TikTok や YouTube ショートが普及した昨今、スマートフォンの画面いっぱいに表示される縦型動画は、ユーザーにとって一般的なものになりつつあります。この記事を読んでいる方の中にも、おそらく一度は見たことがある方がいるのではないでしょうか。
「縦型動画広告」は、そんな縦型動画を用いた広告です。通常の動画広告と比べて圧倒的な没入感を与えられることや、縦型動画フォーマットの普及が進んでいることから、今注目されています。
この記事では、なぜ今、縦型動画広告が重要なのかをはじめ、成果に繋げるための具体的なクリエイティブ作成のポイントなどを具体的に解説します。
縦型動画広告と通常の動画広告では、表示のされ方やユーザーが広告を視聴するタイミングなど、動画の表示サイズ以外にも多くの違いがあります。
以下の表は縦型動画広告と通常の動画広告を比較してまとめたものです。
項目 | 縦型動画広告 | 通常の動画広告 |
---|---|---|
サイズ
(アスペクト比) |
9:16 | 16:9、1:1など |
視聴される環境 | スマートフォンがメイン |
|
表示される媒体・
プラットフォーム |
リール リール |
LINE ファミリーアプリ) など |
表示のされ方 | フルスクリーン表示 | Web サイトのコンテンツなどと同時に表示されることも多い |
動画の長さ | 30秒から1分 | 15秒から60分 |
広告を
スキップできるか |
スキップできる |
スキップできる広告とできない
広告がある |
表示される場所の
特徴 |
ショート動画などの連続視聴面
※SNS 上のストーリーズや リールなど |
|
縦型動画広告は TikTok や Instagram、YouTube ショートなど、短尺動画コンテンツが多いプラットフォーム上に表示されます。また、コンテンツとコンテンツの間で、連続的に表示される点も通常の動画広告と異なります。
そのため、Web サイト閲覧中や特定の動画コンテンツの前後などに表示される通常の動画広告と比べて、自らの意思で気になった広告を視聴する「能動的な視聴」が生まれやすいのが特徴です。
ただし、ユーザーが「能動的な視聴」をするということは、ユーザーにとって興味がない広告はスキップされてしまうリスクも高いということ。そのため、通常の動画広告と異なり、冒頭の1秒から3秒で興味を引く構成が求められます。
縦型動画広告市場は大きく成長している傾向にあります。
サイバーエージェントが発表した2024年国内動画広告の市場調査では、前年比で1.7倍の900億円に成長しています。2025年は1,000億円を超え2028年には2,000億円以上になると推測されています。
また、動画広告市場全体のうち、縦型動画広告が占める割合も前年比で約1.5倍になっています。このことからも縦型動画広告の需要は年々高まっているといえますね。
以下は電通メディアイノベーションラボが「2024年 日本の広告費」について解説した記事の一文ですが、この文章からも、縦型動画広告の普及が拡大していると分かるのではないでしょうか。
この数年の大きなトレンドとして、やはり動画広告が非常に好調です。動画共有系サイトで動画コンテンツの間に流れる「インストリーム広告」、SNSのタイムラインやウェブサイトなどに掲出される「アウトストリーム広告」の両方を含みます。中でもソーシャルプラットフォーム上の縦型動画広告の需要が高まり、数字が大きく伸びました。
「2024年 日本の広告費」解説──3年連続で過去最高を更新。マスコミ四媒体広告費が3年ぶりのプラス成長|電通報
キーワードマーケティングでも、実際にお客様から「TikTok や YouTube ショート面への配信をしたい」といった相談を受けるケースが増えています。
特に10代や20代前半の若いユーザー層をターゲットにしている商材を扱っているお客様は若者に流行しているプラットフォーム動向を気にされている場合が多く、その施策として縦型動画広告を検討するケースが増えています。
縦型動画市場が急成長している背景として、SNS 媒体による縦型フォーマットをメインとしたサービスの拡充が考えられます。
SNS が普及して以降、Instagram のストーリーズを皮切りに、TikTok や YouTube ショートなどでスマホを縦向きにしたまま視聴できるフォーマットが増え、ユーザーも縦型のコンテンツを視聴する機会が増えました。
ユーザーにとって短尺の縦型動画コンテンツの視聴が習慣化したことで、LINE や X でも縦型のフォーマットを整備し縦型動画広告の需要も増えていったといえます。
また、Google 広告や TikTok 広告の機能として、広告管理画面内で簡単にショート動画形式のクリエイティブを作成できる機能もリリースされています。クリエイティブを作成しやすくなったことも、縦型動画広告の市場が成長している要因といえるでしょう。
縦型動画広告には通常の動画広告とは違った特徴が多くあり、メリットも多くあります。
ここでは縦型動画広告を利用するメリットとして、以下の3つを紹介します。
縦型動画広告を配信するメリットとして、ユーザーに広告を見てもらうチャンスが増えることが挙げられます。
そもそも縦型動画広告は、前述したように Instagram のリールや TikTok、YouTube ショートなどで配信できる広告です。これらの SNS は10代や20代といった若年層はもちろん、現在では30代より上の世代でも利用者が広がっています。
以下は総務省が発表した令和5年度の主なソーシャルメディア系サービスやアプリの利用率ですが、これを見ても幅広い層のユーザーが Instagram や TikTok、YouTube といった縦型動画に触れられる媒体を利用しているのが分かりますね。
とりわけユーザー数が多いのが YouTube ショートです。以下の調査結果のように、13歳から54歳の1か月あたりの利用率は他のサービスよりも高く、ショート動画を扱う動画配信サービスの中で1位との結果が出ています。
2023 年 11 月に調査会社 Material が実施した調査によると、ショート動画を扱う動画配信サービスの中で、13 歳 〜 54 歳の 1 カ月あたりの利用率は YouTube ショート が最も高く(62%)、他のサービスを上回り 1 位です。13 歳から 24 歳の若年層に限定しても同じく利用率は 1 位で、74% が YouTube ショートを利用しています。
好きと出会える YouTube は、深掘り、行動につながる場所へ —— ショート動画とテレビ視聴が成長を牽引|Think with Google
こうしたデータからも、世代ごとの差があるとはいえ、縦型動画が着実に浸透していることが分かります。だからこそ、縦型動画広告を出すことで、これらの幅広いユーザーに広告を見てもらうチャンスが各段に増えるのです。
縦型動画広告には商品購入ページへの CTR ボタンやショッピングタグを設置できるため、ユーザーが広告を見てからすぐに購入に移りやすいというメリットがあります。
通常であれば、その企業のアカウントをフォローしているかおすすめに流れてきた動画を見て、初めてその商品を知り、検索し購入という流れが一般的です。しかし縦型動画広告では、コンバージョン見込みが高いユーザーに狙って配信することで、見込みユーザーが広告を見てからすぐに商品を購入するという自然な流れを作ることができます。
以下の図は縦型動画広告の CTR をクリックしてから商品購入ページまでの遷移をまとめたものです。動画の視聴後、検索エンジンへ移って検索するといった手間がかかっていないことが分かりますね。
このように「発見から購入まで」がシームレスに繋がっていることも縦型動画広告のメリットといえるのです。
通常の動画広告との違いでも説明したように、縦型動画広告は短尺の動画を使用するケースが一般的なため広告クリエイティブを作りやすいというメリットがあります。
通常の動画広告であれば、長尺であることからストーリー性を重視した構成や高品質な編集技術が求められるため、動画クリエイティブの作成に時間や費用がかかってしまう傾向があります。
短尺の縦型動画広告では、配信するプラットフォームの特性上、ユーザー作成のコンテンツ(UGC 動画)でもオーガニックの動画コンテンツと違和感なく配信できます。そのため、通常の動画広告と比べて作成しやすいことがメリットです。
また、Google 広告では、特定の画像を入稿すると AI が自動で動画を生成してくれる機能もリリースされているため、より簡単に動画クリエイティブを用意でき PDCA を回しやすい点もメリットといえます。
市場が大きく成長している縦型動画広告ですが、さまざまな広告媒体が縦型動画広告フォーマットを取り入れています。
以下の表は、2025年5月時点で縦型動画広告が配信可能な媒体をまとめたものです。
媒体 | メニュー | 配信面 |
---|---|---|
Meta 広告 | Facebook 広告 |
|
Instagram 広告 |
|
|
Google 広告 | 動画広告(VAC) | YouTube ショート |
P-MAX | YouTube ショート | |
デマンドジェネレーション
キャンペーン |
YouTube ショート | |
アプリキャンペーン | YouTube ショート | |
TikTok 広告 | TikTok 広告 | TikTok |
X 広告 | バーティカルビデオ広告 | ビデオタブ |
LINE 広告 | LINE 広告 |
|
Yahoo! 広告 |
ディスプレイ広告(運用型)の
レスポンシブ(動画) |
|
Pinterest 広告 | スタンダード動画 |
|
ワイド動画 |
|
|
アイデア |
|
特に、Google 広告の P-MAX では動画を自動生成する機能がデフォルトでついているなど、動画広告の配信は媒体の推奨事項となっていることも分かりますね。
縦型動画広告を出したいときに、気になるのが入稿規定です。
以下の表は、先ほど紹介した各媒体で使える縦型動画の仕様をまとめたものです。これから縦型動画広告を出したいと考えている方はぜひご覧ください。
▼Facebook、Instagram 広告で使える縦型動画の仕様
項目 | ||
---|---|---|
解像度 | 1,440 × 2,560px | 1,440 × 2,560px |
アスペクト比 | 9:16 | 9:16 |
ファイル形式 | MP4、MOV、GIF |
ストーリーズ:MP4、MOV、GIF
リール:MP4、MOV |
ファイルサイズ | 最大4GB | 最大4GB |
動画の長さ |
ストーリーズ:1秒から2分
リール:最長時間の制限なし |
ストーリーズ:1秒から60分
リール:0秒から15分 |
▼YouTube ショート広告で使える縦型動画の仕様
解像度 |
推奨:1,080 × 1,920px ※720 × 1,280px も許容される |
アスペクト比 |
推奨:9:16
※2:3も許容される |
ファイル形式 |
推奨:MPG(MPEG-2 または MPEG-4)
※以下のファイル形式も許容 WMV、AVI、MOV および FLV、MPEG-1、MP4、MPEGPS、 3GPP、WebM、DNxHR、ProRes、CineForm、HEVC(h265) |
ファイルサイズ | 256GB |
動画の長さ | 推奨:6秒から60秒 |
▼TikTok 広告で使える縦型動画の仕様
解像度 | 540 × 960px 以上 |
アスペクト比 | 9:16 |
ファイル形式 | MP4、MOV、MPEG、3GP、AVI |
ファイルサイズ | 500MB 以下 |
動画の長さ | 最長10分 |
▼X 広告で使える縦型動画の仕様
解像度 |
最大:1,080 × 1,920px
最小:720 × 1,280px |
アスペクト比 | 9:16 |
ファイル形式 | MP4、MOV |
ファイルサイズ | 最大1GB |
動画の長さ | 最長2分20秒(15秒以内を推奨) |
▼LINE 広告、Yahoo! 広告(LINE 面に配信する場合)で使える縦型動画の仕様
解像度 |
最大:1,080 × 1,920px
最小:135 × 240px |
アスペクト比 | 9:16 |
ファイル形式 | MP4、MOV |
ファイルサイズ | 1GB 以内 |
動画の長さ | 5秒から10分 |
▼Pinterest 広告で使える縦型動画の仕様
解像度 | 1,080 × 1,920px |
アスペクト比 | 9:16 |
ファイル形式 | MP4、MOV、M4V |
ファイルサイズ | 最大2GB |
動画の長さ | 4秒から15分(6秒から15秒を推奨) |
キーワードマーケティングでも縦型動画広告を配信し結果がでた事例がありますので紹介します。
まず紹介するのは、アパレル系 EC サイトの事例です。もともとスクエア動画のクリエイティブを使った広告を配信していましたが、Meta 広告でリール面などへ縦型動画広告を配信しました。
結果として、既存の広告に比べてクリック率、コンバージョン数が増加し、ROAS(広告費用対効果)もスクエア動画より良い結果となりました。特にコンバージョン数は既存の約8倍、ROAS は既存の約136%となっています。
クリエイティブ | クリック率 | コンバージョン数 | ROAS |
---|---|---|---|
スクエア動画 | 1.00% | 5 | 2,800% |
縦型動画 | 1.30% | 40 | 6,600% |
続いては、アプリのインストールを目的とした広告配信の事例です。この事例では、もともと Meta でスクエアの画像クリエイティブのみを配信していました。
新規施策として縦型動画広告を配信したところ、インストール単価を大きく下げつつ、コンバージョンを増加させることに成功しました。クリック率も、スクエア画像を用いた広告より高い結果となっています。
クリエイティブ | クリック率 | コンバージョン数 | インストール単価 |
---|---|---|---|
スクエア画像 | 1.20% | 500 | ¥300 |
縦型動画 | 1.40% | 5,300 | ¥180 |
こちらの商材はスマートフォン向けアプリという商材の性質上、実際にアプリを操作するのと同様に画面いっぱいに情報を見せられたことで、ユーザーにも違和感なくメッセージを伝えられたといえます。
縦型動画広告を作る際には、今まで使っていた横型の動画広告を縦長にリサイズすればよいわけではありません。縦型動画広告には、その形式ならではの広告作成のポイントがあるのです。
今回は作成時に押さえておきたいポイントとして、以下の4つを紹介します。
縦型動画広告はフルスクリーンで表示される形式のため、商品をできるだけ大きく見せたり、より強く訴求したいメッセージを全面に出したりすることが必要です。
また、縦長サイズを活かして画面を上下に分割し、それぞれで分けて情報を見せるなども効果的です。
例えば以下はサントリー「伊右衛門」の縦型動画広告ですが、縦に長いフォーマットを活かして商品の全体像を見やすくしたり、実際に飲んだときのイメージをアップで見せたりしています。
商品の全体像や表情がスマートフォンでフルスクリーン表示されるため、ユーザーの印象に残りやすくすることに成功していますね。
「今、手元には横型動画しかなくて・・・」という方におすすめなのが、先ほど紹介した「縦長サイズを活かして画面を上下に分割」する方法です。
以下のように、画像上部に既に用意している横型動画を、画面中央から下部に商品画像やブランドのロゴを配置することで、既存の横型動画を活用しつつ縦型動画フォーマットにも適応した広告を作ることができますよ。
表示されるプラットフォームの性質上、縦型動画広告は上下にスワイプすることで簡単にスキップできるケースが多いです。
そのため、すぐにスキップされないよう、動画の冒頭にインパクトのある映像やユーザーへの問いかけなどを置いて、ユーザーを惹き付ける工夫が必要です。
以下はそれぞれ商品のアップ映像や訴求内容などを冒頭に配置した動画広告の例です。いずれも表示されたら思わずスワイプする手を止めてしまうような、インパクトあるファーストビューですよね。
縦型動画広告を作る際、つい見落としてしまうのが字幕です。
LINE VOOM のようにデフォルトで音声が出ないようになっているものはもちろん、TikTok や Instagram リールなどのデフォルトで音声が出るプラットフォームであっても、字幕を入れることが重要です。
以下はアメリカの Sharethrough(シェアスルー)社の創業者であるダン・グリーンバーグ氏が公開した研究結果ですが、携帯電話をマナーモードにしているユーザーの75%が、動画を見ているときも携帯電話をマナーモードにしていると記載されています。
What may be surprising is that 75% of people say they often keep their phone on mute even while watching a video. While the percentages vary by generation (85% for Millennials versus 64% for Gen X), the trend is universal — behavior has changed, and videos are more often watched on mute than with sound.
訳)驚くべきことに、75%の人が動画視聴中でもスマートフォンの音を消したままにしていると回答しています。世代によって割合は異なりますが(ミレニアル世代は85%、X 世代は64%)、この傾向は普遍的です。行動が変化し、動画は音声ありで視聴するよりもミュート状態で視聴することが多くなっています。
75% of people watch mobile videos on mute: What that means for advertisers|Digiday
こうした背景からも、確実に広告メッセージを伝えるためには字幕を付けることをおすすめします。
広告を配信する媒体によっては、ロゴやメニューボタンなどが表示されるエリアがあり、そこに動画内の重要なコンテンツを設置すると被って視認性が悪くなってしまいます。
媒体ごとにコンテンツを配置しないほうがよいエリアを把握し、媒体の表示形式に合わせた動画構成にしましょう。
媒体ごとのコンテンツ配置を避けたほうがよいエリアは、それぞれ以下の通りです。
媒体 | 配置を避けるべきエリア |
---|---|
YouTube ショート |
上部:約10%程度
下部:約25%程度 右端:約15%程度 |
X 広告(旧 Twitter)ビデオ面 | 画面全体の上下15%程度 |
TikTok |
上部:約10%
下部:約25%から30% 右端:約15%から20% |
Instagram リール |
上部:約10%程度
下部:約25%から30%程度 右端:約15%程度 |
Instagram ストーリーズ |
上部:約15%程度
下部:約20%程度 左右の端:左右それぞれ5%程度 |
LINE VOOM |
上部:約10%程度
下部:約25%程度 |
上部:約10%程度
下部:約20%から25%程度 |
とはいえ、実際に動画を作るとなると「どの部分が避けるべきエリアか分からなくなった」と悩む方もいるかと思います。そこで利用したいのが、各媒体のプレビュー機能です。
プレビュー機能は各広告媒体の管理画面から利用できます。以下は TikTok のプレビュー画面ですが、画面右側に実際の広告の表示イメージが出ることが分かりますね。
こうした機能を駆使して、コンテンツの配置をうまく調整し、伝えたいことが確実に伝わる広告を作成しましょう。特に、CTA ボタンが動画内テキストに被っていないかは、気を付けて確認するのをおすすめします。
この記事で紹介したように、縦型動画広告は近年大きく市場成長しており注目度が高まっています。
TikTok や YouTube ショートの普及と定着によりユーザーの中でも縦型動画の視聴が一般的になっているため、縦型動画広告の需要も増えていくことが予想されます。
縦型動画広告はフルスクリーンで表示されるなど通常の動画広告とは異なる点やメリットが多くあるので、この記事で解説した内容を理解し広告成果の最大化に活用してください。
広告運用 コンサルタント
2020入社。大学でマーケティングを専攻→キーマケに入社し広告事業部に配属される。配属後2ヶ月で動画広告作成に携わる等、検索やディスプレイ広告以外も勉強中。趣味はギターと温泉。特に冬の露天風呂は至高。
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