ユーザーを動かすクリエイティブには、自社の特徴や強みだけではなく、悩みや期待に応えるメッセージが大切です。そのメッセージは、お客様の声である「一次情報」を活用して作成できます。
今回は、クリエイティブ作成における一次情報の重要性と集め方、一次情報を活用したクリエイティブ作成の手順を解説します。
※本記事は、2024年2月21日(水)に開催したセミナー「お客様の声を活用しないなんてもったいない! 一次情報から考えるクリエイティブ作成とは」の内容を、読みやすく文章化したものです。
目次
広告クリエイティブ作成で重要になるのは、顧客と準顧客の一次情報です。今回は、「顧客」と「準顧客」をそれぞれ以下のように定義して話を進めていきます。
顧客=自社の商品、サービスを購入したユーザー
準顧客=購入を検討している段階のユーザー(検討したが結果的に買わなかったユーザーも含む)
顧客の一次情報とは、「顧客が商品やサービスの購入や使用を通して得た情報」です。例として、以下のようなものが挙げられます。
実際に、一次情報からクリエイティブを作成し成果が改善した事例を2つご紹介します。
この事例では、サービス利用者の声を利用しました。
利用者の声を分析したところ、「見積もりサービスを利用した結果、もともと考えていた金額より安くなって嬉しい」というコメントが多く見られました。
そこで、「利用した方の○%が安くなった」という趣旨の広告見出しを追加すると、クリック率は6.1%、コンバージョン率は7.1%プラスになり、さらに最終的な CPA は21.3%良化しました。
他の広告見出しと比べて表示回数が2倍以上になったことから、媒体側からも「品質の高い見出し」と判断されたことが分かります。
この事例で利用した一次情報は、運用担当者が参加した講座参加者の懇親会でのコメントです。
実際のスクール生徒から話を伺ったところ、「最終的には、先生の顔で受講を決めた」というコメントが多く見られました。
そこで、ランディングページ内やディスプレイ広告画像に講師の顔がはっきりとわかる写真を追加したところ、コンバージョン数が2倍になりました。
こちらの事例については、詳細は弊社のブログでも公開しているので、あわせてご覧ください。
▼この事例の詳細な情報はこちらから
40名のコンバージョンユーザーに話を聞き、コンバージョン率を良化させた話|キーマケのブログ
コンバージョンユーザーに直接会って話を聞くことで、アンケートでは得られない一次情報を得ることができます。実際に直接聞いた情報をランディングページに反映し、コンバージョン数が2倍となった事例を紹介しています。
ユーザーを動かすクリエイティブには、自社の特徴や強みだけではなく、悩みや期待に応えるメッセージが大切です。
今回は架空の Web 広告の運用代行サービスを例に、よくあるクリエイティブ作成の失敗例と一次情報を使った改善例を紹介します。
Web 広告の運用代行では「運用をアウトソースして自社工数を減らすこと」と「目標成果の達成」がニーズだと想定。訴求できる強みとして「運用歴10年以上の運用者が在籍」「分かりやすく納得感のある提案ができる」という点をアピールしました。
しかし、想定したニーズと実際に顧客が思っているニーズとがずれているようで、どうやら顧客にはあまり響いていないようです。
このように、自分が想定するニーズと実際の顧客のニーズがずれてしまうことは、よくあります。
そこで顧客にヒアリングをおこない、一次情報からユーザーの悩みや期待を洗い出したところ、以下のような課題が見えてきました。
・担当者によって運用力にばらつきがあって成果が安定しない
・担当者からのレスが遅くて月1回しかコミュニケーションが取れない
この悩みに応える訴求を考えた結果、「成果が安定しない」という一次情報に対して「全運用者が高い品質で運用できるので、担当者が変わったとしても安定した成果を出せる」といった訴求ができました。
また、「コミュニケーションが取れない」という一次情報に対しては「ご連絡には1日以内に返信できるのでコミュニケーション不足には陥りません」という訴求ができました。
ニーズに対して仮説を持つのは大事です。しかし仮説を仮説のままにせず、一次情報を確認して、実際のニーズに合っているのかを確認しましょう。
一次情報は、主にこの3つの情報源から得ることが多いです。
1つ目と2つ目の情報源からは、「購入の決め手」や「購入しなかった理由」あるいは「使用して良かった点」や「改善してほしいポイント」などの一次情報を得ることができます。
3つ目の情報源は、お問い合わせでよく質問されることを指します。例えば、サイトの問い合わせフォームから来る内容や電話などで質問される内容です。
このように、お客様の声や問い合わせを分析すると、ユーザーが感じた不安や不満、疑問といった一次情報を得られます。
こうして得た一次情報の中で、クリエイティブ作成時に利用するのは、主にこの3点です。
この3つを見れば、これから商品を買う人が悩んでいることや、商品に期待していることが分かります。これらに的確に応えるメッセージを考えることが、ユーザーを動かすクリエイティブに繋がります。
ここからは、一次情報を活用したクリエイティブの作り方をご紹介します。
キーワードマーケティングでは、5つの手順に沿ってクリエイティブ作成をしていきます。
ここからは、ハンバーガー店の広告を例に挙げて、これらの手順を紹介します。
最初に、セグメント分けとターゲティングをおこなって広告の設計書を作成します。セグメント分けは、市場を定義した後で、そのサービスを利用しうる人々の属性や状態を整理することです。
今回は市場を「昼食にハンバーガーを食べたい人」に定義しました。
次に、市場をセグメントに分割していきます。以下の図のように、性別や年齢、職業、注文方法のように、さまざまな属性で分割していきます。
このセグメントから、自社が広告で狙うべき属性をターゲティングします。
今回は、「30代の男性でビジネスパーソン、Uber Eats でハンバーガーを注文している人」に向けた広告を作ることにしました。
次に、ターゲットのニーズの定義です。ターゲットが「どのような不安や不満を解消するために商品を買うのか」あるいは「どのような期待でその商品を買うのか」を考えていくのですが、ここが一次情報の出番となります。
一次情報の分析は、ターゲットの不安や不満、期待の正確な把握に繋がります。
今回は、一次情報としてターゲットと同じ属性のユーザーへのアンケートがある場合を考えてみましょう。
「フードデリバリーでどんな食品をよく買っていますか?」というアンケートを取ったところ、以下のようなユーザーの意見が出てきました。
・サラダボウルなど、野菜不足を解消できる料理
・自分で行くには遠くて面倒だけど、好きな店の料理
・有名店の料理、話題になっている料理
・季節を感じられる料理、今だと夏っぽい辛いもの
このコメントの中から、顧客ニーズを洗い出していきます。青字の部分が今回の顧客ニーズです。
・サラダボウルなど、野菜不足を解消できる料理
・自分で行くには遠くて面倒だけど、好きな店の料理
・有名店の料理、話題になっている料理
・季節を感じられる料理、今だと夏っぽい辛いもの
顧客ニーズの洗い出しでは、一次情報をなるべく抽象化せず、そのままの要望や表現でまとめましょう。
抽象化すると、自分の解釈や要約が入ってしまい厳密な一次情報から離れていってしまうので、以下のようになるべくそのままの表現を使いましょう。
◎ 適切な洗い出し:野菜不足を解消
△ いまいちな洗い出し:野菜をたくさん食べたい
顧客のニーズを定義できたら、次はニーズに対する回答を作りましょう。
先ほど設定した4つのニーズに対して、以下の表のように自社の商品サービスが応えられる回答を考えていきます。
顧客ニーズ | 顧客ニーズに対する回答 |
---|---|
野菜不足を解消したい | お得なサラダセットを提案 |
遠くて面倒だけど、好きな店の料理を食べたい | リピーターや自宅から遠いなどで来店を面倒だと 思っていた人に、デリバリーサービスを訴求 |
夏っぽい辛いものが食べたい | 辛味のある商品を提案 |
「有名店の料理や話題になっている料理が食べたい」というニーズは、そもそも自社の商品が話題や有名でないといけません。今回の広告ではハードルが高いと判断し、回答するニーズからは外しました。
このように整理すると、それぞれのニーズに対するクリエイティブが全く違うものになりそうだと分かるかと思います。
特定のターゲットであっても、異なるニーズを持ったさまざまなユーザーがいるものです。こうしたユーザーのニーズの違いが、クリエイティブのパターンを増やすことに関わってきます。
結果的に、これらの違いが「高確率でコンバージョンを獲得できるクリエイティブがたくさんできる」ことに繋がるのです。
ニーズへの回答を訴求メッセージに変換したり、それに適した画像を用意したりしましょう。訴求メッセージを作る順番は、キャッチコピーからでも、広告文となる短い文章からでも問題ありません。
例えば「夏っぽい辛いものが食べたい」というニーズに対応するクリエイティブを作成すると、以下のようになります。
訴求メッセージと画像を反映すれば、広告クリエイティブは完成です。以下は Meta 広告のフォーマットでクリエイティブを作成した例です。
最後に、セミナー開催時に参加者からいただいた質問と、それに対する回答を紹介します。(質問、回答はいずれも読みやすいように編集しています。)
一次情報で得た声を、リスティング広告の広告文に使う際に注意していることはありますか?
検索語句とマッチしないため、品質スコアが上がらない可能性はありませんか?
注意しているのは「具体的な表現に変える」という点です。
例えば先ほどの一括見積もりサービスの事例では、一次情報は「もともと考えていた金額より安くなって嬉しい」ですが、見出しで「安くなります」と言うだけでは抽象度が高く訴求としては弱くなってしまいます。
「利用した方の〇%が〇円安くなった」と具体的な数値にすることで、ユーザーがより具体的にイメージできるので、訴求力が強くなります。
また品質スコアについては、検索語句と見出しが一致しなくても、工夫することで一定の品質スコアが見込めます。
例えば、「洗濯機 最安値」という検索語句に対して「洗濯機 19,800円~」という見出しを設定する、などが考えられます。
「最安値」と検索するユーザーのニーズは、大枠で見ると「安い洗濯機が買いたい」なので、ユーザーが安いと思う金額を提示できればクリック率は高くなり、一定の品質スコアが見込めます。
広告見出しは最大15文字と短いですが、この中に一次情報をうまく入れるコツはありますか?
まず訴求したい内容を文字数を考えずに文章化して、その中から15文字に収めるために省略できる部分を削ったり言い換えたりしていくといいですよ。
広告見出し以下の説明文を使うのも有効です。説明文で見出しの情報を補足する形式でも、情報は十分に伝えられます。
ターゲットは何パターンか考慮して同時に検証するのでしょうか?
それとも一つのターゲットに狙いを定めて広告配信するのでしょうか?
ターゲットは1つに絞って配信することが多いです。ターゲットが複数になるとクリエイティブの数が膨大になり、検証が困難になるためです。
1つのターゲットに対して複数のクリエイティブを検証して、勝ちクリエイティブがある程度確定したら次のターゲットで検証して・・・という手順で進めます。
ただ、広告予算がたくさんあり、クリエイティブの数が多くても問題なく検証できる場合や、ターゲットの検証をしたい場合(どちらのターゲットのほうが成果が出るかをテストする場合)などは、何パターンかのターゲットを同時に検証することもあります。
顧客の情報などを得られない場合、Google マップの口コミなどをクリエイティブに反映させますか?
ほかにも、ネット上で一次情報を得られる媒体などありますか?
一次情報を得られない場合、1.5次情報として、Google マップの口コミや口コミサイトから得られる情報を使います。競合商材のお客様の声や口コミなどを参考にする場合もあります。
他には、X(旧 Twitter)や Yahoo! 知恵袋で、準顧客の一次情報として「顧客になっていないが購入を検討しているユーザー」の「購入を検討しているけれども、こういう不安がある」という投稿から情報収集することもあります。
成果に繋がるクリエイティブで重要なのは、一次情報からニーズを洗い出し、ターゲットの不安や不満、期待をより正確に把握する工程です。
ぜひ一次情報を活用したクリエイティブ作成に取り組んでみてください。
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2015年4月に新卒として入社。2019年にマネージャーに昇格。広告運用の仕事をメインに、現在はサイト改善提案やブログ執筆にも力を入れている。数値をもとにしたサイト改善提案が得意。趣味は動画を見ること、ゲームをすること。
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