マーケティング

広告運用のインハウス化とは?メリットとデメリット、4つの成功のポイントを解説

インハウス化とは、企業が広告代理店を利用せず、自社内で広告運用を管理することです。この方法を取り入れることで、市場の変化や消費者の動向に即座に対応し、広告戦略やそれに基づいた施策を柔軟に調整できます。

広告代理店では複数のクライアントを同時に扱うため、迅速な対応が難しいこともありますが、自社運用では市場のデータや顧客のフィードバックを直接活用し、広告の内容やタイミングを素早く最適化できます。

この記事では、インハウス化のメリットとデメリットから、インハウス化を実施するためのポイントまで解説します。また、インハウスと広告代理店利用の中間にあたるハイブリッドな広告運用モデルについても解説するので、インハウス化を考える方はぜひ最後まで読んでみてください。

インハウス化とは?

インハウス化とは、企業が広告代理店のサポートに頼らず、企業内部のチームだけで広告の計画や作成、施策の実施、効果の分析をおこなうことを意味します。

インハウス化する主な利点は、企業が自社の商品やサービスに対する理解を活かし、より自社の現状に合わせたマーケティング戦略を立てたり、戦略に伴う施策を実行できたりすることにあります。

広告代理店は専門的な知識や経験を持っていますが、複数のクライアントを同時に扱う特性上、企業の内部にある事情や詳細な目標などを反映させた柔軟な戦略を立てるのが難しい傾向にあります。インハウス化すること、自社の目標や市場状況に合わせた戦略を柔軟に立てることができるのです。

インハウス化するメリット

インハウス化は、広告運用を自社で管理することにより、さまざまな利点を企業にもたらします。ここではメリットとして以下の4つを取り上げ、それぞれについて紹介します。

  • コスト(手数料)を削減できる
  • 自社内に広告運用の知識やノウハウが蓄積される
  • 迅速な意思決定とスピード感をもった施策ができる
  • 自社の商品やサービスに基づく広告戦略/戦術を実現できる

コスト(手数料)を削減できる

コスト削減は、インハウス化の利点の一つです。通常、広告代理店を通じて広告を出稿する際には、手数料が広告代理店に支払われます。しかし、インハウスで広告運用をおこなう場合はこの手数料が発生せず、その分の予算を広告出稿や他のマーケティング活動に充てることが可能です

広告予算が100万円の場合を例に考えましょう。代理店を利用するときは広告予算だけではなく、代理店への手数料が発生します。この手数料が広告予算の20%だとすると、代理店を通じて広告を出す場合は、もともとの予算額の100万円に手数料20万円を加算した120万円が必要になります。

一方、インハウスで運用する場合は手数料を支払う必要がないため、広告を出す際に必要な金額は広告予算の100万円のみとなります。

このようなインハウス化によるコスト削減は、特に広告予算が限られている中小企業にとって大きなメリットと言えるでしょう。

自社内に広告運用の知識やノウハウが蓄積される

自社内に広告運用の専門知識やノウハウが蓄積されることも、インハウス化のメリットです。

インハウス化を進めることで、業務の属人化を防ぎ、広告運用の効率化を実現できます。知識とノウハウが組織内に共有されることで、特定の個人に依存することなく、広告戦略や戦術の策定と実行が可能になります

蓄積された知識やノウハウは、新入社員や他の部署のメンバーにも継承しやすくなるでしょう。これにより期待できるのは、組織全体の広告に関する理解を深め、制作物の品質を担保する効果です。長期的に見れば、この知識やノウハウは企業の重要な資産となり、競争優位性を高める要素の一つになりえます。

迅速な意思決定とスピード感をもった施策ができる

インハウス化することは、広告運用における柔軟な意思決定に繋がります。広告代理店を介さず直接広告を管理することで、市場のトレンドや競合他社の動き、顧客からのフィードバックや消費者のニーズの変化に迅速に対応できるのです。

迅速に対応できることの具体例として、特定の広告の成果が伸び悩んでいるときにクリエイティブの変更をしたりターゲットオーディエンスの最適化をしたりすることや、新しい市場機会が表れたときにすぐ新しいキャンペーンを立ち上げられることが挙げられます。

このような対応能力は、特に動きが速い市場や競争が激しい業界において、企業が競争上の優位性を保つために不可欠な要素といえるのです。

自社の商品やサービスに基づく広告戦略/戦術を実現できる

インハウス化することで、自社の商品やサービスに関する理解を広告戦略や戦術に反映させられます。自社商品の特徴や顧客への利益を広告に直接取り入れられるようになるため、一般的な広告と比べて、顧客に対してより関連性が高く、説得力のあるメッセージを届けられます

例えば、商品開発チームから得られる独自の洞察や、顧客サービス部門から得られる顧客のフィードバックを活用して、商品の特定の機能や利点を強調する広告を作成できます。また、顧客の使用体験や好みに基づいて、よりパーソナライズされたコンテンツを作ることも可能です。

さらに、市場調査や顧客データ分析を通じて得られる独自の情報を、広告戦略や戦術に組み込むこともできます。競合他社や市場の一般的なトレンドから得られる情報にはない、自社固有の洞察を広告に活用することで、市場での差別化を図り、ブランド独自のポジショニングを強化できるのです。

インハウス化のデメリット

インハウス化には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。ここではデメリットを以下の3つに分けて、それぞれ紹介します。

  • 広告運用のスキルを持つ人材の確保が必要
  • 業界や媒体に関する最新情報のキャッチアップが難しい
  • 広告代理店向けのプロダクトやツールへのアクセス制限がある

広告運用のスキルを持つ人材の確保が必要

インハウスでの広告運用を成功させるためには、デジタルマーケティングや広告分析、クリエイティブのデザインなど、多岐にわたる専門的なスキルを持つ人材の確保が重要です。これらのスキルを持った人材は需要が高く、採用するためには企業間での熾烈な競争を勝ち抜かないといけません。そのため、優秀な人材を見つけて採用すること自体が一つの大きな課題となるのです。

さらに人材を確保した後も、そのスキルと知識を常に最新の状態に保つためには、定期的なトレーニングや継続的な教育が欠かせません。デジタルマーケティングの世界は日々進化しており、最新のトレンドや技術に遅れを取らないようにする必要があります。

また、属人的な運用がもたらすリスクも考慮する必要があります。特定の個人に依存しすぎると、その人が退職した場合に、広告運用に大きな支障をきたす可能性があります。したがって、広告運用に関する知識とスキルをチーム全体で共有し、互いに学び合う文化を育むことが重要です。

業界や媒体に関する最新情報のキャッチアップが難しい

インハウス化で直面する主要な課題の一つに、業界や媒体に関する最新情報のキャッチアップが難しいことがあります。

広告業界は新しい広告技術の登場やプラットフォームの更新、消費者の行動パターンの変化など、多くの要素が絡み合っており、どの要素も日々進化しています。こうした動向を理解したうえで適した戦略を立てることが、効果的な広告運用には不可欠です。

代理店を利用する場合は、業界の専門家である運用担当者に情報のキャッチアップを任せられますが、インハウス化すると、このような情報を自分たちで積極的に収集する必要があります

また、収集した情報が自社にとって本当に有益なものかどうかを見極める分析能力も必要です。全ての情報が自社のニーズや戦略に合致するわけではないため、情報を取捨選択し、自社の広告戦略にどのように組み込むかを判断することが重要になります。

広告代理店向けのプロダクトやツールへのアクセス制限がある

広告代理店向けのプロダクトやツールへのアクセス制限があるのも、インハウス化に際して直面する課題の一つです。

広告を出稿する媒体によっては、代理店経由でのみ扱える広告メニューや機能を提供していることもあります。例えば、Yahoo! 広告のディスプレイ広告(予約型)は、代理店の中でもディスプレイ広告(予約型)の取り扱い契約を結んでいるセールスパートナーを通してでないと出稿できない広告です。

Google 広告のベータ機能のように、一部のアカウントに制限して機能を公開するベータ版もありますが、インハウスで広告を運用する企業は利用できない場合があるので注意が必要です。

インハウス化への移行を検討するタイミング

インハウス化を検討するタイミングは、企業の状況や目標によって異なります。自社の現在の広告運用の状態やかかっているコスト、人材の状況などを考慮し、企業にとって適した時期を見極めることが重要です。

インハウス化への移行を検討するタイミングはさまざまですが、ここでは大きく3つに分けて紹介します。

社内に広告運用の知識やスキルをもったスタッフがいる

広告運用に関する専門知識やスキル、経験を持つスタッフが既に社内にいれば、そのスキルを活用し、外部に依存せずに広告運用をおこなうことが可能になります。こうした人材が社内にいる場合、インハウス化を検討してもよいでしょう。

広告運用に必要なスキルや知識にどのようなものがあるか分からない場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。

▼広告運用に関する記事はこちら

広告運用とは?具体的な仕事内容や求められるスキルを紹介|キーマケのブログ|株式会社キーワードマーケティング

広告運用とは、広告を配信する目的や目標の設定から、媒体の選定、ターゲティング方法、広告クリエイティブ(画像や動画、広告文など)作成、成果計測の設定、分析、改善などをおこなう仕事です。

広告代理店に支払う手数料が大きな負担となり始めた

広告代理店への支払いが企業の利益率に大きな影響を与えている場合、インハウス化によるコスト削減を検討するのが適切です。

特に、広告代理店に支払う手数料が大きいと感じられる場合、インハウス化することで手数料分の支出を削減できます。手元に残った予算は他のマーケティング活動や事業拡大に再投資できるため、予算の有効活用と全体的なコスト効率の向上が期待できます。

契約している広告代理店に不満がある

現在契約している広告代理店に対して「コミュニケーションが取れない」や「レスポンスが遅い」といった不満があったり、提供されるサービスに満足していなかったりする場合も、インハウス化の検討が必要です。

広告代理店への不満が継続する場合、自社での広告運用の方がよりよい結果を生む可能性があります。新たな広告代理店への依頼も一つの選択肢ですが、インハウス化による広告の直接的なコントロールと迅速な意思決定が可能になる点は大きな魅力となります。

インハウス化を成功させるポイント

インハウス化を成功させるには、課題の明確化と効果的な組織体制、成果を出すために必要なものは何かを理解することが必要です。また、短期的な成果だけでなく、長期的な視点を持って広告運用を考えることも重要視されます。

ここからは、インハウス化を成功させるポイントとして以下の4つを紹介します。

  • 現在の広告運用の課題を明確にする
  • 長期的な目標や戦略にどのように影響するかを考慮する
  • 広告運用で成果を出すために必要な要素を理解する
  • 1つのチームで広告運用に取り組めるよう、組織体制を見直す

現在の広告運用の課題を明確にする

インハウス化を成功に導くポイントとして最初に挙げるのは、現在の課題を明確にすることです。

広告運用の成功は、課題を正確に特定することから始まります。課題が何か分かれば解決するための目標が立てられるうえ、目標が定まればそれを達成するために必要な戦略や施策も考えられるからです。

広告運用を成功させるにはマーケティング目標を設定し、それを支える広告戦略を策定することが基本です。ファイブフォース分析や SWOT 分析などを駆使して、自社の抱えている強みと弱みを把握することから始めましょう。

長期的な目標や戦略にどのように影響するかを考慮する

インハウス化は現在の課題だけではなく、将来の目標や戦略にも影響を与えます。そのため、短期的な成果の追求だけではなく、経営目標や長期的なビジョンと広告運用の関係を考慮する必要があります。

インハウス化が企業のビジョンと整合しているかを評価し、人的リソースや予算の再配分を長期的な視点で考えましょう。長期的な視点をもってインハウス化を進めることで、企業の長期的な成長と目標達成に対し、インハウスでおこなう広告運用がどのように寄与するか判断できます

広告運用で成果を出すために必要な要素を理解する

広告の成果を出すためには、広告の知識とノウハウをはじめ、広告を作成し運用するためのツールの準備も必要になります。

適切な予算設定やターゲティング、広告の作成など、インハウスで広告運用をする際にやるべきことはさまざまです。さらに、作成した広告を最適化するためには、広告配信の目的や目標、ターゲット、メッセージ、媒体といった多くの要素を理解する必要があります。

また、広告を作成し運用するためのツールも必要になるため、運用方針に合わせて準備を進めましょう。インハウス化するにあたって何が必要なのか、何に関する知識やノウハウが必要かを把握することで適切な広告運用に繋げられるため、念入りに理解していくことをおすすめします。

1つのチームで広告運用に取り組めるよう、組織体制を見直す

前述の通り、広告運用には多岐にわたる知識やノウハウ、専門的なスキルが必要です。これらを一人でカバーするのは困難であるため、チームでの取り組みが必要になります。

そのため、インハウス化を進めると決まったら、専門的な知識やノウハウ、スキルを持ったメンバーがチームで広告運用に取り組めるよう、組織体制を見直しましょう。チームメンバーの役割を明確にし、定期的なミーティングやフィードバックの共有をおこなうことで、チーム全体での目標達成を目指せるようにすることも必要です。

ハイブリッドな広告運用モデルの採用

インハウス化を進めるにあたって、ハイブリッドな広告運用モデルを採用することも一つの有効な手段です。これは、全てを自社内でおこなう完全なインハウス化と、全てを外部の広告代理店に依存する外注の間の、中間的なアプローチとなります。

ハイブリッドモデルでは自社の内部リソースを最大限に活用しつつ、必要に応じて広告代理店などの専門知識や技術を利用します。コストと効率のバランスを取りながら、広告運用の柔軟性と効果を高められる点が、ハイブリッドモデルのメリットだといえるでしょう。

具体的には、インハウスでは広告キャンペーンの全体的な目標設定、ターゲットオーディエンスの特定、広告メッセージの策定といった広告の戦略的な部分を担当します。インハウスは企業のビジョンや市場でのポジショニングを理解しているため、これらの要素を効果的に計画し、全体の方向性を決められるのです。

一方、広告代理店には、広告素材の制作や特定のメディアでの広告配信の実施、広告の最適化といった広告の実務的な作業を依頼します。広告代理店は最新の広告技術やメディアに関する知識を持っているため、これらの作業を効率的かつ効果的に実行できるのです。

このように、ハイブリッドモデルでは、インハウスと広告代理店がそれぞれの強みを生かしながら協力し、広告キャンペーンを成功に導くのに適した形で作業を分担します。広告運用の柔軟性と効果を最大化すると同時に、コストを効率的に管理するうえでも効果的な分業方法のため、インハウス化するかどうかで迷った際にはまずここから考えてもよいでしょう。

本当にインハウス化が必要か、判断は慎重に

インハウス化は多くのメリットを提供する一方で、実施には慎重な検討が必要です。

インハウス化するかどうかを検討するには、自社の広告運用が直面している問題点を理解し、インハウス化がそれらにどのように対処できるかを考える必要があります。また、目先の課題解決だけでなく、企業の長期的な目標や戦略にインハウス化がどう影響を与えるか考えることも大切です。

広告運用の専門スキルを持つ人材の確保や業界動向の追跡、そして必要なツールやリソースの準備など、慎重に計画を立ててから進めることが成功の鍵となります。インハウス化が自社にとって最善の選択かどうかを慎重に判断しましょう。

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「わかりにくいこと」を「わかりやすく」をモットーに、すべての記事を実際に広告運用に関わるメンバー自身が執筆しています。ぜひ無料のメールマガジンに登録して更新情報を見逃さないようにしてください!

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記事を書いた人

石川 優二
石川 優二

執行役員/インハウス支援室長

全国400社以上の研究会員の運用型広告・マーケティングコンサルティングを担当。養成講座では500人以上を教育。コンサル・講師・執筆業から、広告運用代行、ホームページ制作、システム開発まで担当。自社ビジネス成長のための製品開発、販売をする実践家でもある。自他ともに認める変わり者。徳島県出身。

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