マーケティング

KBF(購買決定要因)とは?決め方やKSFとの違い、Web 広告での活用方法

マーケティング活動において、ユーザーが購買を決意するにはどんな情報が必要か理解できていますか。自社の顧客や、将来的に顧客になるであろう人が、何を決め手に商品やサービスを選んでいるかを知ることは、販促戦略の考案や、新規商品の開発、既存商品のブラッシュアップなど、さまざまな場面で必須です。

今回はマーケティング分野の中でよく使われる略語の1つ「KBF」について解説します。KBF はユーザーが商品サービスを購入する際に重視する要因のことで、ユーザーに購入や問合せなどのアクションを促すうえで重要な考え方です。

この記事では、「KBF」の意味や重要性を解説し、KBF の考え方、活用できるシーンの具体例を紹介します。マーケティング分野では避けては通れない必須知識ですので、しっかりと理解しておきましょう。

KBF とは

KBF(Key Buying Factor:購買決定要因)は、顧客が商品やサービスを購入する際に重視する要素のことを意味します。

洗濯機の場合は、「値段」や「サイズ」、「機能」、「洗浄力」、「音の大きさ」、「電気代・水道代」などが KBF として考えられます。

KSF との違い

KBF と類似する用語に「KSF」があります。KSF(Key Success Factors:重要成功要因)は、事業を成功させるための重要な要素のことを意味します。

例えば家電メーカーの場合、「低コストでの生産体制」や「販売ルートの確保」などが KSF として考えられます。KBF が顧客・消費者の視点で定義される要素であるのに対し、KSF は事業者・生産者の目線で定義する要素という違いがあります。

マーケティングにおける KBF の重要性

自社がターゲットとしているユーザーの KBF を把握するのは、マーケティング戦略において重要です。KBF を把握することで、競合に対する自社の強みが明確になり、競合と戦うための戦略が立てやすくなります

また、商品の売り場やホームページ、商談などの場面で、商品やサービスのどの要素を強くアピールするべきかが明確になります。

女性向けシューズのマーケティングを例に挙げて、KBF の重要性を説明します。KBF を把握しないまま、「靴のデザイン性」という要素を打ち出してマーケティングをおこなっても、なかなか売り上げが伸びないことがあります。

理由の1つとして考えられるのは、競合と差別化できていないことです。「靴のデザイン性」も KBF の1つになりえますが、多数の競合もデザイン性に強みを持って打ち出している場合、競合達に勝っていくのは簡単なことではありません。

もう1つ考えられる理由は、ターゲットユーザーの KBF と打ち出している要素がずれていることです。女性向けシューズのターゲットユーザーの KBF として考えられるものは、デザイン性の他に「値段」と「軽さ」、「サイズ展開」、「ブランド」、「機能(防臭・靴擦れ防止など)」などがあります。

デザイン性が優れていても、価格が高すぎたり、自分の足に合うサイズがなかったりすると、購入には至りません。しかし KBF を事前に把握しておけば、競合やユーザーに対して適切なマーケティング戦略が立てられます。

例えば、競合を意識したときに「靴のデザイン性」は KBF ではあるものの、この要素だけで戦っていくのは難しいので、他の競合が打ち出していない別の KBF と組み合わせて販促しようと判断ができます。

またユーザーに対しては、売り場や Web サイトで、デザイン性以外にも値引きセールやお買い得なクーポン情報、サイズ展開の豊富さなどをアピールすることでより購入を促せます。

このように、競合に対して効果的な戦い方を考えたり、ユーザーに対してより魅力的なアピールができるので、KBF の把握はマーケティングを成功させるうえで重要です。

KBF の決め方

KBF は商品やサービスやターゲットによって異なります。ターゲットにしているユーザーを明確にし、「求めているものは何か」、「重視している要素は何か」を調査することで KBF が見えてきます。2段階に分けて KBF を決定しましょう。

  1. STP 分析でターゲットユーザーを明確にする
  2. ターゲットユーザーを調査する

1. STP 分析でターゲットユーザーを明確にする

まずは STP 分析のフレームワークを使って、商品やサービスのターゲットユーザーを明確にしましょう。

STP 分析とは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字を取った分析のフレームワークのことです。今回はターゲットユーザーの把握が目的なので、セグメンテーションとターゲティングをメインに取り上げて説明します。

1-1. セグメンテーション

まずセグメンテーションをおこないます。セグメンテーションとは、市場(マーケット)にいるさまざまな顧客および見込み顧客を任意の切り口で分類してセグメント(グループ)を作ることです。

切り口としてよく用いられるのは、年齢や性別、住んでいる地域、職業、家族構成、趣味嗜好、経験、知識、行動習慣などの切り口が適切かどうかの判断は、セグメントによってニーズが変わるかどうかで判断します。

よくある勘違いとして、ニーズをセグメントと混同してしまうケースがあります。例えば、洗濯機の購入を考えるとき、性別や家族構成(単身や子供あり家族など)によってニーズは変わると思います。

セグメント考えられるニーズ
性別(男性)・シャツのしわをなくしたい
・乾燥機付きでボタン1つ押すだけの全自動で済ませたい
性別(女性)・ブラウスやワンピースなどのおしゃれ着洗い機能がほしい
・洗濯後の取り出しやすいように「からみほぐし」機能がほしい
家族構成(単身)・小さめのサイズ
家族構成(子供あり家族)・一気に多くの洗濯物を洗いたい(大容量)
・頑固な汚れも確実に落としたい
洗濯機の購入を考えているセグメントとニーズ

このように、自社の商材・業界において有効なセグメンテーションをできる限り挙げていきます。切り分けた属性の1つを「セグメント」と呼びます。

1-2. ターゲティング

次にターゲティングをおこないます。ターゲティングとは、複数あるセグメントのうち、どのセグメントを狙うのかを明確に決めることです。

セグメントは切り口によって通常何十個もできるので、全てを網羅しようとすると商品コンセプトがあいまいになってしまったり、マーケティング予算が膨大になってしまうといった課題の原因になります。

例えば、アパレル市場には幅広い層のユーザーがいますが、全ての年代と性別に向けた商品を用意しようとすると膨大な予算が必要になります。ターゲティングで年齢層、性別(例:20代~30代の女性)を指定すれば、限られた予算を効果的に使えます。

男性女性
10代セグメント1セグメント7
20代セグメント2セグメント8
30代セグメント3セグメント9
40代セグメント4セグメント10
50代セグメント5セグメント11
60代セグメント6セグメント12
アパレル市場のセグメンテーション例

2. ターゲットユーザーを調査する

ターゲットが明確になったら、その属性のユーザーが何を求めているか、何を重視しているか、商品やサービスを購入したときに何が決め手となったかを調査します。

具体的には自社の顧客にインタビューしたり、競合の「お客様の声」を分析したり、口コミサイトや Q&A サイトでターゲットユーザーの投稿内容を集めて、購入の決め手となっている要素をまとめます。情報収集の経路が1か所だけだと偏った情報になってしまうので、複数の経路から幅広く情報収集することを心がけましょう。

しかし顧客インタビューは工数が掛かるので、まずは手軽に始められるアンケート調査や、Q&A サイトで情報を集めるのがおすすめです。

セグメンテーションし、ターゲットユーザーの調査をおこなって得た「購入の決め手」が KBF となります。KBF は一人一人変わることもあるので、ターゲット(1つのセグメント)の中には複数の KBF が存在するのが一般的です。なるべく多くの KBF を収集し、KBF が網羅されている状態を目指しましょう。

KBF の例

全ての業界や商材に共通して KBF になりやすい要素は以下のようなものが挙げられます。KBF を決めるときの参考にしてみてください。

  • 価格
  • 性能・機能
  • サービス内容
  • レビュー・口コミ
  • 実績
  • 場所・立地
  • 対応時間
  • 納期、対応スピード

さらに宿泊や観光であれば空席・空き室情報、求人や不動産であれば掲載情報の数や内容など、各ビジネスモデルに特有の KBF もあります。

業界KBF の例
宿泊・観光空席・空き室情報、予約方法、設備
求人・不動産掲載情報の数、掲載情報の内容
食品安全性、ビジュアル
アパレル今年の流行、ブランド
セミナー・講座講師情報、参加方法(オンライン/オフライン)
業界特有の KBF の例

Web 広告で KBF を活用する方法

KBF 活用の一例として、Web 広告における活用すべきシーンを紹介します。KBF を把握することで、より質が良く効果の見込める広告運用ができるようになるので、効果的に活用できるようにしておきましょう。

広告文作成

まず、成果が出る広告文を作るためには、ターゲットの KBF をおさえておくことが重要です。

ユーザーをサイトに呼び込む時点で KBF の情報が不足していると、訴求力が弱くなり、広告をクリックされる確率が下がってしまいます。また、広告をクリックしてサイトに訪問したものの、ユーザーが期待していた商品ではなかったなど期待値のずれが起こり、コンバージョン率が下がる原因にもなります。

例えば、検索広告で自社の広告見出しが「〇〇歯科/インプラントや矯正」、競合の広告見出しが「××歯科/〇〇駅から徒歩2分」だったとします。

自社の広告見出しには、KBF の場所の情報が不足しています。検索ユーザーにとっては、「〇〇駅から徒歩2分」と位置情報が明確なほうが来院イメージができるので、競合の広告のほうがクリック率が高くなるでしょう。

検索広告で場所の情報を明確にしたイメージ

また、もしユーザーが自社の広告をクリックしたとしても、自宅から遠く、通える場所ではなかった場合は、コンバージョンに至らず無駄な広告費になってしまいます。

広告文に KBF を記載しておくことで、ターゲットではない(コンバージョン見込みのない)ユーザーからのクリックを防ぎ、コンバージョン率を高く維持するという効果も期待できます。

特に検索広告では、競合と同時に広告が表示され、常に比較される環境なので、ユーザーから選ばれる広告文を作るためにも、KBF を網羅しておくことが成果を出すカギになります。検索広告は半角30文字の見出しを15個まで、半角90文字の説明文を4個まで登録できるので、この文字数の中で KBF を網羅できるように広告文を作成しましょう。

ランディングページの改善

広告をクリックした先のランディングページでも、KBF をもれなく伝えることがパフォーマンスに大きく影響します。せっかく広告をクリックしてページに来てくれても、そのユーザーにとっても KBF の情報がなかったり、不明確であれば当然コンバージョンには至りません。

例えばオーダーメイドのスーツの商材では、オーダーしたスーツを着たいタイミングが決まっていることが多いので、納期が KBF の1つになります。

ユーザーが結婚式に着ていくスーツをオーダーメイドしてくれる店を探している場合、価格や商品がいくら魅力的でも「結婚式に間に合うか」がわからなければコンバージョンしてくれないでしょう。

また、「納期はお問い合わせください」など不明確な表記も、ユーザーにとって不親切なのでおすすめできません。具体的な数値を提示できない場合(条件によって変動する場合など)でも、「3週間〜4週間」など幅を持たせて目安を記載するなどの工夫で、できるだけ具体的にすることを意識する必要があります。KBF の情報を明確にすることがコンバージョン率の上昇につながります。

改めて、自社のランディングページに KBF が網羅されているか、不明確で不親切な書き方になっていないかを見直してみましょう。不足している KBF が追加されるだけで、コンバージョン率が大きく良化することもあります。

広告施策の考案

新規で広告施策を考えるときにも KBF が役に立ちます。自社の KBF を分析して、競合より優れている部分を明確にすることで、どんな戦略を打っていくべきかのヒントになります。

会計ソフトなど BtoB 向けツールの商材を例に説明します。自社の KBF を分析して、ツールの機能や価格と同じくらい、アフターサポートの内容やサポートスタッフの対応の丁寧さが KBF になっているという結果が出たとします。

手厚いサポートや丁寧さを広告でより具体的に伝えるために、今まで活用していなかった動画クリエイティブを使って、実際のスタッフの対応内容を訴求するという新しい施策に取り組みました。このように、KBF の分析をすることで新しい戦略を考えるきっかけになります。

活用すべきシーンで KBF の考え方を使えるようになろう

KBF は、効果の出る広告運用をするうえでとても重要な考え方です。KBF を把握しているかどうかで、広告のクオリティや施策の精度が大きく変わるので、新しい商材の広告運用を始める前には、必ず確認するようにしましょう。

また、KBF は時代や社会情勢に合わせて変わることもあります。例えば飲食店では、近年食べログなどのレビューサイトや Google マップのクチコミ投稿機能が普及し、来店した人の評価が簡単に調べられるようになったことで、「来店した人のレビュー」が KBF として影響力の強い要素になってきました。

このような市場の変化をつかむためにも定期的にターゲットユーザーの調査をおこない、KBF をアップデートするようにしましょう。

お困りごとはまずはご相談ください。広告に限らず、認知やPRなど幅広い施策提案が可能です。

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記事を書いた人

志村
志村

広告事業部 マネージャー

2015年4月に新卒として入社。2019年にマネージャーに昇格。広告運用の仕事をメインに、現在はサイト改善提案やブログ執筆にも力を入れている。数値をもとにしたサイト改善提案が得意。趣味は動画を見ること、ゲームをすること。

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