マーケティング

不況時に起こる「消費のスライド」とは。事業者が「今」取り組むべき3つのアクション

滝井です。

新型コロナウィルス(COVID-19)の影響からイベントや外出の自粛、株価下落、景気停滞ムードがありますよね。

まだ先行きは不安定で不確実ではありますが、12年前のリーマンショックから比較的順調な景気動向だったため、今回の新型コロナウィルスによって不況になるのではないかといわれています。

私たちは「不況」という言葉を聞くと、とにかく不安を感じてしまいがちですよね。ところが、実は不況という条件下の方が、需要が増すビジネスが多くあることはあまり知られていません。

景気の変化によって消費がなくなるわけではなく、消費が別の方向へ移り変わり、それがビジネスチャンス(機会)となる「消費のスライド」が起こるためです。

佐藤昌弘さん著の『不況の歩き方』によれば、「消費のスライド」という言葉の定義は下記の通りです。

景気の境目でいままであった消費傾向がなくなる一方、新しい消費の方向へ新しい需要が生まれること。

これを予測し対応することで、不況下でも逞しくビジネスを成長させることが可能なのです。

実際に “消費がスライドした” 事例

今回の新型コロナウイルスに関連して、人々の生活や働き方が大きく変化し、売上げが落ち込んだ産業がある一方で、マスクやトイレットペーパーといった製品以外にも、消費のスライドが発生し需要が増えた商品やサービスがあります。

1. パスタやパスタソース、冷凍食品などの売上が10倍に

小中学校が一律休校となったため、いつもであれば給食を食べていた子どもにご飯を作なければいけない家庭が世の中に急増しました。

手の込んだ食事を毎回作るわけもいかないので、保存ができて比較的短時間で調理できるパスタなどの麺類やパスタソース、冷凍食品などへ、大きく消費がスライドしました。冷凍食品の売上が10倍にもなったネットショップもあるといいます。

マスクだけじゃない……新型コロナ ネットで5倍、10倍売れている「意外なもの」たち | 文春オンライン

新型コロナウイルスの影響で、私たちの生活スタイルは大きく変わってしまった。時差通勤やリモートワークで仕事のやり方が変わり、イベントの中止や観光施設の休園、小中高の一斉休校により、自宅で待機する人が急激…

また、不況時によくある心理として「一時的に生活のグレードを落とす」という動きが起こっているのではないかと考えられます。人々は先行きに不安を感じ、外食などは当然減ります。

全国一斉に行われた小中学校の休校による影響もあるかと思います。現在の小中学生の生徒数は1千万人程度ですが、その家族まで含めれば数千万人以上にもなります。これだけの人口の食生活が変化すると、消費も大きくスライドするわけですね。

2.「巣ごもり需要」の拡大

新型コロナウィルスによって、イベントや外出の自粛要請があり「巣ごもり需要」が発生しました。

自宅にいる時間が多くなり、通販ビジネスへ消費がスライドするのです。「家庭内消費ビジネス」とも言える、EC や通販事業にとっては大きな機会となりました。

『不況の歩き方』にもありますが、通販はもともと品ぞろえが豊富なところから「ついつい買ってしまう心理」になりがちです。Amazon への需要の急増があったのも頷けます。

Amazon、10万人を追加採用へ 新型コロナで需要増  :日本経済新聞

【シリコンバレー=白石武志】米アマゾン・ドット・コムは16日、米国内の物流拠点や小売店で新たに10万人を雇用すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため連邦政府や地方政府が住民らに外出を

中国でも、配達ビジネスが新型コロナウイルスを機に大きく躍進しました。

もともとフードデリバリーやスーパーでの購入品を配送してくれるサービスなどの配達ビジネスは日本よりも一般的になっていましたが、新型コロナウィルスの流行を機にさらに利用されるようになりました。

生鮮ECサイト「毎日優鮮(MISS FRESH)」では、1月24日から30日の注文数は前年同期比309%、また実取引額も同465%を達成したそうです。

WeChatのミニプログラムが思わぬ大躍進 新型肺炎で成長のターニングポイントになるか | 36Kr Japan | 中国No.1スタートアップメディア日本版

どの業界も新型肺炎をめぐる大きな試練にさらされているが、こうした中WeChat(微信)のミニプログラムが春節以降に急成長している。行政、医療、教育業界の肺炎発生状況サービスにまつわるミニプログラムの件数や娯楽系ミニプログラムのユーザーアクティブ数、さらには配達系ミニプログラムの取引件数が大きく増加している。
WeCha

日本でも同じような動きが起こっていることは間違いありません。

基本的にネット通販や配達ビジネスは、不況や今回の新型コロナウィルスのような災害に強いといえるでしょう。

3. オンラインサービスの急拡大

在宅ワークが一気に増えたことで、オンラインでのコミュニケーションサービスへ消費がスライドしました。

Zoom はネット TV 会議クラウドサービスですが、今回の騒動で一気に知名度も利用者数も増えたようです。

「オンライン通話で」とか「TV 会議で」とかではなく「Zoom で会話しよう」というように、もやはサービス名が一般名詞化しているのは強みですね。

Google トレンドでも、検索キーワード「Zoom」は2月後半から急上昇しています。

鋭角に落ち込んでいる箇所は土日ですのでいかにビジネス場で多く利用されているかがよくわかりますね。

株価の評価もうなぎのぼりとなりました。2月上旬から上昇してたものの、3月中旬からはさらに急上昇しています。まさに消費のスライドが起こっているといえるでしょう。

また、Netflix や YouTube などの自宅で閲覧するオンライン動画サービスも需要を一気に拡大しました。

YouTube はあまりにも閲覧需要が拡大したため、3月25日にはシステム負荷を減らさざるを得なくなり、画質を1ヵ月ほど低下させる告知をしました。

ユーチューブ利用増、画質低下へ ネット停滞防止、1カ月程度 – 毎日新聞

 米グーグルは24日、傘下の動画サイト、ユーチューブについて、世界で配信する動画の画質を一時的に引き下げる方針を明らかにした。新型コロナウイルス対策の外出制限が広がり、サービスの利用が増えており、インターネットが停滞するのを防ぐ。

YouTube の需要が拡大しているので動画投稿のマーケティングや YouTube 広告のインプレッション数やクリック率向上(いつもよりじっくり見ている)の機会増は見込めますよね。

以上のように、最近の事例においても、景気の変化は需要が単純に減るだけではなく、消費がスライドして他の商品やサービスに大きな機会があることがわかると思います。

消費のスライドを考える時の重要ポイント

景気変化、とくに不景気の方向へ消費がスライドする場合、私たちがおさえておくべき重要なポイントがあります。

それは、人々の「安心・安全」にフォーカスする ということです。

冷凍食品や麺類が売れたのは、「品切れになったら困るから、日持ちのする食品をストックしたい」という安心を求める心情ですし、通販や配達サービス、テレビ会議に需要が高まるのは「外に出たくない(出ることができない)、安全な場所に隠れていたい」という心理があるからです。

人々の安心・安全という需要を満たすことに貢献ができれば、大きな機会がつかめることでしょう。

なお、マスクの転売などはもとより、不安を煽るようなキャッチコピーで購入させるようなことは慎みましょう。

一般的な不況時に起こる消費のスライドと活用例

バブル崩壊後やリーマンショック、あるいは東日本大震災の後にも当然経済は停滞しましたが、やはり消費のスライドは起こりました。

不況や不景気の時の消費者心理や行動パターンはある程度決まってくるわけです。その事例をいくつかご紹介いたします。

1. 教育業

不況時には、資格取得などの教育業に消費がスライドします。

一般的には不況時には採用枠が減り、人員削減がおこりやすく就職難となります。

ビジネスパーソンとして、自分の価値を上げるために勉強をしはじめる傾向にあるんですね。

検索キーワード「資格取得」は、IT バブル崩壊後の2004年やリーマンショック直後の2009年2月にピークを迎えています。

その後景気が回復しても一定の検索需要はあるものの、ピークからは半減していることがよくわかると思います。

おそらく、今後も同じような動きは起こると思われます。採用が厳しくなり、教育や研修のニーズは間違いなく活発化することでしょう。

2. 買取ビジネス

不景気になると、換金価値のある資産を現金に換える動きが起こります。

一番わかりやすい例は、富裕層の「高級嗜好品」です。

多くの富裕層は現金を保有しているわけではなく、株や不動産など資産を持ちますが、不況となってこれらが暴落したり自身のビジネスが苦境となると、当面の現金確保のため、実生活に不要なブランド品や高級時計・高級車などがまず売りに出されるのです。

すると当然、多くの人が同じような動きをしますので、高い値段で売却することができず、泣く泣く低い値段で売り出されるようになります。

中古品やブランド品を買取しているビジネス、リサイクルビジネスはこれが大きなチャンスとなるんですね。

本来価値があるものが安く売り出されるため、価格が低い時にたくさん仕入れることができるわけです。

3. 健康・美容ビジネス

不況になると、緊張感をもって世の中を渡らなければならないという意識になるのか、健康需要が活発になるようです。

また、女性の美容への意識は不景気だからと言って落ちるようなものではなく、教育と同じロジックで「自分磨き」の必要性から化粧品などへむしろ消費のスライドが起こります。

通販ビジネスと組み合わせることで、健康・美容ビジネスには機会が多くなることでしょう。

4. 低価格になった不動産の購入

この世の中で高い値段のついているものの一つ「不動産」や「土地」は、不況時に価格の低下が起こります。

不況になると、当面の資金確保のために様々なものが売りにだされるのですが、不動産は安く仕入れて、その後に景気が回復していくと莫大なビジネス成長をもたらすことがあります。

アパホテルは、2019年決算で超がつく優良企業となっていますが、その成功のカギは「不況時の仕入れ」にあったといえます。

不況時に備えて資金を用意しておき、リーマンショック後に都心で価値が下落した一等地に集中して建設をしていったわけです。

不況を逆手にとる意思決定をしたAPAホテルに学ぶ #マーケティングトレース|黒澤 友貴/ブランディングテクノロジー

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で株価が下落し、世界中が不況に陥っています。 経営の意思決定が難しい局面に陥っている中で、この不況をポジティブに捉えるヒントが欲しいですよね・・・ 今日は、不況を逆手にとった意思決定をトレースし、この状況を好転させるための戦略思考ポイントについて考えていきたいと思います。 先に結論から。 Twitterで紹介した、アパホテルもニトリに共通しているのは、この4つのポイントだと抽象化してみました。 ①不況を予測して備える思考 ②逆手にとる思考 ③ブレない戦略コンセプト ④トッ

5. 無料集客やインハウス化への需要増に対応したビジネス

不況になると、大手企業は販売促進費を絞り始めますが、一方で余った人的リソースの有効活用として、SEO やサイト改善を施すことで効率的に集客をする方向に目が向いていきます。

また、今まで外部のパートナーに依頼していた業務をインハウス化する流れも増えます。

これをチャンスと捉えるならば、無料集客やインハウス化のコンサルティングなどは活況になってきます。

前述の教育業と合わせて、今までとは違う切り口での売上増が狙えます。現状においては、SNS のオーガニック活用も需要は強くなるでしょう。

このほかにも、不況に強いビジネス、不況時ならではのアイデアの活かし方については、前述の『不況の歩き方』にたくさんのアイデアが記載されています。ぜひご一読ください。

消費のスライドの対応する3つアクション

それでは消費のスライドに対応するにはどうしたらよいでしょうか。

次の3つのアクションで考えるとよいでしょう。

1. 変化に対応し、新規の取り組みを考えよう

実業家の藤田田さんは「不景気は商売がうまくいかない原因ではなく、平等に与えられた条件にすぎない」と言っています。

変化に対応し、新しい取り組みを考えていけば恐れる必要はありません。

例えば「知識・技能を身に着けたい」という消費のスライドが起こることは事前にわかっているのですから、受託サービスを行っている BtoB ビジネスであれば「社内ノウハウを公開するセミナー(オンライン)を頻繁に行う」「資格認定の仕組みを考える」「有料講座の販売を考える」といった新規の取り組みをするのはそれほど難しいことではないでしょう。

弊社キーワードマーケティングは、2004年創業で、ITバブル崩壊直後の「教育需要」に合わせてセミナーや講座の消費のスライドに合わせて軌道に乗った会社です。

創業2年も経たずに、800社以上の法人顧客を獲得できたのは、不景気下の教育トレンドを事業に取り入れたことが要因だったと振り返ることができます。

リーマンショックから回復してきた2012年以降は、「運用代行ビジネス」に重点を置き、会社としてさらなる成長をしてきました。

このように変化へ柔軟に対応することで適切な売上と利益をあげることは可能なのです。

2. 消費のスライドが起こった先の顧客を開拓しよう

不況・不景気になれば、「巣ごもり」「オンライン」「教育」「高級品の買取」「健康・美容」」などへ消費のスライドが起こるため、こういったビジネスには追い風になります。

そういった企業の売上が上がったり、売上増の機会が増大すれば、人材、資金、集客、システム、コンサルティングなど様々な需要が生まれます。

消費のスライドが起こる先のビジネスをすぐに興すようなことは難しいかもしれませんが、活況になっている企業を営業先とすることは可能なので、主要営業先として捉えることは不況・不景気を上手に渡り歩くポイントと言えるでしょう。

3. 起業・新規事業を考えよう

3つ目のアクションは、起業や新規事業を興すというものです。

不景気に創業された会社は潰れない」とよく言われます。

これは厳しい環境で生まれたからという理由もあるでしょうが、実は他にも大きなポイントがあります。

不景気になると不動産価格が下がるため、オフィス賃料も格安になります。また、廃業や事業縮小の影響でオフィス備品の中古品などが市場に多く出回ります。

さらに、大手企業が人材整理を行ったり、就職難になったりするため、できたばかりの小さな企業にも人材が集まるチャンスが大きく開かれます。

すでに有効求人倍率は下がり始めています

これは消費のスライドに対応したスタートアップ企業などからすれば、今まで獲得できなかった優秀な人材を獲得する大きなチャンスとなってきます。

参考:日本経済新聞|2月の有効求人倍率1.45倍 2年11カ月ぶり低水準

また、国も自治体も不況時には特別融資などを積極的に行うので資金調達がきわめて好条件に行えます。

このように、経営資源である「ヒト・モノ・カネ」が低価格で手に入るため、ベンチャー起業などは軌道に乗りやすいんですね。

弊社キーワードマーケティングはリーマンショック後に銀座へオフィスを移転しましたが、家賃は不況時前の約半分という破格の安さでした。

この固定費の低さも、成長を支えてくれた要因のひとつになっています。

当然リスクはあるので、誰にでも起業や新規事業をおすすめすることはできませんが、選択肢のひとつとしてぜひ考えるとよいのではないでしょうか。

未来は常に明るい

日本という国は、ぺんぺん草も生えない戦後の焼け野原から力強く立ち上がりました。

バブル崩壊後も、IT バブル崩壊後も、リーマンショックや東日本大震災後も、試練を乗り越えると必ず好況というご褒美が来ていました。それは歴史が証明しています。

例えば、ネット広告という市場(マーケット)はバブル崩壊後に産声を上げ、IT バブル崩壊後の、IT 業界に暗雲しか漂っていなかった時期に Google やオーバーチュアが運用型広告をスタートさせました。

ネット広告という市場は、まさに不況が生んだマーケットなのです。

そして、リーマンショックと東日本大震災というダブルパンチでも市場は下降することなく持ちこたえ、この試練を乗り越え爆発的に伸びつづけ、2019年にはテレビCMを抜いてついに広告市場のトップとなりました。

人が真価を発揮するのはピンチの時です。好景気だったり、周囲の環境の調子がいいときは本来の人の姿は見えないものなのです。

業界、業種問わず自社のビジネスを振り返る機会だと思い、消費のスライドで活かせるものがないか考えてみてはいかがでしょうか。

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「わかりにくいこと」を「わかりやすく」をモットーに、すべての記事を実際に広告運用に関わるメンバー自身が執筆しています。ぜひ無料のメールマガジンに登録して更新情報を見逃さないようにしてください!

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この記事を書いた人

滝井 秀典

滝井 秀典

代表取締役/広告事業部長

2003年、Googleアドワーズが日本でサービスを開始した直後より、検索キーワード広告とランディングページの実践・研究を行い、その成功理論を書籍『1億稼ぐ検索キーワードの見つけ方』で発表、5万部以上のベストセラーとなる。 キーワードマーケティングでは、設立時から延べ千社以上のアカウントを診断およびコンサルティングしており、現在は上場会社や成長率の高いベンチャー企業に対する広告運用代理事業を拡大している。

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