズは、広告運用中に変化に気づくものもあれば、社会情勢によって突然変わるものもあります。株価の変動や天災、政治家や著名人の発言で、大きく世の中の雰囲気が変わることもあります。広告運用者は常にアンテナを張っておく必要があります。
季節やキャンペーン、セールを訴求する広告文を追加するのも非常に効果的です。例えば、季節でラインナップが変わったり、使い方が変わるような商品の場合、その季節に合った訴求の広告文を追加するとクリック率が格段に良くなったりします。
下記は秋に繁忙期を迎える toC 向けの商材で、秋らしい季節訴求のある広告文とない広告文を同時に配信したときの結果です。表示回数とクリック数は、季節訴求のないものより劣りますが、クリック率は高くなりました。
広告文 | 表示回数 | クリック数 | クリック率 |
---|---|---|---|
季節訴求なし | 12,000 | 2,500 | 20.83% |
季節訴求あり | 7,800 | 1,850 | 23.72% |
季節訴求がある広告文の方がクリック率が高かったため、今では季節ごとにレスポンシブ検索広告を入れ替えるようにしています。
この季節訴求の広告文の作成方法は、一次情報の収集から始めます。季節特有のニーズ(課題や悩み)にどのようなものがあって、広告を配信する商材がどう解決できるのかを徹底的に洗い出してみましょう。
また期間限定のキャンペーンやセールの場合は、特に広告文に「限定」を入れると、途端に表示回数が増えることもあります。
レスポンシブ検索広告内に検索語句と関係のないアセットがある場合は、削除を検討してみましょう。最大15個の見出しと最大4個の説明文を登録できますが、闇雲に追加しても効果的な配信には繋がりません。
Google 広告の管理画面で確認できる「広告の有効性」は、アセットが多いほど高くなるため、できるだけ多く設定することが推奨されていますが、無駄なアセットを入稿して検索語句と全く関係のない見出しや説明文が表示されては本末転倒です。
レスポンシブ検索広告の配信には、見出し3つと説明文2つが必要です。そしてこれらを固定設定すれば、自分が意図した広告文でユーザーに届けることが出来ます。
弊社で運用している広告の中で、見出し3つと説明文2つだけを設定したレスポンシブ検索広告と、上限いっぱいまで設定したレスポンシブ検索広告を比べたところ、上記のようなレスポンシブ検索広告のコンバージョン単価が約10%ほどよかったというケースがあります。
もし表示されている見出しの組み合わせが、意図しないものになっている場合は、固定位置を設定しましょう。
そのためには、まず広告管理画面でアセットの組み合わせを見て、広告グループに設定したキーワードや検索語句と、実際に表示されている見出しの組み合わせが意図しないものになっていないかを確認します。もし意図しない組み合わせになっているようであれば、固定設定をして表示パターンを制限します。
Google では固定設定を推奨していません。配信当初は、意図しない広告表示が続くこともあるので、固定位置を臨機応変に設定していきましょう。
参考:レスポンシブ検索広告について │ Google 広告ヘルプ
機械的に生成された組み合わせの広告は、日本語が成立せずにユーザーが理解できないものになってしまう可能性があります。そのような広告文は、コンバージョンに繋がるとは考えにくく、そもそもクリックすらされないかもしれません。
推奨事項を全て鵜呑みにせずに、ユーザーがクリックしてくれるだけの納得感のある広告文が作れているかを意識して設定をおこないましょう。
固定位置を設定しすぎて、表示回数が一気に減ってしまうこともあります。弊社で運用しているアカウントでは、固定位置の設定をしている広告と、していない広告では、桁が違うほど表示回数に差が出たこともありました。
配信量やコンバージョン数の増加が目の前の目的であれば、固定設定をできるだけ解除してみましょう。
数値分析をもとにしたものから定性的なものまで、さまざまなレスポンシブ検索広告の分析と改善方法について紹介しました。
機械学習や自動運用など技術の発展がすさまじい広告運用業界ですが、今一度覚えておきたいことは「広告は人が見るもの」だということです。決してコンピューターがクリックやコンバージョンしているわけではありません。
「良い改善施策は良い分析から」に間違いはありませんが、最後はユーザーに刺さる表現ができるかという感覚も必要になります。言葉選びや作文、コピー作成センスも忘れずに磨きましょう。
広告運用 コンサルタント
2021年9月に中途入社。2019年からWebマーケティング業界に携わり、toB/toC問わず様々なサービス、商材の広告運用を担当。好きな広告媒体はGoogle広告。趣味は映画鑑賞、お笑い、深夜ラジオ。映画のサブスクを契約しすぎている。
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