運用型広告

コンバージョンが計測されないときに確認したいこと

2008年からキーワードマーケティングに在籍し、15年以上広告運用に携わっている小島です。

コンバージョンが計測できないのは、広告運用者にとって一大事でしょう。お客様の売上をあげるために広告を運用し、その成果を見て PDCA を回して広告をよりよくしていくのが使命なのに、その成果が見れない状況になると非常に焦ると思います。

私が広告運用を始めた2010年に比べて、コンバージョン計測を取り巻く環境は複雑化し、広告運用者に求められることも多岐にわたります。

媒体側の改変や世の中の流れに合わせて、コンバージョン計測のあり方や厳密さはこれからも変化していくでしょう。しかし、コンバージョン計測は広告運用にとって切っても切れない関係なので、できる限り正確に計測できるようにすべきです。

この記事では、コンバージョン数が実際の成果と大きく乖離しているときに確認してほしいことをまとめています。どんなときも焦らず対応することが大事なので、落ち着いて一つ一つ考えられる原因を潰していきましょう。

テスト時に広告の管理画面や GA4 のコンバージョン数がゼロのときに考えられる原因

まずは、コンバージョン計測のテストをおこなったときに、コンバージョンがつかない場合の原因として考えられることを挙げてみます。コンバージョン計測のテストとは、ユーザーと同じように広告をクリックして購入や問い合わせをおこない、管理画面や Google Analytics 4(GA4)できちんと計測されているか確認する作業です。

1.コンバージョン計測タグの設置に問題がある

最初に考えられるのが、コンバージョンタグの設置に失敗しているケースです。

よくやってしまう設置ミスとして、サイトに貼り付けるタグの一部が不足していたり、間違って別のアカウントのタグを設置してしまっていたりすることがあります。

特に、複数のアカウントを管理している場合はインターネットブラウザのタブを複数開いて作業すると思うので、参照するアカウントを間違えて別のアカウントのタグを設置してしまうことがあります。

また、GTM のトリガーの設定や公開漏れなどのミスも起こりがちです。タグやトリガーを設定しただけではサイト上に設定内容が反映されないので、データが計測されません。

コンバージョンが計測されていない場合、まずはタグが正しく設置されているか、 GTM のトリガー設定が正しく実施されているか、公開漏れはないかを見直しましょう。

2. クロスドメインのサイトから計測できるように設定をしていない

商品閲覧ページ(http://www.example.com)とカートページ(http://www.cart.example.com)のように、1つのサイト内に複数のドメインが存在するクロスドメインのサイトである場合、設定もそれに対応した形にしなければ、コンバージョン計測はできません。

サイトがクロスドメインの場合には、コンバージョンを計測できるように設定する必要があります。

Google 広告や Google Analytics (GA)は、コンバージョンリンカーなどを設定すれば計測できるようになりますが、Yahoo!広告の場合は広告管理画面の設定だけでなく、Javascript を用いてサイト自体も少し調整する必要があります。クロスドメインの詳しい設定方法は以下の記事で説明しているのでぜひ参考にしてください。

▼ クロスドメインについてはこちら

クロスドメインとは?広告管理画面とGTM、GA4での各設定方法も紹介

クロスドメインとは、1つのサイト内に複数のドメインが存在する状態を指します。例えば、EC サイトで商品閲覧ページは「http://www.example.com」となっていて、カートページが「http://www.cart.example.com」になるようなときに起こりえます。

3. コンバージョンが計測後に反映されるまでタイムラグがある

広告の管理画面にコンバージョンの値が反映されるまでには、一定の時間がかかります。Google 広告の場合は通常3時間未満で反映されると書かれています。

アカウントの統計データ(クリック数やコンバージョン数、表示回数など)が反映されるまでの遅延は、通常 3 時間未満です。

引用元:データの更新頻度について │ Google 広告ヘルプ

もし3時間ほど待っても反映されない場合は、ほかの理由がないか探ってみましょう。

広告管理画面のコンバージョン数が、GA4 などのツールや実際コンバージョン数よりも少ない場合に考えられること

次に、コンバージョンテストでは計測されたものの、管理画面上のコンバージョン数が GA4 や実際のコンバージョン数と比較して少ない場合の原因を挙げていきます。

広告管理画面で計測されるコンバージョン数と GA4 側のコンバージョン数をぴったり揃えるのは、技術的な面やセキュリティ面で難しいです。そのため「〇〇が発生しているのではないか」と仮説を立てられるようにしておくことが、成果に繋がる運用をするコツです。

広告を見たデバイスとは別のデバイスからコンバージョンが発生(クロスデバイス)

広告をクリックしたデバイスとコンバージョンしたデバイスが異なる場合、計測される値がズレることがあります。例えば、PC で広告をクリックしてサイトに流入し、サイト内に記載されている電話番号を見ながら、携帯から予約の電話をしたとします。

「予約」をコンバージョンポイントとすると、管理画面上ではコンバージョンが計測されません。しかし、実際は1件の予約が発生しています。

自動入札機能を使っている場合、コンバージョンが計測されないのは広告運用にとって不利な状態です。実際のコンバージョン数と広告によるコンバージョン数に大きな差があるケースでは、対策が必要です。

上記の場合であれば、コンバージョンポイントを追加で設定するのが良いでしょう。サイトを見て電話をかけてきたユーザーに伝えてほしい情報をまとめ、一覧化したページを作成し、そこをコンバージョンポイントとして設定します。

そのページをレスポンシブデバイスとして各ページに挿入することで、管理画面上やツールで見たときの数字と実際にかかってきた電話の数の差はあまり広がらなくなるでしょう。正確に計測できるわけではないですが、ある程度は正確性を高められます。

Cookie 規制や、アドブロッカーの影響

EU における個人のデータ保護の規則(GDPR)が2018年に施行されたあたりから、コンバージョン計測の基礎となる、Cookie による情報収集を規制する動きが活発になっています。

また、頻繁に表示される広告を嫌って、広告を表示させないようにする「アドブロッカー」をインストールしている人もいます。

こうした Cookie 規制やアドブロッカーの影響で、コンバージョンしているにも関わらず、管理画面上はコンバージョンが計測されないケースも増えてきています。

これらの問題は解決することがほぼ不可能です。しかし、1~2か月で急激に規制が厳しくなることはまれなので、コンバージョン数を期間比較することで、最近の広告運用がうまくいっているかどうかを推測することはできます。

「推定コンバージョン」で計測している媒体やツールがある

2023年6月現在、Google 広告は「推定コンバージョン」を採用しています。推定コンバージョンは Google がそれぞれの人を識別しないデータを利用して推定されたコンバージョンなので、実際のコンバージョンとは異なった数値になりがちです。

参考 : オンライン コンバージョンの推定について | Google 広告ヘルプ

推定コンバージョンは GA4 でも採用されています。また、2023年2月27日より Yahoo!ディスプレイ広告(YDA)でも導入されています。

さらに、Google 広告ではコンバージョン測定の精度を上げるために「拡張コンバージョン」という機能があります。拡張コンバージョンは、ユーザーデータをハッシュ化(不可逆な不規則な文字列に置換しデータ化)し、その後のコンバージョン測定に使用する機能です。

お客様のウェブサイトでユーザーがコンバージョンを完了すると、メールアドレス、氏名、住所、電話番号など、ユーザーに関するファースト パーティ データが取得されます。このデータはコンバージョン トラッキング タグでキャプチャされ、ハッシュ化されて Google に送信されます。その後、このデータを使用してコンバージョン測定が拡張されます。

引用元 : 拡張コンバージョンについて | Google 広告ヘルプ

広告媒体はセキュリティや個人情報保護の観点で、推定値を使ってコンバージョン計測をおこなっているため、実際のコンバージョン数とは差異が発生します。

これらの背景を理解しておくことで、なぜコンバージョン数に差が出るのかが分かってくるでしょう。

コンバージョン計測方法の違い

コンバージョンタグを設定する際、「総コンバージョン」か「ユニークコンバージョン」のどちらかを設定できます。1回の広告クリックに対して複数回コンバージョンした場合に、全てのコンバージョンを計測するのが「総コンバージョン」、一度のみを計測するのが「ユニークコンバージョン」です。

「総コンバージョン」か「ユニークコンバージョン」の設定の違いにより、媒体ごと、もしくは実際のコンバージョン数と差異が生じます。

また、ほかの人が設定した広告アカウントを引き継いだ場合には「アトリビューションモデル」も確認しておきましょう。実際にはデータドリブンモデルで設定されているのに、ラストクリックで設定していると思い込んでしまっていると、当然ながら実際のコンバージョン数とは大きく異なってきます。

特にデータドリブンモデルは、ほかのアトリビューションモデルと異なり、過去のデータから割り出された「貢献度」を表しているため特殊です。

ラストクリックやファーストクリックなどのモデルは計測されるタイミングの違いがあるだけです。また線形と減衰などのモデルは、間接効果によって按分されるだけで、合計値としては特に違いがありません。

しかし、データドリブンモデルだけは Google によって計算されたもののため、ほかのモデルのようにタイミングや合計値が合致することがありません。

データドリブン アトリビューションは、他のアトリビューション モデルとは異なり、広告主様のコンバージョン データを利用して、コンバージョン経路全体における各広告インタラクションの実際の貢献度を計算します。

引用元:データドリブン アトリビューションについて | Google 広告ヘルプ

なお Facebook 広告は、ビュースルーコンバージョンとクリックスルーコンバージョンを足した値がコンバージョンになるようデフォルトで設定されているので、こちらも注意が必要です。

広告管理画面のコンバージョン数が実際のコンバージョン(購入数や問い合わせ数など)と比較して多いときに考えられること

ここまでは主にコンバージョンが計測されなかったり、計測されたコンバージョン数が少なかったりするケースをメインに説明しました。

最後に管理画面上のコンバージョン数が実際のコンバージョン数(購入数や問い合わせ数など)より多い場合に原因として考えられることを確認していきましょう。

コンバージョン数が多く計測されるのは、広告運用担当者としてはいいことに感じるかもしれません。しかし、広告運用担当者が真に見なければならないのはクライアントの売上と利益が上がっているかです。管理画面上のコンバージョン数がどれだけ増えても、売上と利益が増加しなければ意味がありません。

例えば、管理画面上ではコンバージョン数が増えているにも関わらず、クライアントの把握している売上や利益は低下しているとします。

この場合、運用担当者は「上手く運用できている」と感じていても、クライアント側では売上や利益が低下しているため「何をやっているんだ」と思われてしまうでしょう。情報のすり合わせがなくこの状態が続いてしまうと、問題発見や解決が遅れてしまうことも考えられます。

また、自動入札機能を利用している場合、実際のコンバージョン以上に特定のキーワードのコンバージョンがついてしまうと、より多くの広告費が投入されることとなり、結果的に全体としての広告運用の効率が著しく低下する場合もあります。そのため管理画面上のコンバージョン数が多い場合も、計測されないときや少ないときと同様、対応が必要になります。

正直、全ての問題を厳密に解決するのは難しいです。しかし多く計測されてしまう理由を把握しておくだけで、クライアントから質問があったときに、きちんと説明することや今後の対策を考えることができます。

媒体をまたいだコンバージョンが発生

Yahoo!広告や Google 広告、Facebook 広告など、複数媒体の広告をクリックしたあとにコンバージョンした場合、それぞれの管理画面にコンバージョンがついてしまいます。

コンバージョンが重複して計測される可能性があることは意識しておいた方がいいでしょう。

電話番号のミスタップ

サイトにある電話番号はタップされることでコンバージョンがつきます。しかし実際には、その後に表示される「発信」までタップしないと電話は発信されません。

iPhone で電話番号をタップすると表示される画面

管理画面上の電話番号タップによるコンバージョンが多い場合、本当に電話がかかってきているかを一度クライアントに確認した方がいいでしょう。

電話がかかってきていない場合、ほとんど電話番号を間違えてタップしている可能性が高いです。

例えば、ハンバーガーメニューのすぐ横に電話発信のボタンがある場合、メニューをタップしたいのに間違えて電話発信のボタンをタップしてしまうことがあります。

ミスタップが多い場合には、意図しないタップが発生しないよう、サイトのデザインから見直すことを検討しましょう。

ブラウザの再読み込み

フォームから問い合わせや予約をしたあと、送信の完了をお知らせするページ(サンキューページ/サンクスページ)が表示されます。コンバージョン計測は、このサンキューページに到達した数を計測することが多いと思います。

サンキューページには受付番号や予約番号が表示されたり、「折り返しのメールが届かない場合は、こちらへメールをお願いします」など、ユーザーにとって重要なメッセージが記載されていることがあります。

そのため、ユーザーが「後で印刷しよう」「念のためメモしておこう」などと考えて、サンキューページを開いたままにすることもあります。その結果、別のタブに移ってから再度サンキューページに戻ってくることで、サンキューページが再読み込みされ、再びコンバージョンが計測されてしまう場合があります。

対策が難しい問題ですが、以前、コンバージョンタグを仕込んだページに遷移したユーザーが一定時間経って同じページに遷移した場合、コンバージョンタグを外したまったく同じ内容のサンキューページにリダイレクトをかけることで解決したことがあります。

正確なコンバージョン計測は難しいが、できる限りのことはやってみよう

私は、管理画面上のコンバージョン数を絶対的な成果指標とは見ていません。

あくまで期間比較をしてどんな変化が起こっているかを見るため、また限られた広告費をどう配分して広告投資をおこなうかという点に絞って使用しています。

 一方、広告運用における大きな流れとして、自動入札を積極的に使う時代に突入しています。そして自動入札においてコンバージョンはより重要な指標として使われます。

ここまで見てきたように、現在ではコンバージョン計測を正確におこなうのは難しい状況です。

できる限り正確なコンバージョン計測を目指すべき、という点は変わりませんが、ここまで説明してきたような限界があることを意識して、計測に問題があると判断した場合にはあえてコンバージョンタグを外すなどの手段も念頭に、よりよい広告運用を目指してください。

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記事を書いた人

小島 元
小島 元

広告運用 コンサルタント

慶應義塾大学経済学部卒業。2008年からキーワードマーケティングに在籍、 以降10年以上、広告運用に携わる。離脱率の低さに定評があり2008年から 運用を続けているクライアントも多い。趣味は音楽、楽器演奏。依頼を受けて プロのバックを務めることもある。愛知県犬山市出身。

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